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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

画像診断クリニック開業2026|加算と回収期間を税理士が解説

9分で読めます
画像診断クリニック開業2026|加算と回収期間を税理士が解説

画像診断クリニック開業(MRI・CT中心)の採算は、「検査件数×単価」だけでなく、画像診断管理加算を取れる体制かどうかで月次の収益構造が変わります。さらに2026年は令和8年度診療報酬改定があり、施行は2026年6月とされています。したがって開業計画では、現行点数をベースに回収を組み立てつつ、改定後に差分を吸収できる設計が重要です。
(以下、点数は2026年2月時点で参照できる点数表記載内容を前提に説明します。)

画像診断管理加算とは(放射線科クリニック開業の収益ドライバー)

画像診断管理加算は、一定の施設基準を満たし届出をしたうえで、画像診断を専ら担当する常勤医師が読影し、文書で報告するなどの要件を満たした場合に算定できる加算です。点数は次のとおりです(いずれも「月1回に限り」等の制限があります)。

  • 画像診断管理加算1:70点
  • 画像診断管理加算2:180点
  • 画像診断管理加算3:300点

要件や対象となる区分(E001/E004/E102/E203等)との関係、遠隔画像診断の取り扱いも通則に定めがあります。開業時は「自院で常勤読影医を置くのか」「遠隔読影連携で施設基準を満たすのか」で、必要コスト(人件費・体制整備費)と算定可否が分かれます。

ここがポイント
注意点として、加算は「検査ごと」ではなく「月1回」等の制限が付く区分があります。事業計画の売上に機械的に検査件数×加算点数を掛けると過大見積もりになりやすいので、レセプト算定ルールに沿って積み上げてください。

2026年の診療報酬改定(令和8年度)と開業計画への織り込み方

令和8年度の診療報酬改定は、厚労省資料で「2026年6月施行」とされ、改定率や大枠方針が公表されています。開業予定日が2026年6月前後の場合、開業初年度の単価が途中で変わる可能性があります。

実務では、次のように織り込むのが安全です。

  • 収益シミュレーションは「改定前(現行点数)」「改定後(想定単価±数%)」の2本立てにする
  • 借入返済・リース料など固定費は改定後に単価が下がっても耐える水準に抑える
  • 人件費(読影医・放射線技師)と稼働率を先に固め、設備グレード(1.5T/3T、CT列数等)は後から調整する

設備投資の全体像(MRI・CT開業で見落としがちなコスト)

画像診断クリニックの初期投資は「本体価格」以外が効きます。特にMRIは工事・保守・電源・冷却・遮蔽など周辺コストが大きく、回収期間に直結します。

  • MRI(本体、搬入、シールド、RF室、冷却・電源工事)
  • CT(本体、設置工事、線量管理、周辺機器)
  • PACS/RIS/読影ビューワ、検像、VPN(遠隔読影するなら必須)
  • 内装・導線(更衣、待合、鎮静・急変対応を想定するか)
  • 保守契約(年間固定+オンコール)、消耗品
  • 人件費(放射線技師、受付、医師、外注読影費)
  • 事業費(医療広告・紹介元対策、連携先への報告体制)

このうち、固定費(返済・リース・保守・家賃・人件費)が高いほど、損益分岐となる検査件数が跳ね上がります。回収期間を短くする基本は、設備を最高スペックにすることではなく、稼働率を上げる設計に寄せることです。

回収期間シミュレーションの作り方(税理士実務の型)

ここからは、開業前に最小限の前提で「回収期間」を出すための手順です。1点=10円で計算します(実際は患者負担・保険請求の組み合わせになりますが、概算には点→円換算が便利です)。

Step 1: 月次の固定費を確定する(先に下限を固める)

  • 借入返済(またはリース料)
  • 保守契約(MRI/CT/PACS)
  • 家賃・共益費
  • 人件費(給与+社保+採用費の月割)
  • 外注読影費(固定契約がある場合)
  • 水道光熱・通信・保険・顧問料 等

Step 2: 変動費を整理する(件数に比例するものだけ)

  • フィルム等があれば材料費(デジタル中心なら小さい)
  • 外注読影費(件数課金の部分)
  • 造影を扱うなら薬剤・ルート等(対象診療により)

Step 3: 検査1件あたり粗利を置く(単価の置き方がコツ)

