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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.12
更新日:2026.01.12
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

反面調査とは?取引先に調査が入る理由|税理士が解説

10分で読めます
反面調査とは?取引先に調査が入る理由|税理士が解説

反面調査とは(結論)

反面調査とは、税務署等がクリニック本人(納税者)の申告内容を確認するために、必要に応じて取引先など第三者へ事実確認を行う調査(いわゆる「反対側からの確認」)です。納税者側の資料だけでは正確な事実把握が難しい場合に実施されます。
院長としては「自院に税務調査が来ていないのに、取引先に連絡がいくのか」という点が不安になりがちですが、反面調査は“珍しい例外”ではなく、整合性確認の手段として用いられます。

本記事では、反面調査の仕組み、対象になりやすい取引先、クリニックでの典型パターン、実務対応のポイントを、税理士の実務目線で解説します。

反面調査が行われる仕組み(法的な位置づけと実務運用)

反面調査は「質問検査権」に基づく第三者確認

税務調査では、税務署職員等が帳簿書類の提示・提出や説明を求める権限(一般に質問検査権と呼ばれます)を前提に、必要範囲で事実認定を進めます。
その過程で、納税者本人の説明・証憑だけでは裏づけが弱い場合、取引先(仕入先、外注先、委託先等)に対して「取引の有無」「金額」「時期」「役務内容」などを確認するのが反面調査です。

事前通知は「法律上の定めがない」領域がある

国税庁の税務調査手続FAQ(一般納税者向け)では、取引先等への反面調査について、事前通知に関する法令上の規定がない一方で、運用上は原則として対象者へ事前に連絡する旨が示されています。
つまり、反面調査は“抜き打ちしかあり得ない”ものではなく、実務では連絡のうえで照会・閲覧が進むケースもあります(ただし事案により運用は変わります)。

ここがポイント
反面調査は「納税者の申告を正確に確認するため」の手段です。取引先に連絡があった時点で、直ちに「違反認定」や「重加算税確定」を意味するものではありません。まずは確認の対象と範囲(何の取引か)を冷静に整理しましょう。

クリニックで反面調査の対象になりやすい「取引先」と論点

反面調査で照会が入りやすい相手先は、クリニックの損益・資金移動に影響が大きく、かつ内容の説明が抽象的になりやすい領域です。典型例を挙げます。

1) 医療機器・医薬品・消耗品の仕入先

  • 高額機器(リース・割賦含む)の導入時期、金額、保守契約の内訳
  • 仕入計上の時期ズレ(期末の未着・返品・値引き)
  • リベート、協賛金、キャンペーン等の名目と処理

2) 検査会社・外注先(画像、検体、清掃、Web運用等)

  • 外注の実在性(業務実態、成果物、作業記録)
  • 役務の範囲と単価の妥当性(業務委託契約の整合)
  • 支払先名義(個人・法人)と実際の役務提供者の一致

3) 広告代理店・制作会社(特に美容・自由診療系)

  • 広告費の急増、成果連動型の精算根拠
  • SNS運用やインフルエンサー施策の実態(投稿・契約・請求の整合)
  • “紹介料”や“コンサル料”が実質的に何を対価にしているか

4) 賃貸人・不動産管理会社・リース会社

  • 家賃・共益費・駐車場の契約条件と支払実績
  • 敷金・礼金・更新料の処理、原状回復費の根拠
  • リース資産の使用実態(院長私用との混在リスク)

5) 関連者(院長の親族会社、友人会社など)

  • 取引条件の合理性、相場との比較
  • 業務実態の説明可能性(成果物・稼働・契約)
  • 院長個人と法人の区分(誰の費用か、誰が便益を受けたか)

「自院に税務調査が来ていないのに反面調査」も起こり得るケース

反面調査は、必ずしも「自院が調査対象として臨場されている」局面に限定されません。たとえば、次のような流れで起こることがあります。

  • 取引先(ベンダー側)の税務調査の過程で、取引の実在性・金額確認として顧客(クリニック)に照会が入る
  • 同業他院や同規模先との比較で、特定費目(広告費、外注費、交際費など)の比率が突出しており、裏づけ確認が必要になる
  • 仕入先側の売上計上と、クリニック側の仕入計上の時期・金額が一致しない(期ズレ、値引き、返品、未払計上など)

ここで重要なのは、反面調査は「相手先の調査の一環」として行われることもある、という点です。クリニック側は“協力依頼を受ける立場”になるため、対応の型を知っておくと混乱が減ります。

税務調査(本体)と反面調査の違い(比較表)

←横にスクロールできます→
項目クリニックへの税務調査(臨場等)反面調査(取引先等への照会)
主な対象納税者本人(クリニック、院長)第三者(仕入先、外注先、賃貸人等)
目的申告内容の確認・更正等の判断取引の実在性・金額・時期等の裏づけ
確認資料総勘定元帳、現金出納、証憑、契約書等請求書・入金記録・契約・納品記録等
事前連絡原則あり(例外あり)法令上の規定がない領域があるが、運用上は連絡がされることが多い
影響追徴・加算税等に直結しやすい直接の処分ではなく、事実認定材料になり得る

