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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック開業事業計画書を診療報酬2026で修正|税理士が解説

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クリニック開業事業計画書を診療報酬2026で修正|税理士が解説

診療報酬改定2026を反映した修正の結論

診療報酬改定2026を事業計画書へ反映する核心は、「改定率を売上に一括上乗せ」ではなく、算定構造(初再診・在宅・加算)とコスト構造(人件費・物件費)を分解して、融資審査が求める再現性ある根拠に落とすことです。
改定では本体+3.09%(2年度平均)や物価対応分の措置に加え、物価対応料(1日につき)が新設され、外来・在宅・入院等で算定設計が変わります。施行時期も複数(診療報酬は令和8年6月施行等)で、月次の売上推移にも影響します。
開業前の医師にとっての問題は「改定の追い風」を過大評価しがちな一方で、金融機関は「増収より先に費用増(賃上げ・物価)を織り込めているか」を厳しく見ます。

診療報酬改定2026の要点整理

本体+3.09%は「どこが増えるか」を分けて理解する

改定率は全体の平均値であり、診療所の実入りは、初再診・医学管理・処置・検査・在宅・加算の構成で変動します。改定資料では、賃上げ分・物価対応分・食費光熱水費分等の内訳が示され、物価対応については「特別な項目を設定」する方針も明記されています。
したがって、事業計画書では「売上=患者数×単価」の単価を、さらに「基本料」「加算」「自費」「薬剤等(通過)」へ分解し、改定の影響が及ぶ範囲だけを更新します。

物価対応料新設は「算定できる前提条件」を計画に入れる

物価対応料は、基本診療料・調剤基本料等の算定に併せて算定可能な加算として新設され、外来・在宅・入院等に区分が置かれています。加えて、令和9年6月以降は所定点数の200%相当を算定する扱いが示されています。
ここが融資審査で重要で、単に「新設だから増収」と書くと突っ込まれます。計画上は次を必ず明示します。

  • どの区分(初診/再診時等/訪問診療時)を、月に何件想定するか
  • 初診比率・再診比率・在宅比率の根拠(診療圏、想定主訴、紹介元など)
  • 施行月からの反映(開業月と改定施行月のズレを月次で表現)
ここがポイント
物価対応料は「1日につき」等の設計で、算定タイミングが月次売上の山谷に直結します。融資用の損益計画は年次だけでなく、少なくとも開業〜12か月は月次で作り、施行月の段差を示すと説得力が上がります。

開業事業計画書の修正ポイント(融資審査で見られる順)

1) 売上は「改定率上乗せ」から「算定ロジック」へ修正

金融機関が嫌うのは、改定率を一律で売上に掛ける計画です。代わりに、次の形にします。

  • 外来:患者数(新患・再来)×単価(初再診+医学管理+検査処置+加算)
  • 在宅:訪問回数×単価(訪問診療+管理+加算)
  • 自費:メニュー別(単価×件数)で据え置き、または物価転嫁方針を記載
  • 薬剤・材料:収入と費用が相殺されやすいので、粗利率を分けて表示

物価対応料は「取れる想定」ではなく「取れる運用」が前提です。スタッフ配置、予約枠、算定漏れ防止(レセ前チェック)の体制まで文章で補強します。

2) 人件費は「賃上げ前提」で、採用難リスクも数値化する

改定資料では賃上げ分の措置も示されており、開業計画で人件費を低く置くと、むしろ否決要因になります。計画書には次を入れます。

  • 職種別の人数・単価・昇給率(開業初年度は年率でなく月額の立ち上がりも)
  • 採用が遅れた場合の代替(派遣・パート比率)とコスト差
  • 院長の稼働(診療枠)と事務の稼働(算定・返戻対応)の分業

3) 物件費は「固定費化」を前提に、損益分岐点を再計算する

物価高騰対応として初再診料等の見直しや、新たな評価(物価対応料)が示されている一方、現場の物件費(家賃、リース、委託費、光熱費)は固定費化しがちです。ここを甘く見ると、返済余力(CF)が崩れます。

