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クリニック向けコラム
作成日:2025.06.19
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック開業は医師以外も可能?要件と支援|税理士が解説

8分で読めます
クリニック開業は医師以外も可能?要件と支援|税理士が解説

クリニック開業は、医師以外でも「制度上は可能なケースがあります」。ただし、医療法上の開設者要件(非営利性・責任主体の確認)と、管理者要件(医師が担う前提)が壁になります。特に「資金は出すが実態は第三者が経営する」形は、許可・届出の場面で重大な論点になりがちです。医師以外の起業家・法人が医療に参入したい一方で、要件整理を誤ると計画が止まることが課題ではないでしょうか。

クリニック開業は医師以外でもできる?結論と前提

結論として、医師以外でも「開設者になれる可能性」はあります。もっとも、医療機関は営利目的での運営が強く制限され、開設者が実質的に運営責任を負えるか厳格に確認されます。さらに、診療所の現場を統括する管理者は医師(原則)であるため、医師の確保が事業の成否を左右します。

一方で、制度を正しく使えば「非営利法人としての開設」「医師を雇用して管理者に据える」など、一定の設計が可能です。重要なのは、許認可・保険指定・税務を一体で設計することです。

「開設者」と「管理者」の違いとは

開設者とは:責任主体(誰が運営の最終責任を負うか)

医療法上の開設者は、医療機関の開設・経営の責任主体として扱われます。実務では、資金計画、人事権、収益・資産の帰属、損失・負債の責任などが「開設者に帰属しているか」を見られます。名義だけを置き、第三者が実質的に左右する構造は問題化しやすい点に注意が必要です。

管理者とは:医療の安全・運営管理の責任者(誰が現場を管理するか)

管理者は、医療機関の管理・運営について責任を持つ立場で、医師が担う前提です。医師以外が「経営者」であっても、医療の提供体制は管理者(医師)を中心に組み立てる必要があります。

ここがポイント
よく誤解されるのが「開設者=院長(医師)」という同一視です。実態として院長が開設者のケースは多いものの、制度上は開設者と管理者は別概念であり、両者の要件整理が設計の出発点になります。

医師以外が関与できる主な開業パターン

医師以外の参入は、「誰が開設者になるか」「誰が管理者(医師)になるか」で整理すると理解しやすくなります。

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パターン開設者管理者実務上のポイント
医師個人で開業医師個人同じ医師が担うことが多い設計が比較的シンプル。税務は個人事業が基本。
医療法人で開業医療法人医師(理事長等とは別の場合あり)ガバナンス設計と役員報酬・退職金など「出口」も重要。
非営利法人で開業非営利法人医師を任命非営利性・資金提供者の関与範囲の説明責任が重い。

パターン1:非営利法人が開設者となり、医師を雇用する

医師以外が主体となる場合、多くは法人(非営利性が説明できる器)を前提に設計します。ここで問われるのは、形式ではなく実態です。運営の責任主体が誰なのか、資金提供者がどこまで意思決定に関与するのかが審査・確認の核心になります。

パターン2:医師の「名義」を使う設計は避ける

「医師を雇う」のと「医師の名義を借りる」のは全く別物です。後者は、許認可・保険指定・税務調査いずれでもリスクが高く、事業継続性にも重大な影響を与えます。開設者と管理者の権限分掌、契約、資金の流れを一貫させる必要があります。

開業までの手続きと進め方

医療は「許認可(行政)」「保険指定(診療報酬)」「税務(資金繰り)」が同時進行します。どれか一つが遅れると開業日がズレやすいため、段取りが重要です。

Step 1: 開設形態を決める(個人・法人・非営利性の整理)