反面調査が示唆しやすい「論点」チェックリスト

反面調査が入るとき、税務側が見ている論点は概ね次のいずれかです。自院の状況に照らし、どこが弱点になり得るかを点検しましょう。

  • 外注費・広告費など「内容が見えにくい費目」の証憑が薄い(契約、成果物、作業記録がない)
  • 期末の計上(未払・前払・棚卸)と相手先の計上が合っていない
  • 支払先名義と役務提供実態がずれている(実質は別人)
  • 関連者取引で相場説明ができない(なぜその金額か)
  • 現金や個人カード立替など、資金の流れが複雑で追いにくい
ここがポイント
医療機関では、患者情報(カルテ、予約情報等)を税務対応資料としてそのまま提出するのは適切でない場面が多いです。必要最小限の範囲で、匿名化・マスキング等の配慮を前提に、税理士を通じて提出範囲を調整する運用が現実的です。

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反面調査が疑われる連絡が来たときの実務対応(手順)

取引先から「税務署から確認が来た」と言われた場合、または自院が取引先として照会を受けた場合の基本動作を、手順で整理します。

Step 1: 連絡主体と目的を特定する(詐欺対策も含む)
税務署名・担当部署・担当者名・折返し番号・確認したい取引(年月、相手先、名目)をメモします。電話だけで機微情報を出さず、必要に応じて公式代表番号経由で在籍確認を行います。

Step 2: 対象取引を1取引単位で“証拠セット化”する
対象になっている取引について、契約書、発注書、請求書、納品・作業報告、支払記録(振込控・通帳)、成果物(広告原稿、運用レポート等)をひとまとめにします。説明は「いつ・何を・いくらで・なぜ必要だったか」を短文で添えます。

Step 3: 数字の突合(相手先の請求と自院の計上)を先に行う
金額・消費税・日付(役務提供日、請求日、支払日、計上月)が一致しているかをチェックし、期ズレがある場合は理由(検収基準、締日、値引き、返品)を整理します。

Step 4: 税理士へ共有し、回答範囲と表現を整える
反面調査は「相手先の説明」と「自院の説明」が矛盾すると長期化しやすい領域です。税理士が関与している場合は、回答方針(提出する書類の範囲、口頭説明の粒度)を合わせます。

Step 5: 追加照会に備え、記録を残す
やり取りの日時、相手、確認事項、提出した資料を記録します。後日の説明整合(院内共有)にも役立ちます。

税理士が見ている「通りやすい説明」と「通りにくい説明」

反面調査は、結局のところ“説明可能性”の勝負です。クリニック側が準備しておきたいポイントを整理します。

  • 通りやすい説明

    • 役務の範囲が契約・成果物で確認できる(例:月次レポート、作業記録)
    • 金額決定の根拠がある(見積比較、稼働時間、相場資料)
    • 計上基準(検収・締日)が院内で一貫している
  • 通りにくい説明

    • 「コンサル料」「業務委託」など名目だけで成果物が出ない
    • 誰が何をしたかが曖昧(実体は院長の知人対応など)
    • 期末だけ不自然に費用が増えるが合理的理由がない

税務調査は“正しさ”だけでなく“再現性(第三者が追える形)”が重要です。反面調査は、その再現性を第三者側から検証する手続と考えると理解しやすいでしょう。

よくある質問

Q: 反面調査が入ったら、必ず自院も税務調査になりますか? ▼

A:

必ずではありません。取引先側の税務調査の裏づけとして単発で照会されることもあります。ただし、反面調査で不整合が見つかった場合は、結果的に自院側の確認が深まる可能性はあります。まずは対象取引を特定し、証憑と説明を整えることが先決です。
Q: 取引先から「税務署に資料を出してほしい」と言われました。応じるべきですか? ▼

A:

取引先が反面調査を受けている場合、取引の裏づけ資料の提供を求められることがあります。提供可否は資料の性質(患者情報を含むか、機微情報か)で判断し、必要最小限・匿名化・マスキング等の配慮を前提に、税理士を通じて提出範囲を調整するのが実務的です。
Q: 反面調査で見られやすい費目は何ですか? ▼

A:

クリニックでは、外注費(検査・清掃・Web運用等)、広告宣伝費、コンサル料、交際費、関連者取引、そして高額資産(医療機器・内装・リース)周辺が論点になりやすいです。いずれも「実態の説明」と「証憑の厚み」が鍵になります。

まとめ

  • 反面調査は、申告内容の裏づけとして取引先等へ事実確認を行う調査
  • クリニックでは、外注費・広告費・高額機器・関連者取引が照会対象になりやすい
  • 反面調査は取引先側の調査の一環として起こることもあり、自院臨場と直結しない場合もある
  • 対応の要点は「対象取引の特定」「証憑セット化」「日付・金額の突合」「回答範囲の調整」
  • 個別事情で最適解は異なるため、早期に税理士へ共有し、説明の整合性を確保することが重要

参照ソース

  • 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」: https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
  • 国税庁「税務調査手続について(国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係)」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/sozokuchosatetsuzuki/index.htm
  • e-Gov法令検索「国税通則法」: https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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