
執筆者:辻 勝
会長税理士
クリニック税理士顧問料の内訳と相場の判断基準|税理士が解説

クリニックの税理士顧問料が高い/安いの結論:相場より「内訳」と「成果物」で判断します
クリニックの税理士顧問料は、「相場より高いか安いか」だけで良否が決まりません。判断軸は、顧問料=作業量×リスク×対応品質で説明できます。
同じ月額でも、月次の数字の精度、医療特有の消費税・源泉・人件費まわりへの対応、院長の意思決定に繋がる資料の有無で、実質コストは大きく変わります。
一方で、価格が高いのに「記帳の丸投げ受け皿」になっていたり、安いのに追加料金が頻発したりするケースもあります。顧問料の妥当性は、内訳(何を・どこまで)と成果物(何が増えるか)で判断するのが合理的です。
税理士法人 辻総合会計でも、見積相談で最も多いのは「比較対象が月額しかないため判断できない」という悩みです。以下では、医療機関の目安レンジ、内訳の見方、見積比較の手順を、実務目線で整理します。
クリニックの税理士顧問料の相場:月額だけでなく「決算料込み」で見る
月額顧問料の目安レンジ(あくまで一般論)
税理士顧問料は地域・事務所方針・業務範囲で差が出ます。ここでは、医療機関でよくある契約形態を前提にした「目安レンジ」を示します(個別事情で変動します)。
- 月次監査中心(記帳は院内または別委託):月2万〜6万円程度
- 記帳代行込み(仕訳量が中程度):月5万〜12万円程度
- 医療法人・多拠点・部門管理・人件費支援が厚い:月10万〜25万円程度
重要なのは、月額に「何が含まれるか」です。例えば、源泉所得税の納付や年末調整、消費税申告、給与計算が含まれるかで、実務負担は別物になります。
決算料・申告料は別建てが一般的
月額が安く見えても、決算・申告が高額なら年間で逆転します。比較は「年間総額(12か月+決算+オプション)」で行うのが実務的です。
顧問料の内訳:月額に何が含まれるかで「高い/安い」が変わります
クリニックの顧問料は、概ね次の要素に分解できます。
- 月次(記帳レビュー、試算表、残高チェック、簡易レポート、面談)
- 記帳代行(仕訳入力、証憑整理、スキャン運用、未払・未収の整理)
- 給与・社保周辺(給与計算、源泉、年末調整、法定調書、住民税)
- 消費税(課税判定、区分経理、申告、インボイス対応)
- 決算・申告(法人税/所得税、事業税、地方税、償却資産など)
- 相談対応(設備投資、融資、医療法人化、分院、事業承継)
特に医療機関は、保険診療が非課税となる領域が大きく、自由診療・物販等が混在すると消費税の区分が難しくなります。医療関係の非課税範囲の考え方は国税庁の通達等でも整理されています。
また、インボイス制度は仕入税額控除の要件として請求書等の保存が求められ、運用設計が顧問の実務負担に直結します(制度開始は令和5年10月1日)。
加えて、税理士報酬そのものにも源泉徴収が必要となる場合があるため(支払者側の実務)、経理フローの整備支援が含まれるかも確認ポイントです。
「高くなる理由」と「安く見える落とし穴」:比較表でチェックします
以下は、価格帯ごとに含まれがちな範囲を整理した比較です(事務所により異なります)。
| 観点 | 低めに見えるプラン | 標準〜高めのプラン |
|---|---|---|
| 月次試算表 | 数か月遅れ、簡易 | 翌月中、残高精査まで |
| 記帳代行 | 別料金・上限あり | 月額に一定量込み |
| 医療特有の消費税 | 最低限の区分のみ | 非課税・課税の混在を前提に運用設計 |
| 給与・源泉 | 年末調整のみ別料金 | 月次給与・源泉・年末調整まで一体 |
| 相談対応 | 回数・時間に制限 | 投資・採用・法人化まで継続支援 |
| 追加料金 | 「都度見積」で増えやすい | 条件が明確(超過時のみ) |
安く見える落とし穴は、次の2つです。
- 追加料金の条件が曖昧(「相談は別」「仕訳が増えたら都度」など)
- 成果物が薄く、意思決定に使えない(数字が遅い・粗い)
反対に、高いのに成果が薄いケースもあります。例えば、面談は多いが資料が整わない、担当が頻繁に変わる、医療特有の論点(消費税・労務・医療法人手続)に弱い、といった場合です。
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見積を比較する方法:院内の前提条件を揃えてから比べます
顧問料比較で失敗しないために、同じ条件で見積を取ることが重要です。以下の手順で整理すると、価格差の理由が見えるようになります。
Step 1: 自院の「取引量」と「論点」を棚卸しする
