
執筆者:辻 勝
会長税理士
診療報酬改定2026|機能強化加算の要件変更と対応策

まず結論:2026改定の「機能管理加算料」は、現時点では確定情報がない
「機能管理加算料」という呼び方は現場で使われがちですが、診療報酬点数表上は 「機能強化加算」(初診料の注に規定)として整理されています。2026年4月施行の改定(令和8年度改定)に向けた基本方針では「かかりつけ医機能の評価」や「外来医療の機能分化と連携」が明示されており、機能強化加算に関しても「要件の再設計」や「他の評価との整理統合」が論点になり得ます。
一方で、改定内容(点数・算定要件・経過措置)は、告示・通知が出るまで確定しません。本記事では、(1) 現行(令和6年度改定後)の機能強化加算の位置づけ、(2) 令和8年度改定の政策方向、(3) 今から準備しておくと改定耐性が上がる実務ポイント、を順に解説します。
現行の機能強化加算(令和6年度改定後)を整理する
点数と算定タイミング(まずはルールの土台を押さえる)
機能強化加算は、初診料に上乗せされる加算です。現行点数は 80点で、対象は「許可病床数が200床未満の病院又は診療所」に限られます。まずは自院が対象類型かと初診の運用設計が第一の確認ポイントです。
あわせて、外来実務では「外来管理加算」など、同じ初・再診領域の加算との関係整理が重要です。以下に、混同されやすい代表的な加算を比較します。
| 区分 | 位置づけ | 主な対象 | 点数(現行) | 実務上の要点 |
|---|---|---|---|---|
| 機能強化加算 | 初診料の加算 | 200床未満病院・診療所 | 80点 | 施設基準の届出が必要。掲示・HP掲載等の見える化が要件に入る |
| 外来管理加算 | 再診料等の加算 | 計画的な医学管理(検査・リハ等を行わない等の条件) | 52点 | 算定要件が診療内容に依存しやすく、運用差が出る |
| 地域包括診療加算 | 再診料等の加算 | 複数慢性疾患等を有する患者への包括的対応 | 28点/21点 | 研修・掲示・連携等、体制要件が多い。機能強化加算の施設基準とも接点がある |
機能強化加算は「初診での入口評価」、地域包括診療は「継続診療での体制評価」と捉えると、院内運用(初診フロー/継続管理フロー)を分けて設計しやすくなります。
施設基準(要点だけ)—「体制の質」と「地域での掲示」が核
機能強化加算の施設基準は、大きく3点に集約できます。
-
質の高い診療機能を有する体制
適切な受診につながる助言・指導等を行える体制が整備されていること。 -
特定の包括的機能を担う届出を行っていること
地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、(在宅療養支援診療所・病院に限る)在宅時医学総合管理料 等のいずれかの届出が要件です。機能強化加算は単独で完結せず、他の届出とセットで成立する設計になっています。 -
地域で包括的診療を担う医療機関であることの見える化
院内の見やすい場所およびホームページ等への掲示を行うこと等が求められます。
実務上は、(2)の「どの届出で要件を満たすか」と、(3)の「掲示・HPの文言、更新ルール、責任者」を早めに固定しておくと監査・個別指導リスクを下げやすくなります。
診療報酬改定2026(令和8年度改定)の方向性:機能強化加算は見直し対象になり得る
令和8年度改定の基本方針では、2040年頃を見据えた医療機関機能の分化・連携の文脈で、**「かかりつけ医機能の評価」と「外来医療の機能分化と連携」**が明示されています。加えて、医療DX/ICT連携を活用する体制の評価や、アウトカムにも着目した評価の推進も方向性として掲げられています。
この流れを機能強化加算に当てはめると、次のような論点が想定されます(いずれもあり得るレベルであり、決定事項ではありません)。
- 「かかりつけ医機能」の評価体系の整理
既存の機能強化加算・地域包括診療等の評価が、政策側の「かかりつけ医機能評価」とどう整合するか。重複や抜けを解消するために、要件や対象患者像の再定義が行われる可能性があります。 - 見える化要件の深化
すでに掲示・HP掲載が要件に入っていますが、改定の流れとしては、医療DXや情報連携の観点から、患者が比較・選択できる情報の標準化(掲載項目、更新頻度等)に発展することが考えられます。 - アウトカム視点の導入
体制(ストラクチャー)だけでなく、継続受診・連携実績などのプロセス/アウトカム指標をどう扱うかが論点になり得ます。
クリニックが今からできる準備:改定で揺れにくい運用にしておく
ここからは、改定内容がどう転んでも手戻りが少ない、実務的な準備を「手順」で示します。
手順1:現行の施設基準を要件分解してチェックする
- 機能強化加算の届出状況(有無、届出年月日、更新履歴)
- 要件(2)の「セットになる届出」がどれか(地域包括診療加算等)
- 掲示・HP掲載の文言が、要件を満たす粒度になっているか
掲示・HPは作って終わりではなく、改定時に最初に見られる証跡です。
手順2:患者導線(初診→継続管理→連携)をフローチャート化する
- 初診時に「受診の適切化」につながる説明(例:受診先選択、紹介状、夜間対応)
- 継続管理が必要な患者の抽出基準(慢性疾患、複数疾患、在宅移行など)
- 連携先(訪問看護、薬局、病院、介護支援専門員等)への連絡手順
この整理は、機能強化加算だけでなく、地域包括診療・医療DX・感染対策など、外来の多くの加算の共通インフラになります。
手順3:掲示・HPの管理ルールを作る(責任者と更新頻度)
- 院内掲示:掲示場所、差し替え担当、改定時の更新手順
- HP掲載:掲載ページのURL、更新権限、更新ログの残し方
手順4:データと証跡を残す(アウトカム議論への備え)
アウトカム評価が強まる場合に備え、以下のような「すぐ取り出せる」記録整備が有効です。
- 紹介・逆紹介の件数、連携医療機関の一覧
- 在宅移行の実績(外来→訪問診療等)
- 電子資格確認、診療情報取得、電子処方箋等の導入状況(医療DX体制の説明材料)
医療機関専門の税理士にご相談ください
40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
よくあるQ&A(現場で多い論点)
Q1. 「機能管理加算料」と「機能強化加算」は同じもの?
多くの場合、同じもの(機能強化加算)を指しています。正式名称は点数表に従って確認してください。
Q2. 機能強化加算は、届出さえ出していれば算定できますか?
届出は前提ですが、施設基準(体制整備、特定届出の保有、掲示・HP掲載等)を満たし続けていることが必要です。要件のうち「掲示・HP」は抜けやすいので定期点検を推奨します。
Q3. 2026改定で点数が上がる/下がると見込んでよいですか?
現時点で断定はできません。基本方針の方向性(かかりつけ医機能、外来機能分化、医療DX、アウトカム評価)に照らし、評価される体制要素を先に整えることが現実的です。
Q4. まず何から手を付けるべき?
「要件分解チェック(手順1)」が最優先です。届出と掲示・HPの整合が取れていないケースは、改定前でもリスクになります。
まとめ:2026改定は機能評価の再整理が本丸。機能強化加算は土台固めで先回りする
令和8年度改定は、かかりつけ医機能の評価や外来機能分化の流れが明確であり、機能強化加算(機能管理加算料)もその文脈で整理される可能性があります。改定内容の確定を待つのではなく、現行要件の点検、掲示・HPの運用設計、連携導線と証跡の整備を先に進めることで、改定後の手戻りを最小化できます。
参考URL(政府・公的機関のみ)
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。
記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。
