
執筆者:辻 勝
会長税理士
義歯管理料改定2026の損益影響|税理士が解説

義歯管理料の算定単位変更とは(口腔単位→装置単位)
結論から言うと、2026改定案では新製有床義歯管理料が「1口腔単位」から「1装置単位」に変わり、局部義歯・総義歯ともに140点/装置へ一本化されます。これにより、義歯の「両顎装置が多い医院」は増収寄り、「片顎装置が多い医院」は減収寄りに動きやすくなります。
中医協資料では、従来の新製有床義歯管理料(1口腔につき190点/困難230点)を、改定案として新製有床義歯管理料(1装置につき140点、局部・総義歯いずれも140点)に見直すとされています。あわせて義歯の指導・調整の要件や、歯科口腔リハビリテーション料1との運用の整理も示されています。
口腔単位と装置単位の違い(なぜ損益が動くのか)
ポイントは「1回の新製義歯製作」が、これまで口腔(口全体)で1回評価だったものが、装置(上顎義歯・下顎義歯など)ごとに評価される点です。
- 口腔単位(従来):上顎+下顎を同時に新製しても、原則「1口腔」で1回(190点/困難230点)
- 装置単位(改定案):上顎・下顎それぞれが「1装置」となり、2装置なら140点×2=280点
つまり、同じ患者でも「両顎新製」の比率が高いほどプラスに振れやすく、「片顎新製」の比率が高いほどマイナスに振れやすい構造です。
まず押さえる数字(試算の基礎)
経営試算では、保険点数を円に直すために「1点=10円」を使うのが一般的です(あくまで概算)。
- 従来:190点(1,900円)/困難230点(2,300円)
- 改定案:140点/装置(1,400円/装置)
部分義歯・総義歯が多い医院の増減収シミュレーション
ここでは「困難加算(230点)該当は一旦置く」前提で、190点→140点×装置数の差額を見ます(最終的な運用は通知で必ず確認してください)。
装置数別の差額(1件あたり)
- 片顎(1装置):改定案 140点 − 従来 190点 = −50点(−500円)
- 両顎(2装置):改定案 280点 − 従来 190点 = +90点(+900円)
- 3装置(例:特殊なケースの想定):改定案 420点 − 従来 190点 = +230点(+2,300円)
ケース別の「損益が動く医院」早見表
| ケース(新製有床義歯管理料の算定想定) | 従来(口腔単位) | 改定案(装置単位) | 差額(点) | 差額(円の目安) |
|---|---|---|---|---|
| 片顎のみ新製(上or下) | 190点 | 140点 | -50点 | -500円 |
| 両顎同時に新製(上+下) | 190点 | 280点 | +90点 | +900円 |
| 両顎だが月を跨いで新製(片顎×2回のイメージ) | 190点×2回 | 140点×2回 | -100点 | -1,000円 |
「両顎同時新製が多い医院」はプラス、「片顎の置換が多い医院」はマイナス、さらに「両顎でも時期をずらす運用が多い医院」はマイナスになりやすい、という見立てが立ちます。
自院の義歯患者構成で増減収を出す方法(3ステップ)
税理士法人 辻総合会計では、改定の影響は「件数」よりも「構成比(片顎/両顎)」でほぼ決まるケースが多いと整理しています。院内で短時間に概算するなら、次の手順が現実的です。
Step 1: 直近3か月の「新製有床義歯管理料」算定件数を抽出する
患者数ではなく、算定行為の件数で抽出します(B013相当の管理料)。
Step 2: 片顎(1装置)・両顎(2装置)に分類する
- 上顎のみ/下顎のみ:1装置
- 上顎+下顎同時:2装置
この分類ができれば、局部義歯・総義歯の別は「経営試算」上は二次的になります(改定案では点数が同じため)。
Step 3: 差額式で月次の増減収を計算する
- 片顎件数をA、両顎件数をBとすると
- 増減点数(合計)=(-50点×A)+(+90点×B)
- 増減円の目安=増減点数×10円
例:義歯が多い医院の月次インパクト(概算)
- 片顎:40件(A=40)
- 両顎:25件(B=25)
増減点数=(-50×40)+(90×25)=(-2000)+(2250)=+250点
増減円=250×10円=+2,500円/月
この例では「義歯が多い」わりに増減が小さく見えますが、要はAとBのバランス次第です。両顎比率が少し下がるだけでマイナスに転じます。
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併算定・運用面で注意したい論点(現場の落とし穴)
今回の資料では、新製有床義歯管理料における説明(文書提供)と、歯科口腔リハビリテーション料1の「義歯の調整・指導」の違いを明確化し、併算定も可能とする運用見直しが示されています。ここは算定漏れ・二重算定リスクが出やすいので、次を先に整備してください。
- 説明(文書提供)と調整・指導の「記録要件」を分けてテンプレ化する
- 上顎/下顎の装置識別(技工指示書、カルテ記載、画像管理)を統一する
- 月跨ぎ製作が多い医院は「片顎運用の理由」を説明できるようにする(監査対応)
よくある質問
Q: 部分義歯(局部)と総義歯で損益は変わりますか?
Q: 両顎同時の新製が多い医院は、概ね増収と考えてよいですか?
Q: 「困難な場合(230点)」が多い医院はどう見ればいいですか?
まとめ
- 義歯管理料は口腔単位→装置単位へ変更され、改定案は140点/装置
- 片顎(1装置)は-50点、両顎(2装置)は+90点になりやすく、構成比で損益が決まる
- 試算は「片顎件数A」「両顎件数B」に分け、(-50×A)+(+90×B)で概算できる
- 併算定や記録要件の整理は、算定漏れ・監査対応の観点で早めにテンプレ化が有効
- 最終点数・要件は告示・通知で確定するため、運用変更は最終版確認後に実施する
参照ソース
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
- 厚生労働省「総-1 個別改定項目について(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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