
執筆者:辻 勝
会長税理士
歯科疾患管理料改定2026の減収試算|税理士が解説

歯科疾患管理料100点→90点で、年間減収はいくら?
結論から言うと、歯科疾患管理料が(仮に)100点→90点へ10点引下げになる場合、減収は「10点=100円」×算定回数で決まります。つまり、月の算定回数が多い医院ほど影響が直線的に大きくなります。
一方で、次期改定に向けては「歯科疾患・口腔機能の管理」の評価のあり方自体が議論されており、継続的・計画的な管理や、患者に分かりやすい管理内容の整理が論点に上がっています。減点を算定の作法で取り戻す発想が重要です。
減収シミュレーションの考え方(10点=100円×回数)
まず押さえる計算式
- 1回当たりの減収:10点 × 10円 = 100円
- 月間減収:100円 × 月の算定回数
- 年間減収:100円 × 年間算定回数(=月回数×12)
ここで重要なのは、減収は「患者数」ではなく「算定回数」に比例する点です。月1回の定期管理が多い医院は影響が出やすく、逆に管理の算定が少ない医院は影響が限定されます。
回数別・年間減収の早見表
| 月間の算定回数(目安) | 年間算定回数 | 1回減収(円) | 年間減収(円) |
|---|---|---|---|
| 200回/月 | 2,400回 | 100円 | 240,000円 |
| 400回/月 | 4,800回 | 100円 | 480,000円 |
| 600回/月 | 7,200回 | 100円 | 720,000円 |
| 800回/月 | 9,600回 | 100円 | 960,000円 |
| 1,000回/月 | 12,000回 | 100円 | 1,200,000円 |
月800回で約96万円/年が下げ幅10点のインパクトです。人件費高騰下では無視しづらい水準になります。
新設・見直し評価でカバーする「算定戦略」の型
「新加算でカバー」といっても、闇雲に加算を増やすのではなく、管理の質と記録の整備で取れるものを取り切るのが現実解です。ここでは、制度改定の方向性(歯科疾患・口腔機能の管理の整理、分かりやすい評価設計の必要性等)を踏まえ、医院が実装しやすい戦略を型として示します。
戦略A:管理の継続性を上げ、取りこぼしを減らす
歯科疾患管理は、初診だけでなく継続的・計画的な管理が本筋です。患者の来院間隔が空きやすい医院ほど、算定の連続性が崩れ、結果として「管理で稼げない構造」になりがちです。
- 定期管理(メンテ)患者の予約導線を固定(次回予約率のKPI化)
- 管理計画の見える化(患者説明の型を統一)
- 口腔機能・生活習慣の把握項目をテンプレ化(記録の標準化)
狙いは、算定回数を増やすのではなく、発生した算定機会を落とさないことです。
戦略B:口腔機能管理・重症化予防をメニュー化して同意・記録を強化
次期改定に向けた議論では、口腔機能管理(小児・高齢者を含む)や重症化予防の評価の整理が論点です。ここに対応するには、診療プロセスを「診断→説明→同意→実施→評価→記録」の順に整える必要があります。
- 対象患者の抽出ルール(年齢・病名・所見)を院内で統一
- 説明文書・同意の取得フローを整備
- 衛生士・管理栄養士等の多職種連携の記録(実施内容の可視化)
「やっているのに記録が弱く算定が伸びない」ケースが最も多いので、記録設計は投資対効果が高い領域です。
戦略C:医療DX・運用要件への対応を設備投資ではなく運用投資で回収
2026年度改定全体では、医療DXや生産性向上と絡む評価設計が強く意識されています。歯科でも、オンライン資格確認・情報活用・業務効率化の運用が点数設計に影響しやすくなります。
- 受付〜会計の業務フロー棚卸し(ムダ作業の削減)
- 診療録テンプレ・定型文で記載の再現性を上げる
- 算定チェックを「人→仕組み」に寄せる(チェックリスト化)
減点の穴埋めは、現場の運用の細部で決まることが多いです。
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実務で回る「算定・記録」再設計の手順
Step 1: 直近3か月の算定回数を把握する
レセコンから「歯科疾患管理料」の月次算定回数を抽出し、平均値を出します。ここが減収試算の母数になります。
Step 2: 取りこぼしパターンを分類する
- 予約が途切れて算定機会が消える
- 記録・説明が不足し算定要件を満たせない
- 対象患者の抽出が曖昧で運用がぶれる
パターン別に原因を特定します。
Step 3: テンプレとチェックリストで運用を固定する
- 初診時:説明テンプレ(管理目的・頻度・セルフケア)
- 再診・メンテ:評価項目テンプレ(所見・指導・次回計画)
- 算定:日次・週次のチェックリスト(誰が、いつ、何を見るか)
Step 4: 1〜2か月でKPIを確認し微調整する
- 次回予約率
- メンテ継続率
- 管理関連の算定回数(推移)
数値で回し、改善点だけを追加します。
よくある質問
Q: 年間減収の試算は、患者数から出せますか?
Q: 新設加算が出るまで、何を準備すべきですか?
Q: 取り戻すために算定回数を増やすのは問題ありませんか?
まとめ
- 10点引下げは、1回あたり100円の減収で、年間減収は算定回数に比例する
- 月800回なら年間約96万円が目安となり、固定費上昇局面では影響が出やすい
- カバー策の本丸は、新設加算待ちよりも「取りこぼし削減」と「記録の標準化」
- 管理・口腔機能・重症化予防の流れをメニュー化し、同意と記録を強化する
- 告示・通知・正式資料の公開後に、要件を必ず突合して運用を確定させる
参照ソース
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
- 厚生労働省「診療報酬改定について(令和8年度・予算大臣折衝を踏まえた資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001623410.pdf
- 厚生労働省「歯科医療その2(次期改定に向けた論点)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598463.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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