  • 家賃・リース・保守:契約書ベースで固定費として計上
  • 光熱費:季節変動を月次に反映
  • 委託費(清掃・レセ代行等):患者数連動分と固定分を分離

4) 返済計画は「DSCR(債務返済余裕率)」を一段丁寧に

公庫・銀行は、利益よりもキャッシュフローで返済可能性を判断します。計画書上は、減価償却費を足し戻した返済原資を示し、最低でも「ベース/弱気/強気」の3シナリオで、元利返済が回ることを示します(弱気でも赤字回避、または資金繰りで耐える設計)。

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観点よくあるNG融資審査で通る書き方
改定反映売上に一律+3.09%初診・再診・在宅・加算ごとに件数×単価で更新
物価対応料取れる前提で増収算定区分別に件数根拠と運用体制(算定漏れ防止)を記載
人件費据え置き賃上げ・採用難を前提に、段階採用と代替案を数値化
返済利益だけで説明返済原資(税引後+償却)とシナリオ別の安全余裕を提示

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公庫・銀行融資審査に通す「修正の手順」

Step 1: 月次の患者数計画を作り直す
開業〜12か月は月次で、新患・再来・在宅を分けます。紹介元・広告・内覧会の時期など、集患施策と連動させます。

Step 2: 単価を「算定ブロック」に分解する
初再診、医学管理、検査処置、加算、在宅を分け、改定影響があるブロックだけ更新します。物価対応料は区分別に「算定できる件数」を置きます。

Step 3: コストを賃上げ・物価前提で更新する
人件費は職種別に、物件費は固定費中心に。リース・保守は契約ベース、光熱費は季節要因も織り込みます。

Step 4: 返済計画をシナリオで作る
ベース/弱気(患者数▲10〜15%等)/強気で、資金繰り表も添付します。弱気で詰むなら、自己資金上積み・借入額調整・投資後ろ倒しを検討します。

Step 5: 申込書類の整合性を取る
公庫は所定の申込書式・創業関連書式があるため、事業計画書の数値と提出書類(借入申込書、設備資金の内訳等)の整合を最終確認します。

ここがポイント
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、医療の開業融資で「売上の根拠が算定に落ちているか」「人件費が現実的か」「返済が弱気でも回るか」の3点を最優先で点検します。改定がある年ほど、楽観よりも整合性が評価されます。

よくある質問

Q: 本体+3.09%なら、売上も3.09%増で見てよいですか? ▼
一律上乗せは避けるべきです。改定は賃上げ・物価対応などの目的別配分があり、診療所の収入は初再診・加算・在宅の構成で変わります。算定ブロック別に更新してください。
Q: 物価対応料は開業直後でも算定できますか? ▼
原則として、基本診療料等の算定に併せて算定する設計です。開業直後でも「初診・再診・訪問診療」の実績が立てば算定機会はありますが、件数想定と運用(算定漏れ防止)をセットで計画書に書くことが重要です。
Q: 銀行に提出する事業計画書は、公庫用と同じでよいですか? ▼
骨格は同じで構いませんが、銀行はキャッシュフローと担保・保証、運転資金の厚みをより重視する傾向があります。月次の資金繰りと返済余力のシナリオ(弱気を含む)を厚くするのが実務的です。

まとめ

  • 診療報酬改定2026は「一律上乗せ」ではなく、初再診・在宅・加算の算定ロジックで事業計画書を作り直す
  • 物価対応料は区分別件数と運用体制を示し、施行月の段差を月次計画に反映する
  • 人件費・物件費は賃上げ・物価を前提に保守的に置き、損益分岐点を再計算する
  • 融資審査は利益より返済原資とシナリオ耐性(弱気でも回るか)で決まる
  • 公庫・銀行の提出書類は数値の整合性が最重要。計画書と申込書式を突合する

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の改定率等について(中医協 総-1)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001623410.pdf
  • 厚生労働省「個別改定項目について(物価対応料の新設等を含む)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
  • 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」: https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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