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クリニック向けコラム
作成日:2025.06.08
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医師の青色申告で65万円控除の条件|税理士が解説

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医師の青色申告で65万円控除の条件|税理士が解説

医師の青色申告とは(勤務医との違い)

医師の「青色申告」とは、事業所得(または不動産所得等)がある人が、所定の手続を経て青色申告で確定申告する制度です。結論から言うと、個人クリニックの院長など事業として医業を営む方は、条件を満たせば65万円の青色申告特別控除を狙えます。一方で、勤務医のみ(給与所得のみ)の場合は、青色申告の対象になりません。

開業直後は「とりあえず税理士に任せるから後で考える」となりがちですが、青色申告は“事前の申請”と“帳簿の作り方”で結果が分かれます。特に65万円控除は、期末の対応では間に合わないケースが多いため、最初に要件を押さえておくことが重要です。

「医師=青色申告できる」ではない

医師でも、所得の中身が給与所得のみなら青色申告はできません。対象となるのは、クリニック経営による事業所得(自由診療・保険診療を含む医業収入など)を計算して申告するケースです。医師であっても「誰が、どの所得区分で」申告するのかを最初に整理しましょう。

青色申告の基本特典(医師が受けやすいもの)

青色申告には、特別控除のほか、赤字の繰越(純損失の繰越控除)や、青色事業専従者給与など、医業の経営管理に相性のよい特典があります(要件あり)。まずは本記事のテーマである「65万円控除の条件」を確実に満たすことを優先してください。

65万円控除を受けるための条件(結論)

65万円の青色申告特別控除は、55万円控除の要件を満たしたうえで、さらに「e-Taxで期限内に申告」または「優良な電子帳簿として保存」を満たす必要があります。要件は、実務上つまずきやすい順に並べると以下です(国税庁の要件に基づく)。

まず満たすべき「55万円控除」の要件

  • 事業所得(または不動産所得)を生ずべき事業を営んでいること
  • 取引を複式簿記(正規の簿記の原則)で記帳していること
  • 記帳に基づき、貸借対照表・損益計算書等を添付し、申告期限(原則、翌年3月15日)までに確定申告書を提出すること

これらが揃わないと、65万円どころか55万円にも届かず、10万円控除に落ちる可能性があります。

ここがポイント
「現金主義による所得計算の特例」を選択している場合、55万円(および65万円)の青色申告特別控除は受けられません。開業直後に資金繰り優先で現金主義を検討する場面もありますが、控除とのトレードオフになるため、選択前に影響を確認しましょう。

65万円にする追加要件(どちらか一方で可)

55万円要件に加えて、次のいずれかを満たします。

  • e-Taxによる電子申告で、申告期限までに申告書・決算書類等を提出する
  • 仕訳帳・総勘定元帳について、要件を満たす電子帳簿保存(優良な電子帳簿)を行う(届出が必要となる場合あり)

「紙で提出+会計ソフト利用」だけでは65万円になりません。現場では、まずe-Taxで期限内に提出する運用に寄せるのが最も現実的なことが多いです(電子帳簿は要件管理の難易度が上がるため)。

65万円・55万円・10万円の違い(比較表)

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控除区分控除額記帳方法のイメージ追加要件の有無典型パターン
青色申告特別控除(65万円)最大65万円複式簿記+決算書(貸借対照表等)e-Tax期限内提出 または 優良な電子帳簿会計ソフト+e-Taxで毎年申告
青色申告特別控除(55万円)最大55万円複式簿記+決算書(貸借対照表等)追加要件なし紙提出、またはe-Tax未対応
青色申告特別控除(10万円)最大10万円簡易な帳簿でも可追加要件なし複式簿記に未対応、決算書不備

※控除額は、事業所得等の黒字額が上限となるなど細かな制約があります。

青色申告の方法・手順(申請から提出まで)

医師の青色申告は「申請して終わり」ではなく、申請→日々の記帳→決算→提出(期限厳守)の一連運用です。65万円控除を狙うなら、最初から逆算して設計してください。

Step 1: 青色申告承認申請書を期限内に提出する

原則は「その年の3月15日まで」に提出します。年の途中で新たに開業した場合は「開業日から2か月以内」など期限が短くなるため注意が必要です。開業前後の手続が集中する時期に、漏れが起きやすいポイントです。

Step 2: 会計ソフト前提で複式簿記の運用を作る

65万円控除の土台は、複式簿記と決算書(貸借対照表・損益計算書等)です。医業は、レセプト入金のタイムラグ、未収金管理、スタッフ給与・社会保険、医療機器や内装等の固定資産など、最初から科目設計が崩れると後で整合が取れなくなります。導入初月で「科目・証憑・支払方法(口座/カード)」を統一しましょう。

Step 3: 65万円にする“追加要件”を選ぶ(e-Taxか電子帳簿か)

実務的には、まずはe-Taxを選び、毎年「期限内に電子申告」できる体制を固定するのが安全です。電子帳簿保存(優良電子帳簿)は要件が多く、運用監査の視点も必要になります。

