
執筆者:辻 勝
会長税理士
介護報酬改定2026の全体像|+2.03%内訳を税理士解説

介護報酬改定2026(臨時改定)とは|結論:基本報酬は据え置き、処遇改善と食費が動く
2026年(令和8年)の介護報酬は、通常の3年改定(次は令和9年度)を待たずに「期中(臨時)改定」が行われ、改定率は**+2.03%**です。ポイントは、基本報酬の大幅な見直しではなく、主に「処遇改善(賃上げ)」と「施設等の食費の基準費用額」の2点に集中している点です。
誰にとって何が問題かというと、介護事業者にとっては「加算・基準費用額の変更を、給与・経理・請求の実務に落とし込めるか」が課題であり、利用者・家族にとっては「食費の自己負担がいつ、どの区分で増えるか」が争点になります。
介護報酬改定2026の改定率+2.03%の内訳
臨時改定の内訳は次のとおりです。
- 全体:+2.03%
- 内訳:処遇改善分 +1.95%、基準費用額(食費)の引上げ分 +0.09%
さらに、国費ベースの影響額(令和8年度予算額への影響)として示されている情報もあり、制度の「賃上げ重視」の性格が明確です。
介護報酬改定2026はいつから?施行時期(6月・8月)を分けて理解する
「2026の介護報酬改定はいつから?」の答えは、内容によって施行時期が異なります。
- 介護職員等処遇改善(処遇改善加算の拡充等):令和8年6月施行
- 介護保険施設等の食費(基準費用額の見直し):令和8年8月施行
同じ改定でも、請求・利用者負担・契約書類・同意取得などの対応タイミングがズレるため、経営管理上は「二段階改定」と捉える方が安全です。
処遇改善のポイント|対象拡大・上位区分・生産性要件が実務の肝
1) 対象が「介護職員」から「介護従事者」へ広がる
今回の措置では、処遇改善の対象が介護職員に限定されず、介護従事者へ広がる方向性が示されています。現場ではすでに「介護職員以外にも配分している」ケースが多く、制度側がそれを一定程度追認した形とも言えます。
税務・労務の観点では、配分対象が広がるほど「賃金規程・評価制度・配分ルールの説明可能性」が重要になります。恣意的配分は職員間トラブルの火種になりやすいので、就業規則や賃金規程の整備が実務対応の第一歩です。
2) 月1.0万円(3.3%)+上乗せ0.7万円(2.4%)の考え方
資料では、介護従事者を広く対象に月1.0万円相当(3.3%)の賃上げ、さらに生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に月0.7万円(2.4%)の上乗せが示されています。合計として、介護職員で最大月1.9万円(定期昇給0.2万円込み、6.3%)という整理です。
ここで大事なのは、「加算を取った=自動的に利益が残る」ではないことです。制度設計上、原資は賃金・環境改善へ流すことが前提なので、経営側は「加算収入の見込み」と「賃上げ・改善コスト」をセットで予算化する必要があります。
3) 生産性向上・協働化の取り組みが上位区分の鍵
上位区分の算定では、生産性向上・協働化に関する要件(例:データ連携、推進体制加算、連携推進法人など)が論点になります。経営としては「要件を満たすための投資(ICT、委員会運営、記録削減)」が先に必要になりがちです。
基準費用額(食費)見直しのポイント|1日100円の引上げと利用者負担の増減
1) 何が変わる?基準費用額(食費)を100円/日引き上げ
介護保険施設等における食費について、基準費用額(食費)が1日当たり100円引き上げとされています。これは物価(食材料費)上昇を受けた緊急的対応の位置づけです。
2) 利用者負担は所得区分で扱いが変わる
利用者側の自己負担は、所得区分(負担段階)に応じて「据え置き」または「引上げ」が整理されています。とくに第3段階の一部で日額30~60円の引上げが示されており、家族への説明・同意取得・重要事項説明書の更新が必要になるケースが出ます。
【比較表】2026臨時改定の全体像を一枚で整理(事業者向け)
| 論点 | 処遇改善(加算) | 食費(基準費用額) |
|---|---|---|
| 改定率内訳 | +1.95% | +0.09% |
| 施行時期 | 令和8年6月 | 令和8年8月 |
| 主な対象 | 介護従事者(拡大の方向)・一部上位区分 | 介護保険施設等(補足給付の枠組みと関係) |
| 事業者の実務 | 計画書・要件整備・配分ルール・賃上げ実行 | 契約/同意・請求設定・家族説明・負担段階確認 |
