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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック開業タイミング2026|診療報酬改定直後の戦略を税理士が解説

10分で読めます
クリニック開業タイミング2026|診療報酬改定直後の戦略を税理士が解説

結論:2026年6月改定は「開業前倒し」より「算定設計」を優先すべき

2026年6月施行の診療報酬改定を前に「5月開業が得か、6月以降が得か」と悩む方は多いですが、判断の軸はシンプルです。開業日そのものより、改定後に狙う点数(算定項目)を確実に取れる体制・届出を整えているかが損益を左右します。特に、施設基準の届出は「出せばすぐ算定」ではなく、受理・算定開始のルールや地域厚生局の運用に左右されます。改定直後は届出が集中しやすく、開業準備が薄いまま前倒しすると、想定より点数が取れず資金繰りが苦しくなるのが現場の典型です。

本記事では、2026年6月改定(令和8年度改定)の流れを前提に、改定前後どちらで開業すべきか、施設基準届出のタイミング設計を中心に実務的に整理します。

2026年6月施行の「診療報酬改定」と開業への影響

診療報酬改定は「点数表」だけでなく「届出要件」が変わる

診療報酬改定は、点数(単価)や算定ルールが変わるだけでなく、施設基準(算定の前提条件)が新設・変更・経過措置付きで改定されるのが実務上のインパクトです。つまり、同じ診療メニューでも、改定後は「スタッフ要件」「研修要件」「実績要件」「院内掲示・同意書」などが増え、算定開始までに追加タスクが発生しやすくなります。

厚労省は令和8年度(2026年度)改定の検討経緯や基本方針等を公開していますが、開業に直結する届出様式・通知類は、改定直前〜施行後にかけて順次整備されるのが一般的です(公開タイミングは毎回揺れます)。そのため、「いつ開業するか」より「いつまでに改定後の要件を満たすか」を先に決めるのが合理的です。

「改定直後に開業」が有利になるケース・不利になるケース

改定直後(6月以降)に開業すると、最初から改定後ルールでの運用に統一でき、二重対応(旧ルール→新ルールへの切替)が不要です。一方で、改定直後は届出が集中し、受理まで時間がかかったり、差し戻しが増えたりしやすい点がリスクです。

逆に改定前(〜5月)に開業すると、早く売上が立ちますが、すぐに改定対応(掲示物、同意書、運用手順、算定ロジック、場合によっては機器・人員配置)をやり直す可能性があります。特にスタッフが少ない立ち上げ期に「改定対応の追加工数」が乗ると、オペレーションが崩れがちです。

ここがポイント
改定年の開業相談で多いのは「開業月をずらして得点(点数)を最大化したい」という発想ですが、実際に利益を削るのは、算定設計の未整備・届出遅延・差し戻しによる機会損失です。まずは“取る点数を決めて、取れる状態を作る”順番で逆算しましょう。

クリニック開業は改定前後どっち?判断フレーム(税理士の実務目線)

判断の軸は3つ:収益モデル/届出難易度/資金繰り

開業タイミングを決める際は、次の3軸で評価するとブレません。

  • 収益モデル:外来中心か、在宅・訪問診療を強くやるか、検査・処置の比率は高いか
  • 届出難易度:施設基準が多いか(例:在宅、リハ、データ提出、加算系など)、要件が重いか
  • 資金繰り:手元資金・融資条件・レセプト入金までの耐久月数(立ち上げ時はブレやすい)

特に「開業初月から取りたい加算が施設基準を要するか」が分水嶺です。施設基準が少ない外来型であれば、改定前倒しのメリット(早期売上)を取りやすい一方、施設基準が多いモデルでは、改定直後に合わせて“最初から改定後の届出パッケージ”で揃えた方が再作業が減ります。

改定前開業/改定後開業の比較表(実務上の違い)

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観点改定前(〜5月)に開業改定直後(6月以降)に開業
売上立ち上がり早い(早期に請求開始)立ち上げは同様だが準備が長引くと遅れる
ルール変更対応すぐ改定対応が必要(掲示・同意書・算定ロジック更新)最初から改定後ルールで統一しやすい
施設基準届出旧要件で出しても改定で届出直しが発生し得る改定後要件で一括設計しやすい
事務負担立ち上げ+改定対応でピークが二回来る改定対応を織り込んだ立ち上げが可能
リスク“取りたい点数が取れない月”が出やすい届出集中で受理遅延・差し戻しが増えやすい

この表のとおり、「点数の取り逃しリスク」をどう制御するかが勝負です。税理士法人 辻総合会計の開業支援の現場でも、改定年は「開業日よりも、算定開始の設計と届出管理の精度」で差が出るケースが多いです。

クリニック開業の「施設基準 届出 タイミング」2026の考え方

施設基準は“提出して終わり”ではなく「受理・算定開始」まで管理する

施設基準は、地域の厚生(支)局への届出が必要で、内容確認・受理を経て算定に至ります。加えて、改定直後は「届出開始日が設定される」「期限が通常と異なる」など、年によって実務運用が変わります。過去の改定時にも、届出開始日が明示され、施行月に合わせた締切が案内されています。