最も現実的なのは、連携先(整形外科、脳外科、健診、他院)から想定される検査ミックスで、

  • MRI単価(保険請求の平均)
  • CT単価(保険請求の平均)
    をそれぞれ置き、加算が取れる分を上乗せする方法です。

ここで重要なのは、画像診断管理加算が「月1回」等の制限を持つため、

  • MRI1件ごとに必ず70点が増える
    という置き方をしないことです。加算はレセプト算定ルールに沿って「月あたり増える点数」を別枠で積み上げます。

Step 4: 月次損益と投資回収(月数)を計算する

  • 月次粗利益 =(MRI件数×MRI粗利)+(CT件数×CT粗利)+(加算・加算分の増分)
  • 月次営業利益 = 月次粗利益 - 固定費
  • 回収期間(月)= 初期投資(自己資金+借入元本などの投下資本)÷ 月次営業利益

Step 5: 感度分析(稼働率・単価・人件費の3点)

最低限、次の3ケースを作ると意思決定が速くなります。

  • 保守的:件数-20%、単価-5%、人件費+5%
  • 標準:ベース前提
  • 強気:件数+20%、単価±0%、人件費±0%

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購入とリースの比較(資金繰りと税務の効き方が違う)

設備投資の意思決定で多いのが「購入かリースか」です。税務だけでなく、金融・資金繰りも絡めて判断します。

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項目購入(借入)リース
初期資金頭金・工事費が重い初期負担を抑えやすい
月次固定費返済+保守リース料+保守(契約で変動)
会計処理減価償却(耐用年数で費用化)原則、リース料として費用化(契約形態により)
更新・入替売却/残価・再投資が必要更新しやすいが総支払は増えがち
金利・総額金利次第で抑えられることも手数料込みで高くなりやすい

結論としては、稼働率が読める(紹介ルートが強い)なら購入、稼働率が不確実ならリースで撤退コストを抑える、という整理が実務的です。

よくある失敗パターン(回収が伸びる典型)

開業支援の現場で多いのは、次の3つです。

  • 設備スペックを先に上げて固定費が膨らみ、稼働率が追いつかない
  • 読影体制(常勤/遠隔/二重読影)を後回しにして、加算や紹介元の要件を満たせない
  • 連携先への報告(文書・所見返し)の運用が回らず、リピート紹介が伸びない

特に画像診断は、マーケティングよりもオペレーション(所見の返却速度・品質)が紹介件数を左右します。設備投資回収は、機械ではなく運用の完成度で決まります。

よくある質問

Q: 画像診断管理加算は、開業直後から算定できますか? ▼
施設基準を満たし、地方厚生(支)局へ届出を行ったうえで、要件(常勤で専ら担当する医師の読影・文書報告等)を満たす運用ができれば算定は可能です。ただし、届出の受理時期や体制整備の実務(読影医の勤務形態、報告書運用)でタイムラグが出やすいため、開業月から満額算定を前提にしない方が安全です。
Q: 遠隔読影でも画像診断管理加算は取れますか? ▼
点数表の通則では、遠隔画像診断の取扱いが定められており、一定の届出・要件を満たす保険医療機関間で行う場合に算定できる整理があります。契約書・責任分界(診療録への記載、所見の返却、緊急時対応)まで含めて設計しないと、運用不全で算定が安定しません。
Q: 回収期間は何年以内が目安ですか? ▼
一律の正解はありませんが、医療機器は更新・保守・競争環境の変化があるため、保守的には「投下資本を早期に回収できる設計」が望ましいです。実務では、借入期間・更新計画(5〜7年での更新等)と整合する回収設計にすることが多いです。個別事情(物件費、紹介ルート、採用難易度)で大きく変動します。
Q: 2026年改定で単価が変わったら、事業計画は作り直しですか? ▼
作り直しというより、「改定後の単価変動」を感度分析に織り込むのが現実的です。施行が2026年6月とされているため、開業時期によっては初年度途中で単価が変わります。固定費を過度に上げない、紹介元の分散、稼働率KPIの管理で吸収できる設計にしておくことが重要です。

まとめ

  • 画像診断クリニックの採算は、検査件数だけでなく画像診断管理加算を安定算定できる体制で大きく変わる
  • 加算は算定制限(例:月1回等)があるため、件数×点数で単純に売上計上しない
  • 回収期間は「固定費の下限→単価→件数→感度分析」の順で作ると、意思決定が速い
  • 購入/リースは税務だけでなく、稼働率の不確実性と撤退コストまで含めて判断する
  • 2026年(令和8年度)改定は2026年6月施行とされており、改定前後2本立てのシミュレーションが安全

参照ソース

  • 厚生労働省「第4部 画像診断(診療報酬点数表)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603753.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について(ページ)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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