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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.04
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック税理士が提案しない原因と対処法|税理士が解説

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クリニック税理士が提案しない原因と対処法|税理士が解説

クリニックの税理士が提案してくれないとは

クリニックの院長にとって「税理士が提案してくれない」とは、多くの場合、月次の試算表や決算・申告は進む一方で、資金繰り・節税・人件費設計・分院展開などの打ち手が出てこない状態を指します。特に開業直後や人員増の局面では、意思決定のスピードに対して会計・税務のフィードバックが遅く感じやすいのではないでしょうか。

結論から言うと、提案が出ない原因は「能力不足」だけではなく、契約範囲と期待値のズレ、情報不足、業務設計(面談設計)の欠如で説明できるケースが大半です。適切に手当てすれば、同じ税理士でも提案が増えることがあります。

税理士が提案しない理由

税理士の業務は「提案」より前に守備範囲がある

国税庁は、税理士業務を「税務代理・税務書類の作成・税務相談」と説明しています。つまり、申告や税務相談は中心領域でも、経営提案(投資判断、KPI設計、採用計画など)は契約や体制次第で濃淡が出ます。

ここがポイント
「提案がない=違法・不誠実」というより、「顧問契約の役割が記帳・申告中心に設計されている」可能性をまず疑うのが実務的です。

料金体系が「工数連動」だと提案が出にくい

記帳代行と決算申告の報酬が中心の場合、税理士側の時間は「処理」に優先配分されます。提案は、現状分析・仮説検証・シミュレーションが必要で、どうしても追加工数になります。提案は無料サービスでは継続しにくい、という構造を押さえておくと交渉が進みます。

そもそも提案に必要な情報が揃っていない

提案が出るためには、最低限次の材料が必要です。

  • レセプト件数・単価・自費比率・新患再来構成
  • 人件費内訳(職種別・残業・賞与見込)
  • 設備投資の候補、リース・借入条件、院内導線の制約
  • 院長の方針(守りか攻めか、分院か専門特化か)

これらが共有されていないと、税理士は「言い切れない」ため、無難に数字説明で終わりがちです。

得意分野が「医療経営」ではない

医療業界は、診療報酬・レセプト・医療法人化・職種別人件費など、一般業種と論点が異なります。厚生労働省も医療法人・医業経営に関する情報を整理しており、医療経営には固有の前提があります。
税理士が医療に明るくない場合、提案は出にくくなります。

提案を引き出す相談方法と面談設計

「提案してください」と言うだけでは、提案は増えません。提案は会議体で設計します。税理士法人 辻総合会計では、提案が止まっている顧問先に対し、次の手順でコミュニケーションを再設計することが多いです。

Step 1: 期待する提案テーマを3つに絞る

例:

  • 節税(役員報酬、退職金、消費税、設備投資)
  • 資金繰り(借入、リース、キャッシュ予測)
  • 経営管理(部門別・自費の見える化、採用判断)

テーマを絞ることで、税理士側も準備ができます。

Step 2: 月次報告を「説明」から「意思決定」へ変える

月次面談のゴールを「先月の数字説明」から「今月決めること」に置き換えます。
事前に「議題」と「判断したい項目」を送るだけで、提案が出やすくなります。

  • 例:次の設備投資(◯月導入予定)の資金手当案を3案出してほしい
  • 例:スタッフ1名増員の損益分岐点を概算してほしい

Step 3: 必要データを院内で揃える(税理士に丸投げしない)

提案の材料は院内にあります。院長が把握している「現場の変化」を数字に紐づけるだけで提案の精度は上がります。税理士に渡すべきは帳簿だけではない、という点が重要です。

Step 4: 3か月だけ「提案トライアル」を契約に明記する

改善が見えない場合は、3か月限定で「提案テーマ」「提出物」「面談頻度」を合意し、成果を評価します。曖昧な依頼ではなく、成果物の定義が鍵です。

ケーススタディ(匿名)

