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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.14
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

在宅薬学総合体制加算の2026改定|要件と損益試算を税理士が解説

8分で読めます
在宅薬学総合体制加算の2026改定|要件と損益試算を税理士が解説

在宅薬学総合体制加算の2026改定で何が変わる?

在宅薬学総合体制加算の2026改定の結論は、「体制」だけでなく「実績」まで含めて評価を組み替え、加算2の施設基準を再設計することです。とくに、単一建物(いわゆる施設在宅)の扱いが明確に分かれ、同じ在宅でも収益構造が変わります。

在宅対応を強化している薬局にとっての論点は2つです。

  • 加算1は点数が増える一方、要件が見直されます(満たせるか)。
  • 加算2は「単一建物の評価区分」と施設基準が変わり、届出・維持の難易度が上がる可能性があります(採算が合うか)。

在宅薬学総合体制加算とは(算定の前提)

在宅薬学総合体制加算は、地方厚生局へ届出を行い、施設基準に適合する保険薬局が「厚労大臣が定める患者」に調剤を行った場合に所定点数へ上乗せされる加算です。現場感としては、在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険)や居宅療養管理指導(介護保険)を安定運用できる薬局を、外来調剤の点数で評価する仕組み、と捉えると分かりやすいでしょう。

ここがポイント
本稿は「中医協資料(総-1)」段階の記載にもとづく整理です。最終的な告示・通知、疑義解釈で要件の表現が調整される可能性があるため、届出判断では必ず最新の告示・通知も合わせて確認してください。

2026改定のポイント(加算1・加算2・単一建物)

ポイント1:加算1は「30点」へ(評価が増える)

資料上、改定案では在宅薬学総合体制加算1が30点となり、現行(15点)から増点します。加算1は「広く在宅対応している薬局」の底上げに位置づけられ、まずは届出可能かどうかが最初の分岐点になります。

ポイント2:加算2は「単一建物1人」と「それ以外」で評価を分ける

加算2は、訪問対象が単一建物診療患者(居住者)1人の場合と、それ以外の場合で評価を区分します。改定案では、

  • 単一建物診療患者(居住者)が1人:100点
  • それ以外:50点
    と整理されます。つまり、施設在宅でも「同一建物に多数」ではなく、個別性の高い訪問(単一建物1人)が相対的に厚く評価される設計です。

ポイント3:加算2の施設基準が再設計(無菌設備基準の廃止+実績・人員の追加)

加算2の施設基準は、無菌製剤処理設備に関する基準を廃止する一方で、次のような要素が追加されます。

  • 単一建物診療患者が1人の場合の訪問薬剤管理指導の算定回数
  • 麻薬調剤、無菌製剤処理等の実績
  • 常勤換算薬剤師数の基準

ここは「設備投資でクリア」ではなく、実績の積み上げと人員配置でクリアする方向に見えます。結果として、届出できても翌年度に実績不足で維持できない、というリスク管理が重要になります。

要件の見直しを経営KPIに落とす(チェック観点)

在宅薬学総合体制加算は、届出の可否よりも「維持できるか」が経営上のボトルネックになりやすい加算です。税理士法人 辻総合会計でも、在宅強化薬局の相談は「届出したが翌年落ちた」「在宅担当の退職で要件未達になりそう」が典型です。

チェック観点は次の3層です。

  • 体制:在宅訪問に対応する薬剤師配置、緊急対応の回し方、他職種連携
  • 実績:医療保険(訪問薬剤管理指導等)+介護保険(居宅療養管理指導等)の算定回数
  • 収益:加算の増点が人件費・移動時間・夜間対応コストを上回るか

損益シミュレーション(点数×件数でざっくり把握)

診療報酬の基本は「点数×10円」です。ここでは、改定案で明示されている点数差(加算1:15→30点)を使い、月次の増収ポテンシャルを簡易試算します(実際は特別調剤基本料Aの扱い、対象患者範囲、算定条件の詳細で変動します)。

試算の前提

  • 1点=10円
  • 加算1の増点:+15点(=+150円)/対象調剤1回
  • 対象調剤回数:在宅薬学総合体制加算の対象患者に対する調剤回数(ここが薬局ごとに差)

ケース別:月間増収(加算1の増点分だけを見る)