また近年は、受理通知の運用が変わり、受理状況をホームページで確認する方式に移行している地域もあります。これにより、「受理通知を待っていたら算定が遅れた」という事故は減る一方、確認を怠ると逆に気づきにくいリスクがあります。

届出が集中する「改定直後」にハマりやすい落とし穴

改定直後(6月施行の直後)は、次の理由で遅延・差し戻しが起きやすいです。

  • 新様式への記入ミス(旧様式で出してしまう、添付書類不足)
  • 要件解釈の揺れ(疑義照会が必要、局ごとに確認ポイントが違う)
  • 医療機関側の体制未整備(研修未受講、掲示未作成、実績不足)
  • 届出件数の増加(審査側の処理が逼迫)

ここで重要なのは、「開業日=算定開始日」ではないという前提を持つことです。開業しても、狙っていた施設基準が算定できない期間が出ると、売上計画と資金繰り計画が崩れます。

ここがポイント
改定直後の開業で安全側に倒すなら、「必須の施設基準は最短で算定開始できるスケジュール」を先に作り、開業日はその後に合わせます。開業日を先に決めると、届出と体制整備が後追いになり、取り逃しが増えます。

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改定直後の開業戦略:届出・体制・資金繰りを同時に設計する

ここからは、実務的に再現性の高い進め方を、ステップ形式で整理します。

Step 1: 2026年6月以降に「取りたい点数」を先にリスト化する

  • 初月から必ず取りたい算定(基本料・加算・管理料)を列挙
  • 施設基準が必要なもの/不要なものに分ける
  • 経過措置がつく可能性がある項目は“暫定運用”も想定する

Step 2: 施設基準ごとに「要件→準備物→担当→締切」を分解する

  • 人員要件(職種・配置・勤務形態、兼務可否)
  • 研修要件(受講証明、計画、更新)
  • 書式・掲示・同意書(院内掲示、説明文書)
  • 設備要件(機器仕様、保守契約、校正記録など)

この段階で、“開業前に満たせる要件”と“開業後に実績が必要な要件”が分かれます。後者を初月から狙う計画は、原則として再設計が必要です。

Step 3: 届出の提出順序を決める(早期に出せるものから分割提出)

改定直後は「まとめて一括提出」よりも、「揃ったものから順に提出」した方が受理が早いことが多いです(局からも早期提出を促す案内が出ることがあります)。特に書類が多い場合、どれか1つの不備で全体が止まるのが最悪パターンです。

Step 4: “算定できない月”が出た場合の資金繰りバッファを確保する

  • レセプト入金までのタイムラグを保守的に見積もる
  • 初月・2か月目は想定売上の下振れを織り込む
  • 運転資金(人件費・家賃・リース・外注費)を固定費として先に積む

税理士の立場では、改定年の開業は「制度対応コストが読みにくい」ため、資金繰りに余裕を持たせるほど成功確率が上がります。設備投資を厚くしすぎて運転資金が薄いのは典型的な失敗パターンです。

よくある質問

Q: 2026年6月改定の前(5月)に開業すると不利ですか? ▼

A:

一概に不利ではありません。外来中心で施設基準が少なく、改定対応(掲示物や算定ロジック更新)を短期間で回せる体制なら、早期に売上を立てるメリットがあります。ただし、改定後に狙う加算が多い場合は、届出直しや要件変更で“取りたい点数が取れない月”が出ないよう、事前に算定設計を行うことが重要です。
Q: 施設基準の届出は、開業前に出せますか? ▼

A:

届出可否は届出区分や運用によって異なり、改定時は「届出開始日」が設定されることがあります。過去の改定でも、届出開始日より前は提出できない旨が明示されています。改定直後は特に、地域厚生局の案内(届出開始日・提出期限・提出方法)を確認したうえで、逆算設計が必要です。
Q: 改定直後は届出が遅れますか?対策はありますか? ▼

A:

遅れる可能性は上がります。新様式・添付不足・疑義照会などで差し戻しが増えやすいため、(1) 取りたい施設基準を絞る、(2) 早期に出せるものから分割提出する、(3) 受理状況を定期的に確認する、の3点が有効です。近年は受理通知の郵送を廃止し、ホームページでの確認に移行している地域もあるため、確認フローを院内で決めておくと事故が減ります。

まとめ

  • 2026年6月改定は「開業月」より算定設計と届出管理で損益が決まる
  • 改定前開業は早期売上のメリットがある一方、改定対応の再作業リスクがある
  • 改定直後開業はルール統一がしやすいが、届出集中による受理遅延・差し戻しに注意
  • 施設基準は「提出」ではなく「受理・算定開始」までを管理する
  • 運転資金を厚めにし、点数の取り逃しが出ても耐えられる資金繰り設計が重要

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 厚生労働省 東海北陸厚生局「令和6年度診療報酬改定に伴う施設基準の届出等について(PDF)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000335499.pdf
  • 厚生労働省 近畿厚生局「施設基準届出の受理状況の確認(受理通知の運用変更を含む)」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/gyomu/gyomu/hoken_kikan/shitei_jokyo_00004.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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