ある内科クリニックでは「税理士が何も言ってくれない」との不満がありました。しかし、実態は「月次は郵送で試算表が届くだけ」「面談なし」「採用計画や投資計画の共有なし」でした。
月1回のオンライン面談に切替え、議題を「人件費率の許容範囲」と「自費メニュー導入時の損益分岐点」に固定したところ、2か月目から具体策(シフト設計、価格設計、支出タイミング調整)が出るようになりました。提案は会議体で増える典型例です。

記帳代行と経営顧問の違い

提案が欲しいなら、契約の中身を「処理中心」から「意思決定支援」へ寄せる必要があります。

←横にスクロールできます→
項目記帳・申告中心の顧問提案型(経営顧問)
目的適正申告・処理の安定収益性・資金繰り改善
面談必須でないことが多い月次または四半期で実施
インプット会計資料が中心KPI・投資計画・人員計画も共有
アウトプット試算表、申告書予実管理、資金繰り表、シミュレーション
費用感比較的低い工数増のため上がりやすい

「提案を増やす」=「作業範囲を増やす」ため、報酬が変わるのは自然です。反対に言えば、報酬を変えずに提案だけ増やす交渉は、長期的には破綻しやすいです。

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どうしても改善しないときの税理士変更手順と注意点

提案が増えない理由が「相性」や「専門性不足」であれば、変更も合理的です。国税庁は、税理士業務(税務代理・書類作成・税務相談)が税理士等の資格者に限られることを注意喚起しています。変更時は、資格者であることの確認も含め、実務的に進めましょう。

Step 1: まずは現税理士に改善要求を文書化する

  • 期待する支援(例:四半期の節税提案、資金繰り表作成)
  • 面談頻度
  • 追加報酬の扱い(必要なら見積依頼)

Step 2: 変更の「タイミング」を決める

  • 決算直後〜次の期首は引継ぎが比較的スムーズ
  • 消費税の課税判定・簡易課税の届出など、期中判断が多い場合は早めが安全

Step 3: 引継ぎ資料を揃える(トラブル予防)

  • 会計データ(仕訳、科目体系、補助科目)
  • 申告書控え、届出書控え、税務署からの通知
  • 借入契約書、リース一覧、固定資産台帳
ここがポイント
変更時に最も起きやすい問題は「データが出ない」「責任範囲が曖昧」の2つです。契約書・委任状・データ返却条件を確認し、引継ぎ範囲を先に合意すると揉めにくくなります。

よくある質問

Q: 税理士に「もっと提案して」と言うのは失礼ですか? ▼
失礼ではありません。ただし「何を・いつまでに・どんな形で」がないと、期待値だけが膨らみます。提案テーマを3つに絞り、面談の議題として提示すると現実的です。
Q: 提案型の税理士に変えると、費用はどれくらい上がりますか? ▼
取り組む内容(資金繰り表、予実管理、シミュレーションの頻度)で変わります。重要なのは「増えた費用以上に、意思決定の質が上がるか」です。まずは3か月のトライアル設計が有効です。
Q: 税理士変更で税務調査リスクは上がりますか? ▼
変更そのものが直接リスクを上げるとは限りません。ただし引継ぎ不備で申告内容がぶれると説明負荷が上がります。申告書控え・届出書控え・会計データの整備を優先してください。

まとめ

  • 提案が出ない原因は、能力よりも契約範囲と会議体の設計にあることが多い
  • 提案を増やすには、議題の事前提示と院内データ共有が不可欠
  • 記帳代行型と経営顧問型は目的・アウトプットが異なり、費用体系も変わりやすい
  • 改善しない場合は、期首タイミングでの変更と引継ぎ資料の整備が安全
  • 医療業界の論点に強い専門家を選ぶと、意思決定の質が上がりやすい

参照ソース

  • 国税庁「税理士制度について(No.9203)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9203.htm
  • 国税庁「にせ税理士にご注意(No.9204)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9204.htm
  • 厚生労働省「医療法人・医業経営のホームページ」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/igyou/index.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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