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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.01
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

2026年診療報酬改定を踏まえた開業医の設備投資戦略|加算を意識した賢い投資判断

7分で読めます
2026年診療報酬改定と設備投資戦略のイメージ

2026年診療報酬改定を踏まえた開業医の設備投資戦略|加算を意識した賢い投資判断

2026年(令和8年)4月に施行予定の診療報酬改定は、開業を検討している医師にとって見逃せない転換点です。特に設備投資の判断は、改定内容を踏まえることで「加算が取れる投資」と「取れない投資」に大きく分かれます。

本記事では、2026年診療報酬改定の概要を押さえながら、開業医が設備投資で意識すべきポイントを解説します。


2026年診療報酬改定の概要

改定の施行時期とスケジュール

2026年(令和8年)の診療報酬改定は、4月1日からの施行が予定されています。改定のスケジュールは以下の通りです。

  • 2025年12月:改定の基本方針決定
  • 2026年1月~2月:中央社会保険医療協議会(中医協)で個別改定項目を審議
  • 2026年3月:告示・通知の発出
  • 2026年4月:改定施行

開業を計画している医師は、3月の告示を待ってから設備投資を最終決定するのでは遅すぎます。1月時点で公表されている個別改定項目案を参考に、投資の方向性を固めておくことが重要です。

開業医に影響する主な改定ポイント

2026年改定では、以下の4つの基本的視点が示されています。

  1. 医療DXの推進:ICT・AI・IoTを活用した効率化
  2. 働き方改革への対応:タスクシフト・タスクシェアの推進
  3. 地域医療構想の実現:かかりつけ医機能の強化
  4. 効率的な医療提供体制:オンライン診療の適切な普及

これらの視点は、開業時の設備投資判断に直結します。特に「医療DXの推進」は、IT設備への投資が診療報酬上のメリットにつながる可能性を示しています。


設備投資で押さえるべき加算の種類

医療DX推進体制整備加算

医療DX推進体制整備加算は、医療機関がDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応するための体制を整備した場合に算定できる加算です。

算定要件(想定)

  • オンライン資格確認システムの導入
  • 電子処方箋への対応
  • 電子カルテ情報共有サービスへの参加準備
  • マイナ保険証の利用促進

2026年改定では、この加算の点数引き上げや要件の見直しが検討されています。開業時からこれらの体制を整えておくことで、初診・再診時に加算を算定できます。

オンライン資格確認関連

オンライン資格確認は、すでに原則義務化されています。2026年改定では、マイナ保険証の利用率向上を促す仕組みがさらに強化される見込みです。

投資のポイント

  • 顔認証付きカードリーダーの設置
  • レセプトコンピューターの対応確認
  • 患者への利用案内体制の整備

電子カルテ・ICT関連

電子カルテ標準化の流れを受け、2026年改定では標準規格に対応した電子カルテの導入を評価する方向性が示されています。

検討すべき設備

  • HL7 FHIR対応の電子カルテ
  • クラウド型電子カルテ(データ共有に有利)
  • 診療情報提供書の電子的送受信システム

開業時に導入する電子カルテは、標準規格への対応を確認しておきましょう。後から入れ替えるのは大きなコストになります。

医師事務作業補助体制加算

医師事務作業補助体制加算(いわゆる「医療クラーク加算」)は、医師の事務作業を補助するスタッフを配置した場合に算定できます。

2026年改定では、ICT機器を活用した場合の配置基準の緩和が検討されています。つまり、ICT投資によって人件費を抑えながら加算を取れる可能性があります。

関連する設備投資

  • 音声入力システム
  • AI問診システム
  • 自動受付・予約システム

開業時の設備投資判断のポイント

加算取得を見据えた機器選定

設備投資を検討する際は、「その機器で加算が取れるか」を常に意識しましょう。

←横にスクロールできます→
設備カテゴリ関連する加算投資優先度
電子カルテ(標準規格対応)医療DX推進体制整備加算★★★
オンライン資格確認機器医療情報取得加算★★★
AI問診・自動受付システム医師事務作業補助体制加算★★☆
オンライン診療システムオンライン診療料★★☆
画像診断機器(CT・MRI等)画像診断管理加算診療科による

初期投資と回収期間のシミュレーション

設備投資の判断には、回収期間のシミュレーションが不可欠です。

シミュレーション例:電子カルテ導入

  • 初期費用:300万円
  • 月額保守:3万円
  • 医療DX推進体制整備加算:初診8点、再診4点(想定)

月間患者数500人(初診100人、再診400人)の場合:

  • 月間加算収入:(100×8点 + 400×4点)× 10円 = 24,000円
  • 年間加算収入:288,000円

この例では、加算だけで初期費用を回収するには10年以上かかります。しかし、業務効率化による人件費削減効果も含めると、回収期間は大幅に短縮されます。

リースと購入の比較

開業時の資金繰りを考えると、リースの活用も選択肢になります。

←横にスクロールできます→
項目購入リース
初期費用高い低い(月額払い)
所有権ありなし
減価償却可能不可
最新機器への更新追加投資が必要契約満了時に更新しやすい
総支払額安い高くなることが多い

医療機器は技術革新が早いため、陳腐化リスクの高い機器はリースを検討する価値があります。


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診療科別・設備投資の優先順位

内科・小児科

内科・小児科は患者数が多く、加算の積み上げ効果が大きい診療科です。

優先度の高い設備

  1. 電子カルテ(標準規格対応)
  2. オンライン診療システム
  3. AI問診システム
  4. 自動精算機

整形外科

整形外科はリハビリ関連の設備投資が重要になります。

優先度の高い設備

  1. 電子カルテ(画像連携機能付き)
  2. デジタルX線撮影装置(DR)
  3. リハビリ支援機器
  4. 物理療法機器

画像診断機器については、疾患別リハビリテーション料との関連も考慮して選定しましょう。

その他の診療科

診療科によって、設備投資の優先順位は異なります。共通して言えることは、電子カルテとオンライン資格確認は必須ということです。その上で、診療科の特性に応じた機器を選定していきます。


まとめ:改定を味方につける設備投資

2026年診療報酬改定は、医療DXを推進する医療機関を後押しする内容になる見込みです。開業を検討している医師は、以下のポイントを押さえて設備投資を計画しましょう。

設備投資の3つの原則

  1. 加算取得を意識する:その設備で加算が取れるかを確認
  2. 標準規格を選ぶ:将来の制度変更に対応しやすい
  3. 回収期間を試算する:加算収入と効率化効果の両面で検討

2026年3月に告示・通知が出ると、改定の詳細が確定します。それまでに投資の方向性を固め、告示後に最終判断するスケジュールで進めることをおすすめします。

開業は大きな投資を伴います。診療報酬改定の流れを味方につけ、賢い設備投資で安定した経営基盤を築いてください。


参考情報

  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
  • 中央社会保険医療協議会(中医協)資料
  • 医療DX推進について(厚生労働省)
  • オンライン資格確認について(厚生労働省)

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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