
執筆者:辻 勝
会長税理士
デイサービス介護報酬2026|食費基準変更の説明ポイントを税理士が解説

2026年介護報酬改定でデイサービスが最初に押さえる結論
2026年(令和8年度)の介護報酬改定は、デイサービス(通所介護)にとって「介護職員等処遇改善加算の拡充」と「食費の基準費用額(施設等)の見直し」が同時に走る点が要注意です。特に食費の基準費用額は、デイサービスの食事代そのものを国が一律に値上げする話ではなく、主に施設・短期入所等に関係する基準の見直しです。とはいえ、利用者・家族から「デイの食費も上がるのか?」という問い合わせが増えやすく、説明設計が経営課題になります。厚生労働省資料では、食費の基準費用額を1日あたり100円引き上げ、低所得者は所得区分に応じ据置または30~60円引上げとされています。
デイサービス(通所介護)に関係する「食費基準変更」とは
「基準費用額(食費)」とデイサービスの食費は別物になりやすい
厚生労働省の資料で扱われる食費の基準費用額は、主に介護保険施設等における食事提供費の標準的な水準(補足給付の計算等に関係)を意味します。令和8年度改定では、平均的な費用の額(食事の提供に要する費用の額)が一日につき1,445円から1,545円へ見直されています。
一方、デイサービスの食費は、原則として介護保険給付の外(いわゆる実費)として事業所が設定し、利用者が自己負担する形が一般的です。ここで誤解が起きやすく、利用者説明では「国が決めた基準=デイの昼食代が必ず上がる」と受け取られがちです。
低所得者の食費負担限度額も見直し(ただし対象サービスに注意)
令和8年度改定では、食費の負担限度額も見直しが示されており、例として以下のように増額されています(制度上の区分に応じた上限の見直し)。
食費の「基準」と「負担限度額」改定(2026年)の要点
利用者説明で混乱しやすい部分を、代表的な数字で整理します。
| 区分(代表例) | 改定前 | 改定後 | 主な意味合い |
|---|---|---|---|
| 食事の提供に要する平均的な費用の額(基準費用額の根拠) | 1,445円/日 | 1,545円/日 | 施設・短期入所等の食費設計の基礎になる水準 |
| 食費の負担限度額(例:区分Ⅰ) | 1,300円/日 | 1,360円/日 | 低所得者の上限(区分により変動) |
| 食費の負担限度額(例:区分Ⅱ) | 1,360円/日 | 1,420円/日 | 同上 |
| 食費の負担限度額(例:区分Ⅲ) | 1,000円/日 | 1,030円/日 | 同上 |
| 食費の負担限度額(例:区分Ⅳ) | 650円/日 | 680円/日 | 同上 |
※上記は改定資料に記載の代表値です。実際の適用範囲(どのサービスに適用されるか)と、利用者の所得区分判定は個別に確認が必要です。
デイサービス経営での実務影響:利用者説明・契約・請求の「ズレ」を潰す
1) 利用者・家族への説明で必ず押さえる3点
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、介護事業者の顧問対応で「食費改定=デイ食費値上げ」と誤解される相談が毎回発生します。説明は次の順番が安全です。
- 「今回の食費基準は、主に施設等の制度上の基準の見直し」です
- 「デイの食費は、基本的に介護保険外の実費で、当事業所の契約に基づきます」
- 「ただし、物価上昇・仕入上昇があれば、食材料費の見直しはあり得ます。その場合は事前に案内し、同意手続きを行います」
制度改定と事業所の価格改定を切り分けて話すだけで、クレームや解約リスクが大幅に減ります。
2) 重要事項説明書・契約書・料金表の整合
デイの食費を見直す場合は、介護報酬改定とは別に、運営上のルールとして整備が必要です。
- 料金表(食費・おやつ代等)の改定履歴を残す
- 重要事項説明書の「実費負担」欄と一致させる
- 同意取得(利用者・家族)の運用を統一する
- 併設で短期入所等がある場合、サービス別に説明資料を分ける
3) 会計・消費税(軽減税率)の区分経理
食費は介護保険請求とは別に管理されることが多く、経理では区分経理が重要です。飲食料品の譲渡に該当する場合、軽減税率(8%)の対象となるケースがあり、税率混在の区分が必要になります。国税庁は軽減税率制度の概要として、複数税率下での区分経理の必要性を示しています。
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利用者への説明を失敗しない「運用ステップ」
Step 1: 改定内容をサービス別に仕分ける
「通所介護(デイ)」と「施設・短期入所等」で、食費の制度上の基準の関係性を整理します。併設がある場合は特に重要です。
Step 2: よくある質問(想定問答)を作る
「デイの食費は上がりますか?」「国が100円上げるって聞いた」など、問い合わせを想定して回答を統一します。
Step 3: 価格改定するなら改定理由を数値で示す
食材費・委託費・光熱費の推移を短くまとめ、利用者が納得しやすい材料を準備します。
Step 4: 文書・同意・システム(請求/会計)を同時に更新する
料金表だけ変えて、重要事項説明書や会計の税率区分が古いままだと事故が起きます。改定日を決め、更新対象をチェックリスト化します。
よくある質問
Q: 2026年改定で、デイサービスの昼食代は一律で100円上がるのですか?
Q: 利用者から「国が決めた基準だから払わないといけない」と言われたら?
Q: 食費の請求に消費税はかかりますか?
まとめ
- 2026年改定の「食費基準変更」は、デイの食費を国が一律値上げする話ではなく、主に施設等の制度上の基準見直し
- 代表値として、食事提供の平均的費用は1,445円/日から1,545円/日へ見直し
- 利用者説明は「制度改定」と「事業所の価格改定」を切り分けるのが鉄則
- 食費を見直す場合は、料金表・重要事項説明書・同意・会計(税率区分)を同時更新
- 軽減税率を含む区分経理の整備が、後々の税務リスクを減らす
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について(資料1)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001647819.pdf
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案(諮問書別紙)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001633494.pdf
- 国税庁「No.6102 消費税の軽減税率制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6102.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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