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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.04
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

開業時の設備投資は経費?資産計上の判断ポイント|税理士が解説

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開業時の設備投資は経費?資産計上の判断ポイント|税理士が解説

開業時の設備投資は「全部経費にしたい」と考えがちですが、税務では資産計上(固定資産)か経費かをルールに沿って判定します。誤ると、税務調査で否認・追徴になりやすい一方、適切に制度を使えば初年度の負担をコントロールできます。開業医・起業家にとって「どこまで経費にできるか」が悩みどころではないでしょうか。

設備投資の経費化とは

会計・税務でいう「経費化」は、支出を当期の損金(必要経費)として落とすことです。一方、一定期間使うものは原則として固定資産に計上し、減価償却(耐用年数にわたり費用化)します。

開業時は現金支出が集中するため、経費化できるかどうかが資金繰り・納税資金に直結します。ただし「支出した=経費」ではありません。名称が「工事」「修理」「備品」でも、実質で判定されます。

税理士法人 辻総合会計では、クリニック・小規模法人の立上げ支援を通じて、設備投資の区分誤り(固定資産台帳未整備、付随費用の漏れ、内装工事の誤判定)が後から重く響くケースを数多く見てきました。最初にルールを押さえることが最もコストを下げます。

資産計上か経費かの判断基準

判断は「税務の固定資産に該当するか」を起点に整理すると迷いにくくなります。

基本は「使用期間」と「性質」

一般に、事業の用に供し、かつ相当期間使用する物(1年超の使用が想定される物)は固定資産になりやすい領域です。たとえば診察台、医療機器、PC、エアコン、内視鏡周辺機器、受付カウンターなどは、原則として資産計上の方向です。

一方で、消耗品として短期に消費するもの(少額の工具、事務用品、清掃用具など)は経費処理になりやすいですが、「少額だから必ず経費」ではなく金額要件・制度の適用関係が絡みます(次章)。

取得価額の範囲に注意(付随費用も含む)

固定資産かどうかの判定は「取得価額」基準で行うことが多く、ここでのミスが頻発します。取得価額には、購入代金だけでなく、運搬費、据付費、設定費用、試運転費用など、使用可能な状態にするための費用が含まれ得ます。

たとえば電子カルテ用PC本体が9.8万円でも、初期設定・搬入・設置で2万円かかれば、実質は10万円超として扱われる可能性があります。見積書・請求書を分解して保管し、税務上の取得価額を組み立てる視点が重要です。

ここがポイント
開業直後は「とりあえず経費」で処理しがちです。しかし後で資産計上が必要になると、減価償却のやり直しや申告是正が発生します。会計入力の時点で、請求書に「何を」「いくらで」「どの用途で」買ったかを残すことが最短ルートです。
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金額別に見る:10万円・20万円・30万円の実務

設備投資を「どこまで経費にできるか」は、金額帯で整理すると実務に落ちます。所得税の解説として国税庁が示す考え方では、取得価額10万円未満、10万円以上20万円未満(一定の要件で一括償却)、さらに中小企業者等の30万円未満の特例(法人税)などがポイントになります。

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区分(目安)主な処理実務上のポイント
10万円未満少額の減価償却資産として経費処理の対象になり得る付随費用込みで10万円を超えないか確認
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年で均等償却)を選択できる場合がある固定資産計上しつつ、償却で平準化
30万円未満(中小企業者等)少額減価償却資産の特例で即時損金算入できる場合がある(上限あり)適用期限・年間合計上限・申告書添付書類に注意
それ以上原則、資産計上+耐用年数で減価償却耐用年数の設定、資産区分(器具備品/建物附属設備等)が重要

中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、取得価額30万円未満の減価償却資産を一定期間に取得し事業供用した場合に、要件のもとで取得価額相当額を損金算入できる制度です(適用期限・年間上限あり)。制度の使いどころは「初年度の利益が出そう」「資金繰りを優先したい」局面ですが、適用対象外(他の特例との重複不可等)もあるため、開業年度の投資計画とセットで検討します。

