
執筆者:辻 勝
会長税理士
歯科CAD/CAM・3Dプリンター導入|2026加算と税務

歯科のCAD/CAM・3Dプリンター導入は「制度面」から追い風です
歯科のCAD/CAM・3Dプリンター導入は、2026年改定で「歯科医師と歯科技工士のデジタル連携」や「デジタル手法の活用」が評価され、投資回収の筋道を立てやすくなっています。
一方で、院長にとっての悩みは「機械は高額だが、保険点数でどこまで回収できるのか」「税務上の優遇(即時償却・税額控除)を取りこぼさないか」という点ではないでしょうか。
本稿では、点数改定の読み方と、設備投資の税務処理を実務で迷うところに絞って整理します(税理士法人 辻総合会計)。
2026年改定で何が変わる?デジタル技工・CAD/CAMの評価ポイント
歯科技工士連携加算の新設・運用の考え方
2026年改定の「総-1 個別改定項目について」では、歯科医師と歯科技工士の連携を評価する枠組みが示され、加算点数(例:60点・80点)や同時に複数装置でも1回算定等の運用も整理されています。
ここで重要なのは、単に機械を入れるだけではなく、連携プロセス(色調採得・口腔内確認・データ共有)を「算定要件に沿って再現できる体制」に落とし込むことです。
光学印象・CAD/CAM周辺の見直しで「工程の内製化」が進む
同資料では、光学印象の点数見直し(例:100点→150点)や、装着・内面処理等の周辺点数、さらに有床義歯の点数見直し(例:2,420点→2,500点)など、デジタル工程と親和性の高い領域がまとめて動いています。
結果として「スキャン→設計→製作→装着」までの工程管理を院内・連携先で標準化できる医院ほど、算定と品質が安定し、投資回収の見通しが立ちやすくなります。
CAD/CAM・3Dプリンター投資の回収はどう考える?「点数×件数×原価」
回収シミュレーションの最小モデル
投資回収は、まず次の式で荒く当たりをつけます。
- 年間増収(概算)=(対象点数の増分)×(月件数)×12×(1点10円換算)
- 年間粗利(概算)= 年間増収 -(材料費・技工外注費の増減)-(保守/サブスク)
ここで見落としがちなのが、3Dプリンター等は「材料費が増える」だけでなく、外注費の内製化で「外注費が下がる」ケースがある点です。
つまり、増収だけでなく原価構造の変化も一緒に見る必要があります。
外注から内製へ:得する医院・損する医院の分岐点
内製化が向くのは、以下の条件を満たす場合です。
- 症例数が一定以上で、機械稼働率が確保できる
- 技工士との連携が強く、データ往復の手戻りが少ない
- 再製作率(やり直し)が下がる運用設計ができる
逆に、症例が散発的で、オペレーターが固定されず、設計・出力・後処理が属人化すると、稼働率が上がらず回収が伸びません。
「導入=利益」ではなく、運用設計=利益です。
税務処理の基本:資産計上・減価償却・リースの整理
取得した機械は原則「固定資産」:費用化できる例外もある
CAD/CAM装置や3Dプリンターは、原則として固定資産(減価償却)です。
ただし中小企業等では、少額資産の例外があり、税務処理が変わります。
- 取得価額10万円未満:原則、消耗品費等で損金算入(社内基準で統一)
- 取得価額10万~20万円未満:一括償却資産(3年均等)という選択肢
- 取得価額30万円未満:少額減価償却資産の特例(一定要件・上限あり)
「30万円未満で費用化できるなら分割購入で…」と考えがちですが、実態として一体利用される場合はリスクが出ます。見積書・契約・機能の一体性まで含めて慎重に判断してください。
リースは税額控除/即時償却との相性に注意
所有権移転外リースの場合、制度によっては特別償却が使えず、税額控除のみ適用可など制約があります。
投資優遇を狙う場合は、「購入」「割賦」「リース」のどれが最適かを、設備・資金繰り・制度適用の3点で比較します。
| 比較項目 | 購入(現金/割賦) | リース(所有権移転外の例) |
|---|---|---|
| 会計処理 | 原則:資産計上→減価償却 | 原則:リース料で費用処理(会計基準等で取扱い注意) |
| 税制優遇 | 経営強化税制の対象になりやすい | 制度により特別償却不可、税額控除のみ等の制約あり |
| 資金繰り | 初期負担が大きいことがある | 平準化しやすいが総支払は増えやすい |
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即時償却・税額控除を狙う:中小企業経営強化税制の使い方
経営強化税制とは(即時償却 or 税額控除の選択)
一定要件を満たす中小企業者等が、認定を受けた経営力向上計画に基づき対象設備を取得し事業供用すると、即時償却または税額控除(原則10%、資本金規模により7%)を選択できる制度です。
ポイントは「設備を買ってからでは遅い」ことが多い点で、証明書・確認書、計画認定、取得・供用の順序管理が必要です。
実務での進め方(導入前にやることを固定化)
Step 1: 対象設備の当たりをつける
CAD/CAM装置、スキャナ、3Dプリンター、関連ソフト等を「どの枠で申請するか」を整理します(A類型/B類型等)。
Step 2: 証明書・確認書を取得し、経営力向上計画を申請
取得前に必要書類があるため、ベンダーと税理士側で役割分担を明確にします。
Step 3: 取得→事業供用→税務申告で適用
供用日(使い始めた日)を証憑で押さえ、申告書添付書類まで含めて完了させます。
Step 4: 税額控除を選ぶか、即時償却を選ぶか決める
- 利益が大きく、法人税が出る:税額控除が効きやすい
- 利益が読みにくい/利益を圧縮したい:即時償却が効きやすい
実務では「翌期以降の設備投資予定」まで見て選択します。
よくある質問
Q: 2026年改定で、3Dプリンター導入だけで加算が取れますか?
Q: 30万円未満に分けて買えば、全部を経費にできますか?
Q: 即時償却と税額控除はどちらが得ですか?
まとめ
- 2026年改定は、歯科技工士とのデジタル連携や光学印象など、デジタル工程と親和性の高い領域が動いている
- 投資回収は「点数×件数」だけでなく、外注費の内製化など原価構造の変化も含めて設計する
- 設備は原則固定資産だが、10万・20万・30万の閾値で税務処理が変わる(制度適用の要件確認が必須)
- 経営強化税制は導入前の手続き順序が肝。購入形態(リース等)で適用可否・効果が変わる
- 最終的には、算定フローと記録、税制適用の工程管理まで含めた運用設計が利益を決める
参照ソース
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 議事次第(資料:総-1個別改定項目について)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
- 厚生労働省「総-1 個別改定項目について(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
- 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
- 国税庁「No.5434 中小企業経営強化税制」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5434.htm
- 中小企業庁「中小企業経営強化税制」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/kyoka_zeisei.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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