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クリニック向けコラム
作成日:2025.03.08
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

iDeCoは医師に有効?メリット・デメリット|税理士が解説

8分で読めます
iDeCoは医師に有効?メリット・デメリット|税理士が解説

医師がiDeCoを使う最大の狙いは、老後資金の準備と同時に、毎年の税負担を平準化することです。特に所得が高くなりやすい医師にとって、iDeCo掛金は全額所得控除となる点はインパクトがあります。一方で、原則60歳まで引き出せないという制約や、手数料・受取時課税など「使い方を誤ると不便」な側面もあります。本記事では、医師の立場別に向き不向きを整理し、実務で迷いやすいポイントを解説します。

iDeCoとは何か(医師が押さえるべき基本)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、任意で掛金を拠出し、金融商品で運用して老後に給付を受ける私的年金制度です。掛金額・運用商品・配分の全てを加入者が決めます。

医師の場合、働き方によって「国民年金第1号(開業医など)」か「厚生年金の第2号(勤務医など)」に分かれ、拠出限度額が変わります。まずはここが出発点です。

ここがポイント
拠出限度額や加入要件は制度改正で見直されることがあります。手続き前に、ご自身の被保険者区分(第1号/第2号/第3号)と企業年金の有無を必ず確認してください。

医師がiDeCoを使うメリット

掛金が所得控除になり、税負担を圧縮できる

iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として、支払った全額が所得控除の対象です。所得税・住民税の課税所得が下がるため、所得水準が高い医師ほどメリットが出やすい設計です。

運用益が非課税で積み上がる

通常、投資信託の分配金や売却益には課税がありますが、iDeCo口座内の運用益は非課税で再投資されます。長期運用ほど複利効果が効きやすい点は、老後資金づくりと相性が良いです。

受取方法を「年金」「一時金」「併用」から選べる

iDeCoの受取は、年金形式・一時金形式・併用が選択できます。家計のキャッシュフローや退職金の有無に合わせて設計できるのは実務上の利点です。

医師が注意すべきデメリット・リスク

原則60歳まで引き出せない(流動性リスク)

iDeCoは原則として途中解約ができず、60歳まで資金拘束がかかります。開業初期の設備投資、法人化前後の資金需要、住宅ローンの頭金など「近い将来の大型支出」がある場合は、拠出額を抑える判断が合理的です。

手数料がかかり、商品選定で差が出る

iDeCoは口座管理等の手数料が発生し、運営管理機関(金融機関等)によって商品ラインナップや手数料体系が異なります。運営管理手数料が高いと、低リスク運用でも相対的に成果が目減りしやすい点に注意が必要です。

受取時の課税(退職所得・公的年金等の雑所得)

iDeCoの給付は、受取形態に応じて課税関係が変わります。大枠として、

  • 一時金:退職所得(退職所得控除の枠が影響)
  • 年金:公的年金等に係る雑所得(年金の収入・他の所得状況が影響) となり得ます。
ここがポイント
受取時の税負担は「退職金の有無」「退職所得控除の使い方」「年金収入の見込み」で大きく変わります。特に医療法人役員で退職金設計がある場合、iDeCoの一時金受取とタイミングがぶつからないように事前設計が重要です。

医師の立場別:拠出限度額と向き不向き

拠出限度額の目安(2025年時点の整理)

医師が実務で迷いやすいのは「自分はいくらまで拠出できるのか」です。概要は次のとおりです(詳細要件は個別確認)。

←横にスクロールできます→
区分代表例(医師)iDeCo拠出限度額(月額)実務ポイント
第1号被保険者開業医(個人事業主)68,000円国民年金基金や付加保険料がある場合は差し引きで枠が減るため注意
第2号(企業年金なし)勤務医(企業年金なし)23,000円税メリットはあるが枠が小さめ。NISAとの併用が現実的
第2号(企業年金あり)勤務医(DB/企業型DCあり、公務員等含む)20,000円他制度掛金との合算要件が絡むケースがある
第3号被保険者配偶者が扶養の専業等23,000円世帯での最適化(夫婦でNISA+iDeCoなど)を検討