ここがポイント
リース(所有権移転外リース等)や保守込みの契約は、見た目が「月額」でも実質が資産取得に近いものがあります。契約書の条項(所有権、解約、保守の内訳)を確認し、税務上の取扱いを早めに固定するのが安全です。

内装工事・改装は「修繕費」か「資本的支出」か

開業時に特に揉めやすいのが、内装・設備工事の扱いです。税務では「通常の維持管理・原状回復」は修繕費(経費)になり得ますが、価値を高める/使用可能期間を延長する支出は資本的支出として資産計上し、減価償却します。国税庁は、付け加え・用途変更のための改装・性能の高い部品への取替え等は資本的支出になりやすいこと、また一定の金額基準による取扱い(20万円未満等)も示しています。

開業工事では「スケルトンからの新装」は資本的支出側に寄りやすく、後からの原状回復・部分補修は修繕費側に寄りやすい、というのが実務感覚です。ただし、名称(修理・改修)では決まらず、内容と効果で判定されます。

匿名事例として、開業時に「受付カウンター造作」「配線・電源増設」「空調更新」「間仕切り新設」をまとめて「修繕費」で処理していたケースがありました。結果として、実質は新たな設備の構築に近く、資産計上(建物附属設備等)へ是正となり、初年度の損金が大きく減って追加納税が生じました。工事見積が「一式」になっていたことが原因で、内訳の再取得にも時間がかかりました。

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失敗しない判断手順と証拠管理

開業時の設備投資は、税務判断と証憑の整備がセットです。以下の順でチェックすると、ほとんどの論点が整理できます。

Step 1: 支出を「物品購入」「工事」「サービス」に分ける

同じ請求書でも、物品(備品)と役務(設定、設置、保守)が混在します。まず分解して台帳化します。

Step 2: 事業供用日(使い始め)を確定する

事業の用に供した日が、減価償却や特例適用の起点になります。納品日ではなく「使用可能になった日」を意識します。

Step 3: 取得価額を組み立て、金額帯ルールに当てはめる

本体+付随費用で10万円・20万円・30万円のラインをまたがないか確認します。年間上限や申告要件のある制度は、適用可否をチェックします。

Step 4: 工事は「修繕費」か「資本的支出」かを効果で判定する

原状回復か、価値向上・期間延長か。判断が難しい場合は、工事の目的・範囲・写真(施工前後)・内訳見積を保管しておくと説明力が上がります。

Step 5: 固定資産台帳を整備し、科目・資産区分を統一する

器具備品、建物附属設備、ソフトウェア等の区分がブレると、耐用年数・償却方法が連鎖的に崩れます。開業時にルールを決め、以後は同じ基準で運用します。

よくある質問

Q: 開業前に買った医療機器は経費になりますか? ▼
原則として「事業の用に供した日」が重要です。開業前に購入しても、開業後に使用開始するなら固定資産として整理し、使用開始以後に減価償却を行うのが基本です。開業費(繰延資産)とは性質が異なるため、混同に注意してください。
Q: 30万円未満なら全部経費にできますか? ▼
30万円未満でも無条件ではありません。中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、対象者・対象資産・年間合計上限・申告手続(明細書添付)など要件があります。また、10万円未満の少額資産や一括償却資産との関係にも注意が必要です。
Q: 内装工事を「修繕費」で処理するコツはありますか? ▼
名称ではなく、原状回復か価値向上かで判定されます。見積の内訳を細かく取り、施工前後写真、工事目的メモを保存することが実務上の防御策です。判断が分かれる場合は、税務上の根拠を踏まえた整理が望ましいです。

まとめ

  • 開業時の設備投資は「支出した=経費」ではなく、原則は資産計上+減価償却で考える
  • 金額帯(10万円・20万円・30万円)で処理の選択肢が変わり、付随費用込みの取得価額で判定する
  • 30万円未満の特例は要件・期限・年間上限・申告手続があるため、投資計画とセットで検討する
  • 内装・設備工事は修繕費と資本的支出の境界が重要で、実質(効果)と証憑で説明できる形にする
  • 開業時に固定資産台帳・科目・資産区分の運用ルールを決めると、後年度のブレと否認リスクが減る

参照ソース

  • 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
  • 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  • 国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1379.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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