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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.13
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

在宅医療改定2026要件厳格化と損益分岐点|税理士が解説

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在宅医療改定2026要件厳格化と損益分岐点|税理士が解説

要点:軽症中心モデルは「要件次第」で採算が崩れます

在宅医療の2026改定(議論資料ベース)では、在宅時医学総合管理料等の算定に「重症等(別表8の2・8の3)患者割合が一定程度以上」等の要件が追加され、さらに在宅療養支援診療所等の24時間連絡・往診体制について第三者(株式会社等)利用時の要件明確化が示されています。結果として、軽症患者を多数抱えて回転させるモデルは、加算・上位区分の算定可否次第で収益構造が変わり、損益分岐点(必要患者数・必要訪問数)が上振れしやすくなります。まずは「要件を満たせる患者構成か」「24時間体制を実装できるか」を前提に、損益分岐点を再計算しましょう。

在宅医療の要件厳格化とは:論点を2つに分ける

1) 重症患者割合要件:在宅時医学総合管理料等の入口が変わる

資料では、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の一部区分(「月2回以上訪問診療を行っている場合(難病等を除く。)」等)について、月2回以上訪問診療を行う患者のうち「別表第8の2」「別表第8の3」に該当する患者割合が一定程度以上であることを要件とする、という方向性が示されています。つまり、軽症患者が増えるほど要件未達リスクが上がる設計です(最終的な割合・人数基準は告示・通知で確定)。

2) 24時間対応の明確化:体制の実装コストが顕在化する

在宅療養支援診療所等の施設基準では、24時間連絡体制・24時間往診体制の確保に加え、往診担当医の氏名・担当日等を文書で患家へ提供する等の対応が規定され、第三者(株式会社等)を利用して24時間連絡体制・往診体制を確保する場合の要件を明確化する、という整理が示されています。
ここは「形式要件」ではなく、人員配置・オンコール設計・連携先との契約に直結するため、固定費の上昇要因になります。

ここがポイント
本稿は、中央社会保険医療協議会資料(「個別改定項目について」)に基づく論点整理です。最終的な算定要件・経過措置・点数は、告示・通知で確定します。院内の意思決定は、必ず確定版(告示・通知)で再確認してください。

「軽症中心モデル」が通用しにくくなる理由

軽症中心モデルの強みは、(1) 訪問の標準化、(2) オンコール頻度の低さ、(3) スタッフ少人数での回転、にあります。
一方で要件厳格化が進むと、次の3点で構造が逆風になります。

  • 患者構成:重症等患者割合要件により、軽症比率が高いほど上位区分や加算の算定が難しくなる(=単価が下がりやすい)
  • 体制:24時間対応の実装がコストとして見える化され、外部委託・連携でも要件適合の設計が必要になる
  • リスク:要件未達で区分が下がると、売上は逓減するのにオンコールや採用は止められず、利益が急減しやすい

損益分岐点の再計算:税理士が使う実務フレーム

ここでは、点数の細目に依存しない形で、損益分岐点を「患者数」と「訪問数」で再計算する枠組みを提示します。

まず押さえるべき収益ドライバー

在宅の収益は大きく以下の掛け算で整理できます(概念式)。

  • 月次売上 =(医学管理の月額報酬)+(訪問診療の出来高)+(加算・看取り等)-(算定不可・区分ダウン影響)

要件厳格化の影響は、主に「医学管理の月額報酬(区分)」「加算」に出ます。ここが崩れると、軽症多数でも売上が伸びません。

再計算の手順(院内で回せる形)

Step 1: 患者を3区分で棚卸しする

  • A:別表8の2・8の3に該当(重症等)
  • B:難病等(除外対象になり得る群)
  • C:上記以外(軽症中心になりやすい群)

Step 2: 要件判定の母数を作る

  • 「月2回以上訪問診療を行う患者数」を抽出
  • そのうちA(重症等)の割合を算出
  • 要件未達の場合に起きる区分ダウン・算定変更をシナリオ化する(確定通知で数値を当てはめる)

