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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.14
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

リフィル処方箋で外来収入減?長期処方の経営|税理士解説

8分で読めます
リフィル処方箋で外来収入減?長期処方の経営|税理士解説

リフィル処方箋が普及すると外来収入はどう変わる?

リフィル処方箋とは、症状が安定している患者について、医師・薬剤師の連携の下で、一定期間内に処方箋を反復利用できる仕組みです(最大3回までの運用が整理されています)。この仕組みが広がるほど、慢性疾患の「定期受診=毎月受診」が「数か月に1回受診」へ寄り、再診回数ベースの外来収入は減りやすくなります。

一方で、長期処方・リフィルの適切活用は、残薬・重複投薬の是正や患者利便性の向上とセットで語られます。つまり、経営側は「単に減収を嘆く」のではなく、収益モデルを回数課金から提供価値課金へ寄せる設計が必要になります。

ここがポイント
本記事の試算は「来院回数が減る」ことによる機械的な減収額を示します。実際は、空いた枠に新患・急性期・健診・自費等が入れば総収益は相殺され得ます。院内の患者構成と稼働率(予約の埋まり方)を前提に読み替えてください。

リフィル処方箋とは(仕組み・対象・注意点)

リフィル処方箋の基本

  • 症状が安定している患者が対象
  • 医師の判断で発行され、薬剤師が服薬状況や体調変化を確認しながら調剤を継続
  • 一定期間内に反復利用(最大3回までの考え方が示されています)
  • 投薬量に限度がある薬剤等は対象外となり得る

また、処方箋様式の見直し(リフィル可の表示、調剤実施回数・次回調剤予定日の記載等)も整備されています。

「来院減」の起点はどこか

リフィルが普及すると、典型例として次の変化が起きます。

  • 従来:月1回受診(年12回)→ 毎回「再診+処方箋」等を算定
  • リフィル活用:3か月に1回受診(年4回)→ 受診回数が年8回減る

この差分が、そのまま「外来収入の下振れ圧力」になります。

外来収入の減収シミュレーション(患者数別・2026想定)

ここでは、シンプルに「慢性疾患の定期受診が月1回→3か月に1回へ移行」した場合の減収を計算します。

計算の前提(テンプレ)

  • 受診回数:年12回 → 年4回(年8回減)
  • 1点=10円(医科の点数換算)
  • 「1回あたり算定点数(診察関連)」を3パターンで置く
    • パターンA:再診料+処方箋料中心(例:200点)
    • パターンB:A+医学管理料等(例:350点)
    • パターンC:包括評価寄りで1回単価が高い(例:500点)

減収(年額)= 対象患者数 ×(減った回数8回)×(1回あたり点数)×10円

患者数別の減収額(年額)

←横にスクロールできます→
対象患者数(人)パターンA:200点パターンB:350点パターンC:500点
2003,200,000円5,600,000円8,000,000円
5008,000,000円14,000,000円20,000,000円
1,00016,000,000円28,000,000円40,000,000円
  • パターンA(200点)の内訳イメージ:再診+処方箋料中心
  • パターンB(350点)の内訳イメージ:再診+処方箋料+医学管理料等
  • パターンC(500点)の内訳イメージ:より包括的な管理・指導の評価が厚い(院内運用により変動)
ここがポイント
厚労省の調査・検証資料では、長期処方・リフィル処方の活用状況や課題の把握が進められており、制度運用は「患者の安全性と適正使用」を前提に整理されています。収入への影響は患者の移行率と1回単価(算定構造)でブレます。

「移行率」を入れると、現実に近づく

実務的には、慢性疾患の全員がリフィルに移行するわけではありません。そこで移行率(例:20%・40%・60%)を掛けると、経営判断に使いやすくなります。

  • 実効減収 = 上表の減収額 × リフィル移行率

例:対象患者1,000人、パターンB(350点)、移行率40%

  • 28,000,000円 × 40% = 11,200,000円(年額の下押し目安)

