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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

リハビリクリニック開業2026|疾患別点数と施設基準を税理士が解説

9分で読めます
リハビリクリニック開業2026|疾患別点数と施設基準を税理士が解説

2026年のリハビリ開業は「疾患別×施設基準×稼働設計」が勝負

リハビリ専門クリニックの収益は、疾患別リハ(運動器・脳血管等)の算定区分と、施設基準(人員・訓練室・記録体制)を満たした上で、1日あたりの単位数(20分単位等)をどれだけ安定的に積み上げられるかで決まります。
一方で2026年(令和8年度)の診療報酬改定は、中央社会保険医療協議会での議論・資料公表の途上にあり、確定値は段階的に示されます。したがって開業準備では「確定している施設基準」と「改定で動きやすい論点」を切り分け、複数シナリオで収益設計しておくのが実務的です。

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、クリニックの記帳・資金繰り支援を中心に長年携わり、開業時の「人員計画→届出→収益化」まで一気通貫で相談されることが多い領域です。本記事では、整形外科・脳神経系のリハ専門開業で押さえるべきポイントを、制度と数字の両面から整理します。

疾患別リハビリテーションとは:点数体系の読み方を整理

疾患別リハは、代表的に「運動器」「脳血管疾患等」などの区分で評価され、区分ごとに(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)といった段階(難易度・体制)が設定されます。開業医の視点では、次の2点が重要です。

  • どの疾患別リハを主軸にするか(患者導線・紹介元・地域需要)
  • どの段階(Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ)を狙うか(人件費と算定単価のバランス)
ここがポイント
2026年改定の「点数そのもの」は確定前でも、開業準備は止められません。そこで、点数は(A案:現行近似/B案:単位評価がやや圧縮/C案:加算要件強化)など複数シナリオで置き、固定費(人件費・家賃・減価償却)を先に固めるのが安全です。

また、近年の改定資料では医療保険リハと障害福祉サービス等との移行・連携も論点化しています。制度の境界が動く局面では、算定の取りこぼしよりも「要件を満たせず算定できない」ことが最大の損失になります。

開業で必ず確認:疾患別リハの施設基準(人員・訓練室・記録)

疾患別リハは、算定以前に施設基準の届出が必要です。施設基準は「人」「場所」「運用(記録・カンファ)」がセットで見られます。

人員要件の要点(例:脳血管・運動器)

たとえば脳血管疾患等リハ(Ⅲ)では、専任の常勤医師1名以上、専従の常勤PT/OT/STのいずれか1名以上等が示されています。
運動器リハ(Ⅱ)では、運動器リハ経験を有する専任の常勤医師1名以上(望ましい要件として経験年数・研修修了の考え方)など、医師要件の質が論点になります。

訓練室(面積)要件は「設計変更が効かない」ので先に固める

開業で後戻りしにくいのが訓練室面積です。脳血管疾患等リハ(Ⅲ)の例では、専用の機能訓練室として「診療所45㎡以上」等が明示されています。
この面積要件は物件選定・内装に直結するため、家賃を抑えるために面積を削ると、後から段階(Ⅰ/Ⅱ)を狙えなくなる、といった構造的な制約が出ます。

記録・カンファレンス要件は運用設計で差がつく

施設基準には、医師指示・実施時間・訓練内容・担当者等を患者ごとに一元保管し、閲覧可能であること、定期的な多職種カンファレンスなどの運用要件が含まれます。
ここは電子カルテ設定・リハ記録テンプレ・会議体の設計で担保できるため、開業時から「監査耐性のあるオペレーション」を作るのが重要です。

収益設計:疾患別リハは「単位×稼働×人件費」の設計問題

リハ専門は、自由診療のように単価を自院で決められない一方、稼働設計の自由度は高いビジネスです。収益設計は次の式で分解します。

  • 月間売上 =(1日総単位数)×(算定点数)×(稼働日数)×(点数単価)
  • 1日総単位数 =(セラピスト実働時間)÷(1単位時間)×(稼働率)

