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クリニック向けコラム
作成日:2026.01.04
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

電子帳簿保存法 2026対応 クリニック証憑運用|税理士が解説

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電子帳簿保存法 2026対応 クリニック証憑運用|税理士が解説

電子帳簿保存法で最低限やるべき結論(証憑の残し方)

電子帳簿保存法でクリニックが最低限やるべき運用は、「電子取引の証憑をデータのまま保存し、検索できる状態にする」ことです。スタッフの入替えが起きやすい現場では、ルールが曖昧だと「メール添付の請求書を印刷して終わり」「クラウド明細を見られなくなった」などが発生し、後から回収できない証憑が生まれます。院長・経理担当が忙しくても回るよう、まず最低限ラインを決めて運用を固定化することが重要です。

税理士法人 辻総合会計でも、クリニックの月次支援の現場で「電子取引だけ未対応で監査・税務調査が不安」という相談を繰り返し見てきました。以下では、制度を網羅するのではなく、「違反リスクが高いところから先に潰す」実務順で整理します。
(制度の公式情報は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイト等をご確認ください。)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

電子帳簿保存法とは(クリニックが迷う3分類と「最低限」)

電子帳簿保存法の実務は、大きく次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 電子帳簿等保存:会計ソフト等で作った帳簿をデータ保存する枠組み
  • スキャナ保存:紙の領収書等をスキャンしてデータ保存する枠組み
  • 電子取引:メールやクラウド等で受け取った請求書・明細等のデータ保存義務

この中で、クリニックが「最低限」から着手すべきは、ほぼ例外なく電子取引です。理由は単純で、電子取引は「任意の制度」ではなく、該当すれば保存が義務だからです(電子取引関係の要点・Q&Aは国税庁の整理をご参照ください)。https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/01.htm

一方、スキャナ保存は「紙を捨てたい」場合に要件が重くなりやすく、電子帳簿等保存は会計ソフトの設定や運用に踏み込むため、最初から完璧を狙うと頓挫しがちです。最低限の運用設計では、次の優先順位が安全です。

  • 最優先:電子取引をデータで残す(印刷保存に寄せない)
  • 次点:紙の証憑は紙で保管しつつ、必要に応じてスキャン(捨てない)
  • 発展:スキャナ保存で紙廃棄、電子帳簿等保存で加算税軽減などを検討
ここがポイント
「電子化した方が楽だから」と最初からスキャナ保存(紙廃棄)に寄せると、規程整備・運用統制が必要になり、現場負担が跳ね上がります。最低限ラインでは「紙は紙で残す」運用を一旦の安全策にするのが現実的です。

最低限の運用は「電子取引」から(印刷運用の落とし穴)

電子取引に該当しやすいクリニックの証憑

クリニックで電子取引に該当しやすいものは、次のとおりです。

  • メール添付の請求書、領収書(PDF、画像、CSV)
  • クラウド請求書・Web明細(医薬品卸、検査外注、リース、家賃、通販等)
  • インターネットバンキングの振込明細、クレカ明細、決済サービスの利用明細
  • オンラインで受領する契約書・見積書・発注書・納品書

現場で多い誤解は「印刷してファイルすればOK」です。しかし、電子取引で受領した取引情報は、原則としてデータで保存することが求められます。まずは「データを所定の場所に保存する」運用を固定してください。国税庁の電子取引関係ページ・一問一答が基準整理として実務に有用です。https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/01.htm

最低限の保存要件は「検索できる」「改ざんされにくい」を外さない

実務的には、電子取引の保存で守りたい核は次の2つです。

  • 可視性:必要なときに見られる(保存場所が明確、閲覧権限がある)
  • 検索性:日付・金額・取引先などで探せる(ファイル名や索引で代替してもよい)
  • 真実性:改ざんや差替えが起きにくい(権限管理・ログ・運用ルール)

ここを崩さない範囲で、クリニックの規模に合わせて簡素化します。ポイントは「システムで担保する部分」と「運用で担保する部分」を切り分けることです。

  • システムで担保:クラウドストレージの更新履歴、アクセス権、会計連携
  • 運用で担保:保存期限(例:月次締めまでに格納)、命名規則、月次点検

すぐ回るフォルダ設計(おすすめ最小構成)

フォルダが複雑だと守られません。最小構成は次で十分です。

  • 01_電子取引(データ原本)
    • 2026-01
    • 2026-02
  • 02_スキャン(紙→画像/PDF)
    • 2026-01
    • 2026-02
  • 03_契約・固定(賃貸借、リース、保守、顧問等)
  • 99_テンプレ(命名ルール、運用メモ)

ファイル名は、検索に耐えるよう次の順で固定します。

  • YYYYMMDD_取引先_金額_内容(例:20260115_〇〇医薬品_132,000_請求書.pdf)
  • 金額が不明なら空欄可(例:20260120_〇〇リース__契約書.pdf)

この命名を徹底するだけで、専用システムなしでも「日付」「取引先」「金額」での絞り込みが現実的になります。

レシート・領収書の残し方(紙保管とスキャナ保存の分岐)

まずは「紙は捨てない」で安定させる

最低限ラインでは、紙の領収書・レシートは原本を保管し、必要に応じてスキャンを控えとして使うのが安全です。特に次のような紙証憑は、初期運用では紙保存を推奨します。

  • 旅費交通費(タクシー、駐車場)
  • 医局・学会・書籍などの小口立替
  • 現金払いの消耗品、備品

この段階で重要なのは「紙は紙で保管しつつ、電子取引だけはデータ保存を徹底」することです。電子化の効果は十分出ます。

紙を捨てたい場合だけ「スキャナ保存」を検討する

紙を廃棄してデータに一本化したい場合、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。国税庁はスキャナ保存について制度ページとQ&Aを整理しており、要件確認の起点になります。https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/03.htm

