税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
医療経営ブログに戻る
クリニック向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック医療機器節税2026|40万円特例と投資税制

9分で読めます
クリニック医療機器節税2026|40万円特例と投資税制

結論|医療機器の節税は「金額」と「制度の目的」で選び分けます

クリニックの医療機器購入の税務は、基本的に「減価償却(耐用年数で費用化)」ですが、一定の制度を使うと当期の費用(または税額)を強く圧縮できます。2026年は、少額減価償却資産の上限が40万円未満へ引上げ(令和8年度税制改正の大綱)という流れもあり、買う時期と金額設計がより重要になります。

一方、設備投資促進税制(代表例:中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制)は、要件を満たすと即時償却または税額控除が選べます。ただし、少額特例と同じ資産での重複適用は原則できないため、制度の「目的」と「手続負担」で使い分けるのが実務の基本です。

医療機器の減価償却とは|まずは原則ルールを押さえる

医療機器はなぜ一括で経費にできないのか

医療機器(例:超音波診断装置、内視鏡、心電計など)は、購入金額が大きいことが多く、原則として固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却します。つまり、購入年に全額が経費にならず、利益が出ている年の税負担が想定より下がらないことがあります。

例:同じ利益でも「購入年」に税負担が残りやすい

黒字期に医療機器を導入しても、減価償却だと初年度費用が限定されるため、法人税等・所得税が思ったほど下がらない、という相談は現場で頻繁にあります。ここで登場するのが「少額特例」や「設備投資促進税制」です。

40万円未満の少額減価償却|2026年のポイントと注意点

「40万円未満」は改正大綱ベース|現行は30万円未満(期限あり)

中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、国税庁の案内上、現行では「取得価額30万円未満」を要件に、一定期間内に取得して事業の用に供した場合、取得価額を損金算入できる制度です(期限の記載あり)。

一方、財務省が公表する令和8年度税制改正の大綱では、対象となる取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げる旨が示されています。実際の適用開始日・適用関係(いつ取得・いつ使用開始か)は、成立法令・通達等で最終確認が必要です。

ここがポイント
「40万円未満」は大綱に記載された方向性です。実務では、(1)取得日、(2)事業供用日、(3)決算期、(4)税込・税抜経理、の4点で判定が変わり得るため、購入前に会計処理方針まで含めて確認してください。

少額特例の強み|手続が比較的軽く、即時に費用化しやすい

少額特例のメリットは、要件に合えば当期に費用化(損金算入)でき、資金繰り上のインパクトが読みやすい点です。医療機器では「周辺機器」「小型検査機器」「PC・周辺機器」「予約・検査の周辺デバイス」などで適用検討が現実的です。

重要注意|設備投資促進税制などとの重複適用は不可

国税庁の案内では、この特例は特別償却・税額控除・圧縮記帳等との重複適用ができない旨が明記されています。つまり「少額特例で一括費用化した上で、経営強化税制で即時償却」などはできません。どちらを使うかを先に決める必要があります。

設備投資促進税制とは|経営強化税制と投資促進税制の位置づけ

中小企業経営強化税制|計画認定が前提、即時償却 or 税額控除(10%等)

中小企業庁の説明では、経営力向上計画の認定を受け、対象設備の取得等を行った場合に、即時償却または税額控除(10%/一定の場合7%)を選択できる制度です。医療機器のうち「生産性向上」や「業務効率化」に資する設備(例:検査の自動化、予約〜会計の省力化、データ連携等)が論点になります。

中小企業投資促進税制|特別償却30% or 税額控除7%(期限あり)

中小企業庁の説明では、機械装置等の対象設備を取得等した場合に、特別償却30%または税額控除7%を選択適用できる制度で、適用期限の記載があります。経営強化税制より手続面が軽いケースもありますが、対象設備の要件確認は必須です。

比較表|少額特例(40万円)と投資税制はこう使い分ける

←横にスクロールできます→
施策対象の目安税務メリット手続負担向いているケース
10万円未満(少額資産)10万円未満原則、取得時に費用化低小物・周辺機器の買い足し
一括償却資産20万円未満3年均等で費用化低すぐ全額は不要だが簡便に処理したい
少額減価償却資産の特例40万円未満(改正大綱)当期に損金算入中1台ごとの金額が小さめ、スピード重視
中小企業経営強化税制対象設備(認定計画)即時償却 or 税額控除高高額設備・生産性向上を強く狙う投資
中小企業投資促進税制対象設備特別償却30% or 税額控除7%中ある程度の設備投資を継続する

医療法人・個人クリニックでの実務論点|「利益調整」と「将来設計」

医療法人:利益圧縮だけでなく、金融・役員報酬・将来投資もセットで

医療法人は、当期利益を強く下げると法人税負担は下がりますが、金融機関の評価(返済原資)や、将来の設備更新・分院展開の余力にも影響します。即時償却で利益を落としすぎると、翌期以降の減価償却費が減り、利益が跳ね上がる「反動」も起きます。