ここでの要点は、稼働率と人件費率を最初から管理指標にすることです。
よくある失敗は「設備投資を厚くしたのに、紹介導線が弱く稼働が上がらない」「医師要件を満たせず上位区分が算定できない」「記録運用が回らず算定が不安定」の3つです。

運動器(整形)と脳血管(神経)の収益特性の違い

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観点運動器リハ中心脳血管リハ中心
需要の作り方外来整形・術後・スポーツ等、広い導線急性期~回復期からの紹介・継続管理が鍵
人員の組み方PT比率が高くなりやすいPT/OT/STの組合せ設計が重要
物件・設備45㎡以上の訓練室等、動線設計が収益に直結同左(言語療法がある場合は個室等も検討)
リスク稼働率が下がると利益が急減紹介依存度が高いと波が出る

※上表は開業支援の現場での傾向整理です。実際の算定可否は施設基準・届出・診療内容により異なります。

ここがポイント
開業計画で「単位が取れる前提」を置きすぎるケースが多い印象です。資金繰り上は、稼働率60~70%の保守ケースでも赤字にならない固定費設計(家賃・人員・リース)にしておくと、改定や季節変動への耐性が上がります。

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届出と立ち上げの実務:開業前にやることを手順化

疾患別リハは、施設基準を満たしたことを前提に所定様式で届出を行い、配置図・平面図の添付なども求められます(例:様式42、従事者の勤務態様を記す様式、訓練室の図面添付等)。
開業準備の実務は、次の順が最短です。

Step 1: ターゲット疾患と紹介導線を確定する
運動器中心か、脳血管中心か、併設(整形+神経)かで、人員・物件・広告の打ち手が変わります。

Step 2: 施設基準から逆算して人員と物件を決める
常勤医師の専任要件、専従セラピスト、訓練室面積(診療所45㎡以上等)を満たす設計にします。

Step 3: 記録テンプレとカンファ運用を開業前に実装する
患者ごとの一元管理、実施時間・内容・担当者の記録、定期カンファを「ルール化」します。

Step 4: 届出書類を整え、算定開始日の計画を立てる
様式・従事者一覧・図面添付など、差戻しが起きやすい箇所を先に潰します。

Step 5: 収益を月次KPIで監視し、区分・加算の最適化を回す
改定や運用変更があっても、KPIで早期に検知できる体制にします。

よくある質問

Q: 2026年改定(令和8年度)の点数は、もう確定していますか? ▼
令和8年度診療報酬改定は厚生労働省サイトで会議資料等が整理され、段階的に情報が公表されます。開業計画では「施設基準は確定情報で設計」「点数は複数シナリオ」で組むのが実務的です。
Q: リハ室はどれくらいの広さが必要ですか? ▼
例として脳血管疾患等リハ(Ⅲ)では、専用の機能訓練室として診療所45㎡以上等の基準が示されています。物件選定の初期に必ず確認してください。
Q: 運動器リハ(Ⅱ)を狙う場合、医師の要件で注意点はありますか? ▼
運動器リハ(Ⅱ)では、運動器リハ経験を有する専任の常勤医師が求められ、経験の考え方(年数や研修修了が望ましい旨)も示されています。採用・兼務設計の段階で要件適合を確認することが重要です。
Q: 算定の「記録」が弱いと、どんな影響がありますか? ▼
施設基準には、医師指示、実施時間、訓練内容、担当者等を患者ごとに一元的に保管し、閲覧可能であること等が含まれます。運用が弱いと算定の安定性・監査対応に影響します。

まとめ

  • リハ専門開業の収益は、疾患別リハの算定区分と施設基準を満たし、単位を安定的に積み上げる設計で決まる
  • 2026年改定は公表が段階的なため、点数は複数シナリオ、固定費は保守的に置くのが安全
  • 訓練室面積(例:診療所45㎡以上等)は後戻りしにくいので、物件選定の最優先チェック項目
  • 記録・カンファなど運用要件は、開業前にテンプレと会議体で仕組み化すると強い
  • 届出は様式・従事者勤務態様・図面添付などで差戻しが起きやすく、工程管理が重要

参照ソース

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  • 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb5910&dataType=1&pageNo=3
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の(リハビリ関連資料)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251539.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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