Step 3: 24時間対応のコストを固定費として見積もる

  • オンコール手当、夜間往診の稼働見込み、連携先への支払い
  • 第三者利用(会社等)を使うなら、要件適合の運用(連絡先提示、担当医・担当日文書化等)の事務コストも含める

Step 4: 損益分岐点を2つ出す

  • (a) 要件達成シナリオ(上位区分・加算が維持できる前提)
  • (b) 要件未達シナリオ(区分ダウン・加算減の前提)

Step 5: 患者構成を逆算して必要な重症等患者数を決める

  • 目標利益から逆算して、A(重症等)の最低人数・比率を定める
  • 不足する場合は、紹介元設計・病院連携・看取り体制の強化で埋める

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論点何が変わる(方向性)軽症中心モデルへの影響対応の打ち手
重症患者割合要件医学管理料等の一部区分で、重症等患者割合が一定以上を要件化軽症比率が高いほど区分ダウン・算定変更のリスク重症等の獲得導線(病院・訪看・ケアマネ)を設計
24時間対応の明確化24時間連絡・往診体制と文書提供等、第三者利用時の要件明確化固定費(オンコール・連携費)が増えやすい当番設計、連携契約、ICT活用、手当体系の整備
BCP要件等の追加在支診・在支病の要件に業務継続計画の策定・見直し追加事務負荷増(ただし直接売上は増えない)ひな形整備、年次点検の定型化、監査対応

実務の落とし穴:よくある失敗パターン

  • 患者数だけ増やしてしまい、重症等患者割合が下がって要件未達になる(売上が増えない/下がるのに現場負荷だけ増える)
  • 24時間体制を外注で見た目だけ整え、要件適合の運用(文書提供、担当日管理等)が追いつかない
  • 収益シミュレーションが「要件達成前提」しかなく、未達時の損益分岐点を把握していない

ここは税務というより管理会計の論点ですが、税理士としては「未達時でも資金繰りが回る設計」まで含めて助言することが多い領域です。

よくある質問

Q: 重症患者割合要件は、具体的に何%ですか? ▼
資料では「一定程度以上」と整理されており、最終的な割合・人数基準は告示・通知で確定します。確定版が出たら、貴院の「月2回以上訪問診療を行う患者」を母数にして、別表8の2・8の3該当患者の比率を当てはめて判定してください。
Q: 24時間対応を第三者(会社等)に委託すれば要件は満たせますか? ▼
方向性として「第三者利用による24時間連絡体制・往診体制を確保する場合の要件を明確化」とされており、委託すれば自動的に満たす、という整理ではありません。運用(連絡先の文書提供、往診担当医の氏名・担当日等の文書提供等)まで含めた要件適合が必要です。
Q: 軽症中心から重症中心に寄せると、現場が回りません。どう設計しますか? ▼
「全患者を重症化させる」のではなく、損益分岐点を満たす最低限の重症等患者枠(A群)を定義し、病院連携・訪看連携・看取り導線で安定的に確保するのが現実的です。A群の当直・往診負荷はオンコール当番とバックアップ体制で吸収し、C群(軽症)には計画訪問の標準化で生産性を確保します。

まとめ

  • 2026改定の方向性では、在宅時医学総合管理料等に重症等患者割合要件が入り、軽症中心モデルは区分ダウンリスクが上がる
  • 在支診等の24時間体制は、第三者利用時の要件明確化も含め、固定費上昇として損益分岐点を押し上げやすい
  • 損益分岐点は「要件達成」と「要件未達」の2シナリオで出し、必要な重症等患者数を逆算する
  • 経営判断は、確定版(告示・通知)に点数・経過措置を当てて最終化する

参照ソース

  • 別紙1-1 医科診療報酬点数表(傍線部分は改正部分): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655178.pdf
  • 総-1 個別改定項目について(改定案の考え方・要件等): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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