
執筆者:辻 勝
会長税理士
分院開業2026|紹介・逆紹介と病診連携で収益設計|税理士が解説

分院開業で収益を最大化する結論(2026の考え方)
分院(2院目)開業で収益を最大化するには、診療圏の需要を読むだけでなく、紹介(病院→分院)と逆紹介(分院→病院・かかりつけへ戻す)の「流れ」を設計し、病診連携の運用を点数に結びつけることが核心です。既存院が順調でも、分院は人件費・家賃・広告費が先行し、稼働が立ち上がるまで資金繰りが不安定になりがちです。そこで、地域の連携体制を前提に「紹介患者の受入れ」「専門検査・入院が必要な患者の送り出し」「フォローは分院で回収」の循環を作ることで、分院の稼働を早期に底上げできます。
分院開業×診療報酬「連携」とは(紹介・逆紹介の基本)
「紹介・逆紹介」が収益に直結する理由
病診連携は理念ではなく、実務的には次の3点で経営に効きます。
- 受診の入口が安定する(病院の地域連携室・近隣診療所からの紹介で予約が埋まりやすい)
- 重症・専門領域は病院へ送り、分院は外来管理と再来を確保できる(診療の安全性と回転率が上がる)
- 診療情報の共有・連携の仕組みが整うほど、スタッフ運用が標準化しやすい(分院の教育コストが下がる)
紹介・逆紹介の実績は制度上「報告」対象になる類型もあり、制度理解が運用品質に直結します。紹介率・逆紹介率の定義や計算式、報告時期の概要は地方厚生局の案内が整理されています。
外来機能の役割分担と「紹介受診重点医療機関」
2026時点でも、外来機能の分化(かかりつけ・紹介中心)という方向性は継続テーマです。紹介受診重点医療機関や外来機能報告の枠組みは、地域の医療機関同士の役割分担(紹介・逆紹介の設計)と強く関係します。
2026の分院収益モデル:連携を軸に「稼働」を最短で立ち上げる
分院の収益を分解すると見える詰まりどころ
分院の損益は、概ね次の式で決まります。
- 売上 = 外来患者数 ×(1人当たり単価)× 稼働日数
- 利益 = 売上 −(人件費+家賃+医療材料+外注検査+減価償却+本部費)
ここで立ち上げ期に詰まるのは「患者数」と「単価」です。広告で患者数を増やすのは王道ですが、医療は供給制約(医師・スタッフ・枠)も強いので、病診連携で質の良い入口を増やす方が再現性が高いケースが多いです。
連携で狙う患者導線(紹介→分院で管理→必要時に病院→分院へ戻る)
分院開業で強い導線は次の形です。
- 病院(地域連携室)から、術前・術後・慢性期フォローを分院へ紹介
- 分院で定期管理(検査・生活指導・処方)を回し、増悪・専門検査は病院へ紹介
- 退院・治療後のフォローを分院で回収し、再来の安定を作る
この循環が回ると、分院は「初診が増える→再来が積み上がる→予約が埋まる→スタッフ稼働が安定する」という順に、収益が立ち上がります。
連携の運用を点数と実務に落とす:院内で整えるべき仕組み
ここでは「連携に関係する代表的な行為」と「分院での実装ポイント」を比較し、漏れを減らします(点数や要件は改定で変動するため、算定時は最新の告示・通知の確認が前提です)。診療報酬改定の全体像は厚労省の改定ページ・資料から辿れます。
| 項目 | 連携の方向 | 分院での実装ポイント |
|---|---|---|
| 診療情報提供(紹介状・返書) | 病院/診療所 ↔ 分院 | テンプレ化(主訴、経過、検査、投薬、依頼事項、緊急連絡先)。返書は「次回フォロー計画」まで書く |
| 逆紹介の運用 | 分院 → 病院/かかりつけ | 紹介先の窓口(地域連携室)・予約枠・必要書類をスタッフが即手配できるようにする |
| 外来機能の役割分担 | 地域全体 | 分院の提供機能(専門外来、検査、在宅等)を明文化し、紹介元に共有する |
| 紹介率・逆紹介率(制度上の指標) | 主に病院側 | 指標の定義・計算式を理解し、病院が欲しいデータ(紹介状の形式、返書率)に合わせる |
税理士目線:連携は「売上」だけでなく「コスト」を下げる
分院で多い失敗は、院長の属人的な連携に依存し、スタッフが回せない状態です。属人化すると、
- 返書が滞り、紹介が減る(売上が落ちる)
- 院長が事務作業に追われ診療枠が減る(売上が落ちる)
- ミスが増え、クレームや再検査が増える(コストが増える)
つまり、連携は運用設計までが投資回収です。
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分院開業で病診連携を立ち上げる手順(実務ステップ)
Step 1: 連携先(病院・診療所)を診療導線で棚卸しする
地域連携室のある病院、紹介が多い診療科、検査・入院の受け皿を地図ではなく「患者の流れ」で整理します。術前術後、慢性期、検査紹介など、紹介理由別に分けるのがコツです。
Step 2: 連携パッケージ(紹介状・返書・同意・予約導線)を標準化する
紹介状の雛形、返書の雛形、検査オーダーのセット、画像・検査結果の共有方法を決めます。院長が毎回ゼロから書かない仕組みが必要です。
Step 3: 分院の提供機能を明文化し、病院側の困りごとに刺す
「退院後フォローを受けます」「術後の創管理をします」「生活指導を継続します」など、病院が外来を軽くしたい領域に合わせて打ち出します。外来機能分化の文脈とも整合します。
Step 4: 逆紹介のKPIを置く(返書率・返書リードタイム)
連携は「紹介をもらうKPI」より「返すKPI」が効きます。返書率(返書した割合)、返書までの日数、緊急時の連絡成功率を毎月レビューします。
Step 5: 月次で稼働と利益を見ながら、紹介導線を太くする
紹介が増えるほど、検査外注やスタッフ残業も増えます。月次で「紹介経路別の初診数」「再来化率」「粗利」を見て、太くする導線を選別します(分院展開は経営管理が勝負です)。
よくある質問
Q: 分院でも紹介・逆紹介の実績(紹介率・逆紹介率)は必須で報告が必要ですか?
Q: 病院との連携は、開業前から動くべきですか?
Q: 2026年の診療報酬改定で連携の点数は変わりますか?
Q: 税理士に相談すると、連携や診療報酬以外に何が改善できますか?
まとめ
- 分院(2院目)の収益最大化は、紹介・逆紹介の導線設計と病診連携の運用が核
- 連携は「紹介をもらう」より「返す(逆紹介・返書)」仕組みが長期安定を作る
- 連携の実装は、テンプレ・予約導線・情報共有・KPI(返書率/速度)の標準化が要点
- 立ち上げ期は固定費が先行するため、開業前から連携パッケージを用意する
- 診療報酬の要件・点数は改定で変動するため、最新の公表資料で確認しつつ運用設計する
参照ソース
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
- 厚生労働省「外来機能報告・紹介受診重点医療機関」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525_00009.html
- 厚生労働省(関東信越厚生局)「初診料及び外来診療料の注2、注3に掲げる報告」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/shoshin.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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