個人(院長の事業所得):所得税率帯の影響が大きい

個人は累進税率のため、黒字が大きい年ほど当期費用化の効果が出やすい一方、翌年以降の所得が増えると税率帯が変わる可能性があります。導入時期を年度末に寄せるか、分割投資にするかで税負担が大きく変わることがあります。

ここがポイント
「節税=一番速い費用化」とは限りません。投資の目的が(1)診療の質、(2)人員不足の補完、(3)自費導入、のどれかで、最適な税制は変わります。税効果は副産物として設計すると失敗しにくいです。

医療機関専門の税理士にご相談ください

40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。

無料相談を申込む 📞 050-1808-9643

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

手順|購入前にやるべきチェック(医療機器 減価償却/税制)

Step 1: 資産区分と金額判定(税抜・税込、付属品の扱い)
見積書の内訳を分解し、医療機器本体・付属品・設置費・ソフト等の扱いを整理します。金額判定(10万/20万/40万)に直結します。

Step 2: 決算期と「取得・供用」のタイミング確認
「発注日」ではなく、原則として取得・事業供用のタイミングが重要です。決算をまたぐと当期費用化の可否が変わります。

Step 3: 少額特例にするか、投資税制にするかを決める
同じ資産で重複適用できないため、(1)節税インパクト、(2)手続負担、(3)将来の利益見通し、で選択します。

Step 4: 投資税制を使うなら「購入前」から申請設計
経営強化税制は認定計画が前提です。実務では「買った後に気づいて間に合わない」事故が多い領域です。

Step 5: 申告書別表・添付書類まで含めて着地確認
決算仕訳だけでなく、税務申告上の別表調整、必要書類の保管まで一気通貫で設計します。

よくある失敗|税務調査・否認リスクにつながるポイント

  • 「40万円未満(または30万円未満)」の判定を税込でやるべきところ税抜でやっていた(または逆)
  • 付属品・設置費をまとめてしまい、1資産の取得価額が閾値を超えた
  • 少額特例と投資税制を同じ資産で同時に使えると誤解した
  • 経営強化税制の計画認定を購入後に検討し、要件を満たせなかった
  • リース取引の扱いを誤り、「取得」に該当しないのに適用しようとした

よくある質問

Q: 医療法人でも40万円未満の少額特例は使えますか? ▼
一定の要件を満たす中小法人等であれば、少額減価償却資産の特例の適用対象になり得ます。ただし、現行の国税庁案内では30万円未満・期限の記載があり、改正大綱では40万円未満への引上げが示されています。決算期と取得・供用時期で適用可否が変わるため、購入時期を含めて事前確認が重要です。
Q: 「少額特例」と「中小企業経営強化税制」は同じ機器で併用できますか? ▼
原則できません。国税庁の案内では、少額特例は特別償却・税額控除・圧縮記帳等との重複適用ができない旨が示されています。どちらが有利かは、利益の水準、税額控除の使い切り可否、手続負担で変わります。
Q: 医療機器を分割して買えば40万円未満にできますか? ▼
形式的な分割は否認リスクがあります。実質的に一体の資産(本体と不可分の付属品等)と判断されると、合算して取得価額を判定される可能性があります。見積の分解が妥当かどうか、購入前に税務目線で整理してください。

まとめ

  • クリニックの医療機器は原則「減価償却」だが、制度で当期費用・税額を圧縮できる
  • 令和8年度税制改正の大綱では、少額特例の上限を40万円未満へ引上げの方向性が示されている
  • 少額特例は手続が比較的軽いが、投資税制(経営強化・投資促進)との重複適用は原則不可
  • 経営強化税制は計画認定など手続が重い分、即時償却・税額控除の効果が大きい設計が可能
  • 実務は「金額」「取得・供用時期」「税込税抜」「付属品の扱い」で結論が変わるため、購入前に設計する

参照ソース

  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
  • 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
  • 中小企業庁「中小企業経営強化税制」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/kyoka_zeisei.html
  • 中小企業庁「中小企業投資促進税制」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tyuusyoukigyoutousisokusinzeisei.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
医療経営ブログに戻る

お電話でのご相談

050-1808-9643

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

訪問介護 介護報酬2026改定の要点

訪問介護 介護報酬2026改定の要点

介護報酬改定2026の全体像|+2.03%内訳を税理士解説

介護報酬改定2026の全体像|+2.03%内訳を税理士解説

特養の介護報酬2026改定|収支差率と投資計画を税理士が解説

特養の介護報酬2026改定|収支差率と投資計画を税理士が解説

人気コラムランキング

1
【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

【失敗しない】クリニック開業税務の5つの注意点

2
内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

内科の訪問診療戦略|収益設計と集患・運用の実務を税理士が解説

3
出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いと承継・税務ポイント

4
医師の講演料は確定申告必要?経費と手順|税理士が解説

医師の講演料は確定申告必要?経費と手順|税理士が解説

5
医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

CONTACT

無料相談のご案内

開業・法人化・承継・経営改善など、どんなご相談でもお気軽にどうぞ。初回相談は無料です。

ご相談だけでも歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

050-1808-9643
平日 9:15〜18:15

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

050-1808-9643

050-1808-9643

無料相談する

平日 9:15〜18:15