長期処方時代のクリニック経営モデル(減収を埋める発想)

リフィル普及は「外来の回数」が減る一方、診療所の価値提供が消えるわけではありません。打ち手は大きく3方向です。

1)時間当たり生産性を上げる(単価×密度)

  • 生活習慣病のフォローを「検査→説明→行動変容」まで一体で設計し、来院時の提供価値を上げる
  • 予約枠の再設計(急性期枠、新患枠、検査枠、健診枠)
  • スタッフタスクの標準化で医師稼働を意思決定と診療に寄せる

2)患者ポートフォリオを組み替える(構成の最適化)

  • 慢性疾患のフォローが減るなら、空いた枠に「新患」「季節性疾患」「小児・皮膚等の短期反復」を入れる
  • 健診・予防接種・企業健診の導線を強化し、季節変動に備える

3)受診以外の接点を増やす(継続関係の設計)

  • 薬局との情報連携(服薬状況のフィードバック)
  • 電子処方せんの活用で、処方・調剤の情報共有を前提にした安全管理を強化
  • 患者向け周知(リフィルの条件、受診が必要なサイン)を整備し、医療安全とクレームリスクを同時に下げる

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実務で使える試算手順(テンプレを院内数字に置換)

Step 1: 対象患者を切り出す
慢性疾患で「月1回定期受診」になっている患者のうち、症状安定でリフィル移行の可能性がある人数を仮置きします(例:800人)。

Step 2: 現状の1回単価(点数)を決める
院内のレセプト実績から、対象患者の平均点数を抽出します。難しければ「再診+処方箋料+主な管理料」で概算(例:320点)。

Step 3: 減る回数と移行率を置く
月1→3か月1なら年8回減。移行率は20%・40%・60%の3段階で試算すると意思決定しやすいです。

Step 4: 減収と代替売上を同時に見る
減収だけでなく、「空いた枠に何を入れるか(新患、健診、自費等)」の代替売上も同じ表で並べ、差額で判断します。ここまでやると経営モデルの再設計になります。

よくある質問

Q: リフィル処方箋が増えると、必ず売上は下がりますか? ▼
「予約枠が常に埋まっている(稼働率が高い)」院では、減った慢性枠に新患や検査・健診が入れば、総売上は下がらない場合があります。逆に稼働率が低い院では、減収がそのまま残りやすいので、移行率と稼働率をセットで試算してください。
Q: どの患者がリフィル移行しやすいですか? ▼
一般には「症状が安定」「服薬が安定」「副作用等のリスクが低い」「フォローの必要度が相対的に低い」患者が候補になりやすいです。対象外となり得る薬剤もあるため、院内の処方構成と安全管理の観点で整理するのが安全です。
Q: シミュレーションで見るべき指標は何ですか? ▼
最低限、(1)対象患者数、(2)移行率、(3)1回単価(点数)、(4)稼働率(空き枠が埋まるか)です。可能なら「新患獲得単価」「健診比率」「検査実施率」も並べると、打ち手の優先順位が明確になります。

まとめ

  • リフィル処方箋の普及は、慢性疾患の受診回数を減らし、再診回数ベースの外来収入を下押しし得る
  • 減収は「対象患者数×減った回数×1回単価×移行率」で概算できる
  • 稼働率が高い院は、空いた枠の再設計で総収益を維持・改善できる余地がある
  • 収益モデルは回数課金から提供価値の密度へ寄せる発想が重要
  • 実務では、減収と代替売上を同じ表で並べて意思決定するとブレにくい

参照ソース

  • 厚生労働省「使ってみよう電子処方せん(リフィル処方せん編)」: https://www.mhlw.go.jp/content/001237204.pdf
  • 厚生労働省「処方箋等の見直し(リフィル処方箋の様式等)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001075456.pdf
  • 厚生労働省「長期処方及びリフィル処方箋の実施状況調査報告書(案)<概要>」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001473987.pdf
  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回)議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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