←横にスクロールできます→
月間の対象調剤回数増点(+15点)月間増収(概算)年間増収(概算)
200回+15点/回200×150円=30,000円36万円
500回+15点/回500×150円=75,000円90万円
1,000回+15点/回1,000×150円=150,000円180万円

この増収に対して、在宅の追加コスト(移動時間、車両費、担当薬剤師の確保、夜間携帯、書類作成時間)がどの程度かかっているかを突き合わせるのが実務です。加算2の届出・維持はさらに実績・人員基準が絡むため、増収だけでなく「維持コスト」まで含めて見ます。

ここがポイント
在宅は「売上」よりも「粗利」に差が出やすい領域です。とくに単一建物(施設在宅)は1訪問あたりの効率が高い一方、ルール変更の影響を受けやすいので、個人在宅(単一建物1人)の比率、算定の分布を月次で把握しておくのが安全です。

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実務の進め方(届出判断〜運用までの手順)

Step 1: 自薬局の在宅実績を棚卸しする
直近12か月の算定回数を、医療保険(訪問薬剤管理指導等)と介護保険(居宅療養管理指導等)で分け、単一建物(施設)と個人宅の構成比まで出します。

Step 2: 加算1・加算2のどちらを狙うか決める
加算1は「広く在宅」向け、加算2は「高度な在宅の体制・実績」向けになりやすい設計です。加算2は要件追加があるため、維持可能性を優先して選びます。

Step 3: 人員配置(常勤換算)と当番設計を固める
在宅は属人化すると崩れます。常勤換算の薬剤師数、開局時間帯の複数配置、緊急対応のローテーションを、制度要件と離職リスクを前提に設計します。

Step 4: 収益KPIを設定して月次で検証する
「加算の増収」だけでなく、在宅1件あたりの移動時間、1訪問あたりの作業時間、キャンセル率、夜間対応回数をKPI化し、粗利で見ます。ここができると、改定が来ても手元で影響額を即時試算できます。

旧制度との比較(どこが落とし穴か)

←横にスクロールできます→
観点現行2026改定案(資料ベース)実務インパクト
加算1の点数15点30点対象調剤が多い薬局ほど増収
加算2の評価50点(区分の中心)単一建物1人:100点/それ以外:50点施設在宅の質で差がつく
加算2の施設基準無菌設備などの要件が中心無菌設備基準の廃止+実績・人員等の追加設備より運用実績・人員が重要に
リスク届出後の維持要件追加で維持難易度が上がる可能性年度途中の人員変動に弱い

よくある質問

Q: 加算2は「施設在宅が多い薬局」ほど有利ですか? ▼
一概には言えません。改定案では「単一建物1人」と「それ以外」で評価が分かれるため、同一建物で多数居住者を診るモデルは点数上の伸びが限定的になり得ます。自薬局の在宅構成(単一建物1人の比率)で影響が変わります。
Q: 無菌製剤処理設備の基準が廃止されるなら、設備投資は不要になりますか? ▼
「加算2の施設基準としての扱い」が変わる可能性はありますが、在宅医療として無菌調製が必要な患者対応があるなら、医療安全・提供体制の観点で設備や委託体制の整備が不要になるとは限りません。患者層と連携先のニーズで判断してください。
Q: 収益試算は何から始めればよいですか? ▼
まず「加算対象の調剤回数(在宅薬学総合体制加算の対象患者への調剤)」を月次で特定し、点数差(例:加算1の+15点)を掛けて増収を出します。その上で、在宅専任の人件費、移動時間、夜間対応などの追加コストを差し引き、粗利で比較します。

まとめ

  • 2026改定案では、在宅薬学総合体制加算は要件と評価の見直しが行われる
  • 加算1は15点→30点へ増点し、対象調剤が多いほど増収効果が出やすい
  • 加算2は単一建物1人とそれ以外で評価を分け、施設基準も再設計される
  • 届出判断は「取れるか」ではなく「翌年も維持できるか(実績・人員)」で決める
  • 影響試算は、点数差×対象調剤回数で増収を出し、在宅の追加コストと合わせて粗利で検証する

参照ソース

  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回)議事次第(資料:総-1個別改定項目について)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
  • 厚生労働省「総-1 個別改定項目について(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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