Step 4: 申告期限までに提出し、帳簿・書類を保存する

青色申告は、帳簿や決算関係書類を一定期間保存する必要があります。国税庁の案内では、帳簿(仕訳帳・総勘定元帳等)や決算関係書類は原則7年など、保存年限が示されています。紙・電子いずれでも、提示できる状態で保管する設計が重要です。

クリニック青色申告のメリット(白色申告との違い)

青色申告は、クリニック経営者にとって「節税」だけでなく「経営の見える化」に直結します。一方で、白色申告の方が事務負担は軽い傾向があります。どちらが適切かは、控除だけでなく運用体制で判断すべきです。

白色申告との違いは「帳簿の精度」と「特典」

白色申告でも記帳・保存は必要ですが、青色申告の方が求められる帳簿の精度(複式簿記)と、添付する決算書の整合性が高い一方で、特典が明確です。医師の場合、設備投資・スタッフ体制が早期から厚くなるため、損益と資金繰りの乖離が起きやすく、複式簿記で管理するメリットが出やすいと言えます。

65万円控除は「税額」への影響が見えやすい

65万円控除は課税所得を圧縮するため、所得税・住民税に影響します。ただし、効果は所得水準や他の所得・控除状況で変わります。控除を最大化するために経理の整合性を崩すと、税務調査時の説明コストが増える点には注意が必要です。

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医師がつまずきやすい注意点(電子・保存・医業特有)

65万円控除で多い失敗は、「複式簿記はできているが提出が紙」「e-Taxにしたが期限後」「決算書類の添付不備」「電子保存の要件未充足」など、要件の“一部欠落”です。よくある論点を先回りで整理します。

e-Taxは「期限内提出」が要点

65万円の追加要件としてe-Taxを選ぶ場合、ポイントは「申告期限までに提出すること」です。事務作業が遅れると、同じ内容でも控除額が変わり得ます。院内の繁忙期(花粉・感染症シーズン等)と申告期限が重なる診療科は、年明けから前倒しで決算着手する運用が有効です。

電子帳簿保存は要件管理が必要

電子帳簿保存(優良な電子帳簿)を選ぶ場合、帳簿の備付け・保存の方式や、検索性等の要件を満たす必要があります。運用途中で保存方法がブレると、要件を満たさないリスクがあります。電子化を進める場合は「要件を満たすための運用手順」まで文章化し、スタッフ間で統一しましょう。

ここがポイント
医師・歯科医師には、申告書類の書き方に医業特有の取扱い(例:租税特別措置法第26条の適用時の付表記載・控除計算の留意点など)が登場します。該当する場合、国税庁の記載要領(医師・歯科医師用の付表)に沿って、決算書の作り方から確認するのが安全です。

帳簿・証憑の保存年限を軽視しない

青色申告では、帳簿・決算書類・領収書や請求書等を一定期間保存する必要があります。医療機器や内装工事など高額支出が多い医業は、固定資産台帳の整備や、減価償却の根拠資料の保管が重要です。税務調査対応の観点でも、「いつでも出せる」状態にすることが最も効果的なリスク対策です。

よくある質問

Q: 開業した年の途中からでも、65万円控除は受けられますか? ▼

A:

可能性はあります。ただし、まず青色申告承認申請書を期限内(原則3月15日、年途中開業は開業日から2か月以内など)に提出し、複式簿記で記帳して決算書類を添付し、さらにe-Taxで期限内に申告する等の追加要件を満たす必要があります。
Q: 会計ソフトで記帳していれば、自動的に65万円控除になりますか? ▼

A:

自動的にはなりません。複式簿記・決算書添付・期限内申告という55万円要件に加えて、e-Taxによる電子申告で期限内提出するか、要件を満たす電子帳簿保存を行う必要があります。
Q: 電子帳簿保存とe-Tax、どちらが医師にはおすすめですか? ▼

A:

一般にはe-Taxでの期限内申告をまず固めるのが現実的です。電子帳簿保存(優良電子帳簿)は要件管理が増えるため、院内での運用ルール整備や監査目線が必要になります。電子化を進める目的(省スペース、検索性、ワークフロー改善)と合わせて選択しましょう。

まとめ

  • 医師でも、青色申告は「事業所得等がある人」が対象で、勤務医のみ(給与所得のみ)は対象外
  • 65万円の青色申告特別控除は、55万円要件(複式簿記・決算書添付・期限内申告)に加えて、e-Tax期限内提出または電子帳簿保存が必要
  • 最初の関門は青色申告承認申請書の提出期限(原則3月15日、開業時は2か月以内等)
  • 医業は未収金・レセプト入金・固定資産など論点が多いので、科目設計と証憑保存を早期に統一
  • 制度要件は個別事情で変わるため、開業初年度は特に専門家と運用設計を行うのが安全

参照ソース

  • 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
  • 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
  • 国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告(暮らしの税情報 令和7年版)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm
  • 国税庁「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」: https://www.e-tax.nta.go.jp/
  • 国税庁「優良な電子帳簿の要件」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm
  • 国税庁「記載要領 所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2020/pdf/043.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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