仕訳数(概算で可)、従業員数、保険・自由診療の構成、物販や自費材料の有無、リース・借入の件数を整理します。混在がある場合、消費税の区分経理が論点になります。
Step 2: 依頼範囲をチェックリスト化して提示する
「記帳代行の有無」「給与計算・源泉・年末調整」「消費税申告」「決算申告」「経営レポート」「融資支援」などを明文化します。ここが曖昧だと、比較が成立しません。
Step 3: 月額・決算・オプションの料金表を出してもらう
追加料金の発生条件(仕訳超過、面談回数、税務調査対応、届出等)を必ず確認します。年間総額の見立てができる状態にします。
Step 4: 月次の成果物サンプルで品質を確認する
試算表だけでなく、売上(保険・自費)と人件費、現預金の整合、未収金・未払金の整理がどう扱われるかを確認します。数字が意思決定に耐えるかが要点です。
Step 5: 担当体制とコミュニケーション仕様を確認する
担当者の固定、レスポンス目安、面談頻度、オンライン可否、クラウド会計・証憑管理(電子帳簿保存制度への対応方針)を確認します。
医療機関特有の「顧問価値」が出る領域:ここが料金差になりやすい
1) 消費税:非課税と課税の混在、インボイス運用
保険診療は非課税領域が中心ですが、自由診療・物販・文書料等が混在すると、仕入税額控除の区分や按分が必要になります。薬品の仕入れ等で区分が困難な場合の考え方も国税庁の質疑応答事例で示されています。
インボイス制度下では請求書等の保存と運用設計が必要で、院内オペレーションまで踏み込めるかが差になります。
2) 人件費と源泉:納期の特例、年末調整、制度対応
医療機関は採用・シフト・手当が複雑化しやすく、給与計算の精度が経理工数に直結します。源泉所得税の納期の特例の適用や、年末調整・法定調書の運用まで含めるかで顧問範囲が変わります。
また、制度対応(例:令和6年分所得税の定額減税のような年次論点)も、院内の実務負担を左右します。
3) 医療法人化・分院・承継:税務と手続の両輪
医療法人は設立認可や届出などの手続が絡み、税務だけでは完結しません。スケジュール管理や必要書類の設計まで支援できる体制かどうかが、顧問料の高い/安いに影響します。医療法人化は「税金の話」だけでなく「手続と運営」のプロジェクトだからです。
よくある質問
Q: クリニックの税理士顧問料は、結局いくらが妥当ですか?
Q: 顧問料が安い税理士に変えると、何が起きやすいですか?
Q: 見積で必ず確認すべき項目は何ですか?
まとめ
- 顧問料の妥当性は「相場」より「内訳(何をどこまで)」と「成果物(意思決定に使えるか)」で判断する
- 比較は月額ではなく、決算料・オプション込みの年間総額で行う
- 医療機関は消費税の混在や源泉・給与の実務が料金差の主要因になりやすい
- 見積は前提条件(取引量・依頼範囲)を揃え、追加料金条件と月次品質を必ず確認する
- 医療法人化や分院などのプロジェクト領域まで支援できるかが高い/安いの分岐点
参照ソース
- 国税庁「第6節 医療の給付等関係(消費税基本通達)」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/06/06.htm
- 国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
- 国税庁「A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm
- 国税庁「No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2798.htm
- 国税庁「薬品の仕入れについての仕入税額控除(質疑応答事例)」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/19/04.htm
- 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
- 国税庁「定額減税について」: https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/01.htm
- 厚生労働省「医療法人設立等の手続等について」: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/tetuduki.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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