まず、誰が開設者になるか、管理者(医師)をどう確保するかを固めます。資金提供者・テナント契約・設備投資の名義も、この時点で整合させます。

Step 2: 行政手続き(保健所・都道府県等)を逆算して準備する

診療所の開設は、所在地の自治体(保健所等)での手続きが中心です。必要書類やスケジュールは自治体ごとに差が出るため、早期に要件を確認します。

Step 3: 保険医療機関の指定に向けて準備する

開業後すぐに保険診療を行う場合、指定申請の締切や必要書類を踏まえた準備が必要です。開業日の設定は、指定タイミングとセットで決めます。

Step 4: 税務署等への届出と、会計の立ち上げを同時に行う

個人事業として開始する場合、国税庁の案内では「事業の開始等の事実があった日から1月以内」に開業届出等を提出する整理です。開業直後から領収書・請求・給与・レセプト関連の入出金が発生するため、会計運用を後回しにしないことが重要です。

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税理士による開業サポートでできること

「開業できるか」だけでなく、「開業後に資金繰りが回るか」「税務・労務の事故を防げるか」まで含めて設計するのが現実的です。税理士法人 辻総合会計のように医療分野の支援経験がある事務所では、次のような支援が論点になります。

事業計画・資金調達(金融機関向けの説得力を作る)

開業計画は、医療の稼働計画(患者数・診療単価・人員配置)と、資金計画(設備投資・運転資金・返済)を一体で作る必要があります。税理士は、数値計画の妥当性チェック、資金繰り表、借入条件の整理などで支援します。

設備投資・消費税・インボイスを含む税務設計

医療は非課税取引が多い一方、自由診療や物販、委託の形により課税関係が複雑化します。初期投資の大きい開業期ほど、消費税や固定資産の扱いが資金繰りに直結します。「税金は後で」ではなく「設計で先に」が安全です。

ここがポイント
開業後の「想定外あるある」は、資金繰りよりも「名義・契約・入出金のズレ」による税務リスクです。家賃、内装、リース、スタッフ給与の支払主体が一致しているか、早期に点検すると事故が減ります。

月次決算・経営管理(数字が出る仕組みを作る)

開業直後は忙しさから経理が後回しになりがちですが、固定費が重い医療では、月次での損益・資金残高の可視化が重要です。会計の設計(勘定科目、部門、レセコン連携の可否)まで含めて、早期に標準化します。

よくある質問

Q: 医師ではない個人が、単独で診療所の開設者になれますか? ▼

A:

制度上「可能性」が語られる場面はありますが、実務では非営利性や責任主体性の説明が非常に重く、計画段階で自治体と整理が必要です。多くは「非営利法人を前提に設計する」「医師を管理者として確保する」など、要件に合わせた形に調整します。
Q: 医師は雇えばよいので、出資者が実質的に経営しても問題ないですか? ▼

A:

問題になり得ます。開設者が実質的に責任主体でない、または第三者が実態を左右していると評価されると、許認可・指定・監査の観点でリスクが高まります。権限分掌、契約、資金の流れを一体で整えることが重要です。
Q: 税理士に相談するタイミングはいつがよいですか? ▼

A:

物件契約と資金調達の前が望ましいです。家賃・内装・リースの名義、返済計画、役員報酬(法人の場合)などは、契約後に修正しにくい論点です。早期に相談すると、開業後の事故を減らせます。
Q: この記事の内容だけで手続きを進めても大丈夫ですか? ▼

A:

一般論として整理したものであり、自治体運用や事業スキームにより結論が変わります。個別の状況に応じて、行政窓口と専門家(税理士・行政書士等)に確認してください。

まとめ

  • クリニック開業は医師以外でも可能性はあるが、開設者要件(非営利性・責任主体)の整理が不可欠
  • 管理者は医師が担う前提であり、医師確保と権限分掌が設計の要点
  • 「名義貸し」に見える構造は、許認可・保険指定・税務の各面で高リスク
  • 手続きは行政・保険指定・税務が同時進行するため、逆算スケジュールが重要
  • 税理士は資金調達、税務設計、月次管理まで含めて開業の失敗要因を減らせる

参照ソース

  • 厚生労働省「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6372&dataType=1&pageNo=1
  • e-Gov法令検索「医療法」: https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205/20250401_506AC0000000029
  • 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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