実務で最低限押さえる論点は次のとおりです(詳細は上記の国税庁資料で確認してください)。

  • スキャンの対象(重要書類・一般書類などの区分)
  • 入力期限(受領後の一定期間内にスキャンする運用)
  • 真実性の確保(タイムスタンプ、訂正削除履歴、相互けん制の仕組み等)
  • 可視性・検索性(見読性、検索、ディスプレイ等)
ここがポイント
「スキャンしたから紙を捨てた」は、スキャナ保存の要件を満たしていないと否認リスクになります。最低限ラインでは、紙廃棄を急がず、運用が固まってから段階的に移行するのが安全です。

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最低限運用のチェックリスト(クリニック向け・月次で回す)

ここからは、実務が回るように「やること」を手順に落とします。スタッフに引き継げる形にするのが目的です。

Step 1: 電子取引の棚卸(何が電子で来るか)

  • 主要取引先(医薬品卸、検査外注、リース、家賃、通販)ごとに「受領形態」を確認
  • 受領がメール・Web・クラウドなら「電子取引」扱いでデータ保存対象に設定
  • ダウンロード期限があるサービスは、保存担当者と保存期限を明確化

Step 2: 保存場所と命名ルールを1枚にまとめる

  • 保存先(フォルダパス or サービス名)を固定
  • 命名ルールを固定(YYYYMMDD_取引先_金額_内容)
  • 保存担当者と代替担当を決める(不在時でも止まらないように)

Step 3: 月次締めで「取りこぼし」を潰す

  • 会計の月次締め前に、当月分フォルダのファイル数・抜けを点検
  • 通帳明細・カード明細・請求書の未保存がないかを照合
  • 保存漏れが多い取引先は、受領方法を変更(紙請求への切替等も含め検討)

Step 4: 紙証憑は「月別ファイル」で保管(まず捨てない)

  • 2026-01、2026-02のように月別で箱・ファイルに保管
  • 電子取引に該当するものを紙で混ぜない(混ぜると後で誤判定が起きる)
  • 紙→スキャンは、必要性が高いものから限定して実施

Step 5: 年1回だけルールを見直す(制度・取引の変化に追随)

  • 新しい決済手段、クラウドサービス導入時に「電子取引」判定を更新
  • 保存ルールの変更履歴を残す(いつ、誰が、何を変更したか)

3区分の比較表(最低限ラインでの運用設計)

←横にスクロールできます→
区分対象の例(クリニック)最低限の方針つまずきやすい点
電子取引メール請求書、Web明細、カード明細、ネットバンク明細データのまま保存し、命名・フォルダで検索性確保印刷で済ませる、DL期限切れ、保存先が担当者PCだけ
スキャナ保存紙の領収書・請求書を捨てたい場合最初は紙保管、運用が固まったら段階的に導入要件未充足で紙廃棄、入力期限運用が破綻
電子帳簿等保存会計ソフトの帳簿、レセコン連携データまず会計処理の安定、余力が出たら高度化設定が先行し運用が追いつかない

よくある相談(匿名ケース)から学ぶ「失敗しない」勘所

  • ケース1:医薬品卸のWeb請求書を「印刷して紙ファイル」だけで運用
    月次点検で照合はできていたものの、電子取引のデータ保存がされておらず、後からまとめてDLしようとして期限切れが発覚。対策は、受領月ごとにDLして所定フォルダに格納し、月次締めのチェック項目に組み込むことでした。

  • ケース2:経理担当の個人メールで請求書を受領し、退職時に引継ぎ漏れ
    保存先が担当者のPCと個人メールに分散し、院内で閲覧できない状態に。対策は、共有メール(または共有ストレージ)を受領窓口にし、保存場所を院内共有へ統一することでした。

どちらも、難しい制度対応の前に「受領窓口」「保存先」「月次点検」の設計で防げます。ルールを少なく、例外を作らないことが現場では重要です。

よくある質問

Q: メール添付のPDF請求書は、印刷して紙で保管すれば足りますか? ▼
電子取引として受領した取引情報は、原則としてデータで保存する前提で運用を組むのが安全です。印刷保管に寄せると、データ保存・検索性の要件を満たさないリスクが残ります。国税庁の電子取引関係の整理・Q&Aを基準に、データ保存を優先してください。https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/01.htm
Q: 領収書をスマホで撮影して保存し、紙は捨ててもいいですか? ▼
紙を廃棄する場合はスキャナ保存の要件を満たす必要があります。最低限ラインでは、まず紙は紙で保管し、運用が固まってからスキャナ保存へ段階移行するのが安全です。要件の確認起点として国税庁のスキャナ保存関係ページをご参照ください。https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/03.htm
Q: クリニックで「最低限の運用」を一言で言うと何ですか? ▼
電子で受け取った証憑(電子取引)を、データのまま所定の保存場所に集約し、日付・取引先・金額で探せる状態にすることです。これを月次締めの点検に組み込めば、最小の工数で法令対応と内部統制の両方を押さえられます。

まとめ

  • 最低限ラインの最優先は電子取引データの保存(印刷運用に寄せない)
  • 保存場所を統一し、命名ルールで検索性を担保する(YYYYMMDD_取引先_金額_内容)
  • 紙証憑は当面「紙で保管」を基本にし、紙廃棄はスキャナ保存要件を確認してから
  • 月次締め前に「保存漏れ点検」を入れると運用が崩れにくい
  • ルールは少なく、例外を作らず、引継ぎ可能な形に固定化する

参照ソース

  • 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
  • 国税庁「電子取引関係」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/01.htm
  • 国税庁「スキャナ保存関係」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/03.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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