よくあるケーススタディ(匿名化)

  • 開業医(第1号):所得が安定し、手元資金も一定確保できている場合、iDeCoを「税負担の平準化」として使い、余剰資金はNISAで流動性を確保する設計が多いです。
  • 勤務医(第2号):病院の制度(企業年金の有無)で上限が変わるため、iDeCoの枠は埋めるが、資産形成の主戦場はNISA・特定口座になりやすい傾向があります。
  • 医療法人役員:役員退職金・役員報酬・配当等の全体設計の中で、iDeCoは「控除の積み上げ」と「受取タイミング調整」が焦点になります。

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iDeCoの始め方と控除の手続き(年末調整・確定申告)

Step 1: 自分の区分と拠出上限を確定する
第1号/第2号、企業年金の有無、国民年金基金加入状況などを整理し、上限(月額)を確定します。

Step 2: 運営管理機関(金融機関)を選ぶ
商品ラインナップ、信託報酬、口座管理手数料、サポート体制を比較します。長期運用が前提のため、低コスト商品が充実しているかは重要です。

Step 3: 掛金額・配分(資産配分)を決める
生活防衛資金(当面の生活費)と、近い将来の支出(開業資金・設備投資等)を優先して確保したうえで、無理のない掛金に設定します。

Step 4: 控除手続き(証明書の提出)を行う
会社員・役員で年末調整を受ける場合は、掛金の証明書を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して提出するのが基本です。確定申告の場合も同様に、証明書を添付または提示します。

iDeCoとNISAの違い(医師はどう使い分けるか)

←横にスクロールできます→
比較項目iDeCoNISA
目的老後資金の年金制度(資金拘束あり)資産形成の投資枠(流動性が高い)
税制メリット掛金が所得控除、運用益非課税、受取は課税関係あり運用益非課税(所得控除はなし)
引き出し原則60歳まで不可原則いつでも可能
向く資金使途を老後に固定できる資金教育・住宅・開業資金など将来の支出にも対応

医師の実務では、「iDeCoは税メリットと老後固定」「NISAは流動性と中長期運用」を分け、家計の目的別に併用する発想が取り回しやすいでしょう。

よくある質問

Q: 開業医(第1号)なら、iDeCoは満額の月6.8万円が鉄板ですか? ▼

A:

必ずしも鉄板ではありません。国民年金基金や付加保険料の有無で枠が変動します。また、開業初期は設備投資・運転資金が優先されるため、資金拘束が重いと感じる場合は段階的な増額が現実的です。
Q: 勤務医で企業年金があるか分かりません。どう確認しますか? ▼

A:

勤務先の人事・総務(または企業型DCの案内資料)で、DB(確定給付)や企業型DCの有無を確認します。企業年金の有無で拠出限度額が変わるため、最初に確認することが重要です。
Q: iDeCoの受取時に税金はどのくらいかかりますか? ▼

A:

受取方法(一時金/年金)と、退職金・公的年金など他の収入状況により変わります。一時金は退職所得控除の枠、年金は公的年金等の雑所得の計算が主に影響します。具体額はシミュレーションが必要です。
Q: 医師国保に加入していてもiDeCoの節税効果はありますか? ▼

A:

所得税・住民税の課税所得を下げる効果は期待できます。ただし、保険料(医師国保)の算定ルールは制度・組合により異なるため、節税効果を「社会保険料まで含めて」見込む場合は個別確認が必要です。

まとめ

  • iDeCoは、医師にとって「老後資金づくり」と「掛金全額の所得控除」を同時に狙える制度
  • 最大の注意点は、原則60歳まで引き出せない資金拘束と、手数料・運用リスク
  • 拠出上限は被保険者区分と企業年金の有無で変わるため、まず上限確認が必須
  • 受取時は一時金(退職所得)・年金(公的年金等の雑所得)など課税関係が変わる
  • 目的別に、iDeCo(老後固定)とNISA(流動性)を併用する設計が実務で扱いやすい

参照ソース

  • 厚生労働省「iDeCoの概要」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html
  • 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
  • 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
  • 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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