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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

歯科開業の事業計画書|診療報酬改定2026対応を税理士が解説

11分で読めます
歯科開業の事業計画書|診療報酬改定2026対応を税理士が解説

結論:改定2026の「初再診+管理料」を計画の前提に置く

歯科の新規開業で融資用事業計画書を作る際は、2026年改定後の点数を前提に「売上=患者数×算定点数×算定率(自費比率)」を再設計することが重要です。特に、初診・再診の底上げと、歯科疾患管理料の評価見直し、そして新設の歯科外来物価対応料は、日次売上の土台に効きます。
一方で、金融機関が見ているのは「点数の増減」そのものではなく、改定を織り込んだうえで資金繰りが回るか(返済原資が安定しているか)です。税理士法人 辻総合会計では、医療系の顧問実務で「数字の作り方より、前提の置き方で落ちる」ケースを数多く見てきました。そこで本記事では、改定2026を織り込んだ通る事業計画書の組み立てを、収益シミュレーション中心に解説します。

診療報酬改定2026:歯科の初再診料・管理料の要点

初診料・再診料(歯科)の改定点数

改定2026では、歯科初診料・歯科再診料が引き上げられています(地域歯科診療支援病院歯科初・再診料も同様に整理されています)。

歯科疾患管理料(管理料)の見直し

「管理料改定」で実務上インパクトが出やすいのが歯科疾患管理料です。改定案では点数が見直され、さらに「初診日の属する月に算定する場合は所定点数の100分の80」など、初月算定の取り扱いが明示されています。ここは開業初年度の月次売上のブレに直結するため、計画前提に落とし込みが必要です。

新設:歯科外来物価対応料(初診3点/再診1点、2027年6月から2倍)

改定2026では「歯科外来物価対応料」が新設され、初診時3点、再診時1点が算定できる整理になっています。また、令和9年6月以降は所定点数の200%(2倍)とする扱いが示されています。これは「改定直後の売上」だけでなく、翌年度以降の段階的な売上増を計画に入れる余地がある、という意味でも重要です。

ここがポイント
注意:ここでいう「点数」は診療報酬点数(原則1点=10円換算)で、実際の入金は支払基金・国保連の審査、返戻、入金サイト(タイムラグ)を受けます。事業計画書では「売上」と「入金」を分けて資金繰り表を作るのが安全です。

改定2026を反映した収益シミュレーションの作り方

まずは「1日あたり売上」の式を固定する

融資向けに最も説明しやすいのは、以下の分解です。

  • 保険売上(概算)=(初診人数×初診平均点数+再診人数×再診平均点数)×10円×(1 − 返戻・査定率)
  • 自費売上=自費患者数×自費単価×成約率(治療計画同意率)

ここでの平均点数は、初再診料だけでなく、管理料(歯科疾患管理料等)や、口腔衛生指導、検査、処置などの構成で変わります。改定2026の初再診と管理料の変化は、平均点数の底上げ要因として計画に入れます。

事業計画書に入れやすい「点数の置き方」3パターン

  • パターンA:初診・再診の基本点数だけ上げ、その他は現行水準で置く(保守的)
  • パターンB:初再診+歯科外来物価対応料(初3点/再1点)まで反映(標準)
  • パターンC:パターンBに加えて、歯科疾患管理料の見直しや算定率改善まで反映(攻め)

金融機関は「根拠の薄い楽観」を嫌います。開業初年度はパターンA〜Bで作り、2年目以降に改善余地(C)を別シナリオとして添えると説得力が出ます。

比較表:初再診料・管理料・物価対応料(計画に入れる最低限)

以下は、事業計画書の前提条件にそのまま貼れる最小セットの比較表です。

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区分改定後(令和8年度)現行(改定前)計画への反映ポイント
歯科初診料272点267点初診単価の底上げ。初診比率が高い開業初期ほど効く
歯科再診料59点58点単体影響は小さいが、延べ患者数が多いほど効く
歯科疾患管理料100点90点管理計画・説明の運用ができる体制を前提にする
歯科疾患管理料(初診月)80点(100点×80%)取扱い整理あり初診月算定の扱いは月次売上の波に注意
歯科外来物価対応料(新設)初診3点―初診日に上乗せ。算定設定と算定漏れ防止が重要
歯科外来物価対応料(新設)再診1点―再診日に上乗せ。算定漏れ防止が重要
歯科外来物価対応料(令和9年6月以降)200%(2倍)―2年目以降のシナリオに段階増として入れる
ここがポイント
補足:事業計画書では、患者の窓口負担(1〜3割等)よりも「保険請求ベースの売上」と「入金タイミング(資金繰り)」の説明が重視されます。窓口負担は患者数の感応度(離脱率)を語るときに使うと整理しやすいです。

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融資に通る事業計画書:書き方の手順(テンプレ思考)

Step 1: 前提条件を1枚に集約する(改定2026を明記)