| 経営上の注意 | 原資は賃金に回す前提、利益計画の作り替えが必要 | 施設の食材料費高騰の吸収と、利用者負担の説明が必要 |
医療機関専門の税理士にご相談ください
40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
税理士が見る「経営・税務」への影響|利益ではなく設計が問われる
1) 加算収入は「売上」だが、目的は賃上げ(費用化)
会計上、加算は収益計上されます。一方で政策目的は賃上げ・環境改善なので、同時に人件費等が増える設計です。法人税の視点では、賃上げは損金になりやすい反面、実務では「支給根拠・規程・対象範囲」が曖昧だと内部統制リスクが上がります。
2) 賃上げは社会保険・労務コストも増やす
賃金を上げれば、社会保険料(事業主負担)や賞与設計、残業単価にも波及します。加算の増えた分だけで見積もらず、付随コスト込みの総額で資金繰りを試算することが重要です。
3) 生産性投資(ICT等)は減価償却・補助金との整合も確認
生産性要件を満たすためのICT導入は、設備投資として減価償却が発生します。補助金・助成金を併用する場合は、収益計上時期や圧縮記帳の可否など、顧問税理士と方針を先に揃えると決算が楽になります。
事業者がやること(実務の手順)|6月・8月の二段階で準備する
Step 1: 影響範囲を棚卸しする(2月~)
自社が算定している加算区分、対象サービス、職種構成、食費に関する契約形態(施設・短期入所等)を一覧化します。ここで「どこが変わるか」を特定します。
Step 2: 処遇改善の配分設計を固める(~5月)
対象職種の拡大を前提に、配分ルール(基本給・手当・一時金)、評価・要件、就業規則・賃金規程の整合を取ります。説明できる配分が最重要です。
Step 3: 請求・給与・会計の設定を分けてテストする(5月・7月)
6月分(処遇改善)と8月分(食費)でシステム設定が変わる可能性があります。請求ソフト、給与ソフト、会計科目(加算収入・手当等)の処理をテストし、月次のズレを防ぎます。
Step 4: 利用者・家族への説明文書を整備する(7月)
食費の変更は誤解が生じやすい領域です。負担段階別の影響、開始月、理由(物価上昇・制度改定)を簡潔にまとめた文案を用意します。
よくある質問
Q: 介護報酬改定2026はいつからですか?
Q: 改定率+2.03%なら、事業所の利益は増えますか?
Q: 食費の見直しは全利用者に影響しますか?
Q: いま算定していない事業所でも、処遇改善加算に対応すべきですか?
まとめ
- 介護報酬改定2026(臨時改定)は全体で+2.03%(処遇改善+1.95%、食費見直し+0.09%)
- 施行は二段階:処遇改善は令和8年6月、食費(基準費用額)は令和8年8月
- 基本報酬の全面改定ではなく、賃上げと食費に論点が集中する
- 事業者は「配分設計(規程)」「請求・給与・会計設定」「家族説明」をセットで準備する
- 税務上は、増収よりも賃上げ・投資の実行が前提となるため、資金繰り設計が重要
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について(社保審・介護給付費分科会 資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001647819.pdf
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(介護給付費分科会)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001618476.pdf
- 厚生労働省「(通知)基準費用額(食費)引上げの施行時期(令和8年8月)に関する記載を含む資料」: https://www.mhlw.go.jp/content/001631448.pdf
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案(令和8年6月施行の別紙を含む)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001633494.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。
記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。