  • 施行時期(改定の施行月)と、使用する点数のバージョン
  • 営業日数、診療時間、ユニット数、スタッフ人数
  • 患者数計画(初診・再診・自費の内訳)
  • 返戻・査定率の置き方(保守的に0.5〜2%など仮置きし、根拠をコメント)

ポイントは「改定2026を踏まえた点数で作っています」と冒頭で宣言することです。

Step 2: 売上計画は日次→月次→年次で積み上げる

  • 日次:初診×初診平均点数+再診×再診平均点数+自費
  • 月次:日次×稼働日数(季節要因があるなら月ごとに係数)
  • 年次:月次の合計

ここで、初診比率が高い開業初期は初診料・初診時の物価対応料・初診月の管理料の影響が出やすいので、月次の立ち上がり曲線に整合させます。

Step 3: 原価・固定費・人件費の設計思想を書く

歯科は材料費(技工、消耗品)と人件費が利益構造を決めます。計画書では、単に金額を置くのではなく、

  • 材料費率(保険・自費で違う)
  • 技工外注の方針(外注比率)
  • スタッフの採用計画(いつ、何人、時給・月給)

を文章で補強します。ここが弱いと「売上は立つ前提なのに、現場が回らない」計画に見えてしまいます。

Step 4: 借入返済の安全性(DSCR)を示す

金融機関は「返済原資=営業キャッシュフロー」を見ます。

  • 営業利益+減価償却費=概算返済原資
  • 返済額(元金+利息)に対して、余裕があるか

売上がブレても返せるよう、保守シナリオ(患者数−10%等)も1枚添えると通りやすくなります。

Step 5: 添付資料(根拠)を揃える

  • 物件:賃貸契約書案、見積、図面
  • 設備:ユニット、レセコン、CT等の見積
  • 人件費:求人相場の根拠(募集要項案等)
  • 行政:保険医療機関の指定申請の段取り(提出時期・窓口)

保険医療機関の指定申請は地方厚生(支)局の案内に従い、提出・郵送等の運用を確認します。

税務・資金繰りで落ちやすいポイント(税理士の実務目線)

開業費・繰延資産の扱いで利益がブレる

開業時に支出した費用のうち、開業費として繰延資産に計上し、任意償却できるものがあります。利益調整だけが目的に見えると印象が悪いので、「資金繰り(返済)と納税見込み」をセットで説明するのがコツです。

設備投資は減価償却の年数を先に置く

医療機器・内装・什器は、計画上は減価償却費として費用化されます。耐用年数表(国税庁資料)を根拠に、減価償却費を織り込んで返済原資を説明すると、金融機関に伝わりやすくなります。

入金サイト(2か月遅れ)で運転資金が不足しやすい

開業直後は、患者は来ても入金は遅れます。事業計画書に「運転資金◯か月分」を積む理由はここです。改定2026で点数が上がっても、入金が遅い構造は変わりません。

よくある質問

Q: 2026改定の点数は、事業計画書にどこまで細かく書くべきですか? ▼
融資用では「初再診料・主要な管理料・新設の物価対応料」までを前提条件に明記し、その他は平均点数(初診平均、再診平均)にまとめるのが実務的です。レセプトの全項目を計画書に並べるより、前提の一貫性と資金繰りの説明が重視されます。
Q: 歯科外来物価対応料は、計画上どう扱えばよいですか? ▼
初年度は「算定設定が整っている」前提で、初診3点/再診1点を標準シナリオに入れ、算定漏れリスクを見込むなら保守シナリオでは一部未算定(例:50%)として二本立てにするのが安全です。令和9年6月以降の2倍は、2年目以降の参考シナリオとして記載すると説明しやすいです。
Q: 保険医療機関の指定申請は、いつ頃から逆算すべきですか? ▼
物件引渡し、内装工事、機器搬入、スタッフ採用、開設届(自治体)などと並行し、地方厚生(支)局の指定申請の案内に沿って準備します。計画書には「指定までの工程表」と「無保険期間(自費のみ期間)の有無」を明記すると、資金繰りの説明が通ります。

まとめ

  • 歯科の融資用事業計画書は、改定2026の初再診料・管理料・新設項目を前提条件に落とすのがコア
  • 初診比率が高い開業初期ほど、初診料・初診時の上乗せ評価の影響が出やすい
  • 歯科疾患管理料は点数だけでなく初診月の扱いが月次売上に効くため、運用前提を文章化する
  • 売上と入金を分け、入金サイトを踏まえた運転資金を計画に入れる
  • 税務(開業費・減価償却)と返済原資(DSCR)をセットで説明すると金融機関に伝わりやすい

参照ソース

  • 厚生労働省「個別改定項目について(令和8年度診療報酬改定)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
  • 厚生労働省「診療報酬改定について(令和8年度)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf
  • 地方厚生(支)局「保険医療機関・保険薬局の指定申請」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/ichiran_shitei_shinsei.html
  • 国税庁「償却期間経過後における開業費の任意償却」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/08.htm
  • 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表(PDF)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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