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作成日:2025.05.31
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

個人事業主の年末調整は必要?ケース別手続き|税理士が解説

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個人事業主の年末調整は必要?ケース別手続き|税理士が解説

結論:個人事業主本人に年末調整は原則不要

個人事業主は、事業所得を年末調整で精算する仕組みではありません。事業の利益は、原則として確定申告で所得税を計算・精算します。したがって、原則として個人事業主本人に年末調整はありません。

一方で、従業員や家族に「給与」を支払っている場合、個人事業主は源泉徴収義務者として年末調整を行う必要が出てきます。ここを取り違えると、従業員の税額が合わないだけでなく、事業主側の源泉所得税の納付・法定調書にも影響します。

税理士法人 辻総合会計でも、「自分は確定申告するから年末調整は不要ですよね?」という相談は多いのですが、実際は「本人は不要でも、従業員分は必要」というケースがよくあります。本記事では、必要なケースと正しい手続きを、実務フローで整理します。

年末調整とは?確定申告との違い

年末調整は、1年間に給与から天引き(源泉徴収)した所得税と、年税額(本来納める所得税)との差額を、給与支払者が年末に精算する手続きです。国税庁の「年末調整のしかた」でも、年末調整は給与の源泉徴収額と年税額の精算として整理されています。

一方、個人事業主の事業所得は、帳簿から所得を計算し、確定申告で税額を確定させます。つまり、

  • 給与所得(従業員側):年末調整が基本
  • 事業所得(個人事業主本人):確定申告が基本

という役割分担です。

「年末調整が必要」と言われるときの典型パターン

個人事業主が「年末調整をやる」場面の多くは、本人のためではなく、従業員等の給与支払いのためです。従業員に給与を払うなら源泉徴収義務者として、年末調整・源泉徴収票の作成が論点になります。

年末調整が必要なケース・不要なケース

実務では、誰に何を支払っているかで判断します。次の表で全体像を掴むと迷いにくくなります。

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支払相手・収入の種類年末調整の要否実務上のポイント
個人事業主本人(事業所得)不要所得税は確定申告で精算
従業員(パート・アルバイト含む)へ給与必要(原則)扶養控除等申告書の提出を受け、年末に精算
家族へ青色事業専従者給与必要(対象になり得る)青色事業専従者給与も年末調整の対象になり得る(給与として源泉徴収・年末調整の論点)
外注先(請負・業務委託)への報酬原則不要「給与」ではないため。ただし報酬の種類により源泉徴収が必要な場合がある
ここがポイント
外注費か給与かの判定を誤ると、年末調整以前に「源泉徴収の要否」そのものが変わります。契約名ではなく、実態(指揮命令・勤務形態・代替性等)で判定が必要です。個別判断になるため、迷う場合は早めに専門家へ相談してください。

従業員がいる場合:年末調整は「やらないといけない業務」になりやすい

給与を支払うなら、源泉徴収→年末調整→源泉徴収票の交付が一連の実務になります。特に、扶養の増減や保険料控除、住宅ローン控除(年末調整での適用可否)などが絡むと、年末調整の精度が従業員の手取りや確定申告の要否に直結します。

青色事業専従者給与がある場合:年末調整の対象になり得る

青色事業専従者給与は、家族に対して支払う給与のうち、一定要件のもと必要経費に算入できる制度です。家族への支払いだから年末調整は不要、という整理にはなりません。給与として支払っている以上、源泉徴収・年末調整の検討対象となる点に注意してください。

個人事業主(給与支払者)が行う年末調整のやり方

ここでは、従業員や専従者に給与を支払っている個人事業主向けに、年末調整の基本手順を示します。国税庁の手引きに沿った一般的な流れとして理解してください。

Step 1: 年末調整の対象者を確定する

  • 年末まで在籍している従業員
  • 年の中途退職者(一定要件に該当する場合)
  • 青色事業専従者給与の支給対象者(給与として処理している場合)

対象者の取り漏れがあると、源泉徴収票や納付額がずれます。

Step 2: 申告書・控除資料を回収する

  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 保険料控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書(該当者)
  • その他、各種控除に必要な証明書類

年末調整は「書類が揃って初めて精算できる」手続きです。回収期限を社内で先に決めると、12月の混乱が減ります。

Step 3: 年間の給与総額・社会保険料等を集計する

  • 1〜12月の給与・賞与の合計
  • 社会保険料や小規模企業共済等の控除対象(該当がある場合)
  • 通勤手当などの非課税・課税の整理

令和7年分は通勤手当の非課税限度額の改正があり、支給実績によっては年末調整での対応が必要となる場合があります。

Step 4: 年税額を計算し、源泉徴収税額と突合する

  • 年税額(本来の所得税額)を算出
  • 毎月の源泉徴収税額合計との差額(過不足)を算出

Step 5: 過不足税額を精算し、最後の給与で調整する

  • 還付:最後の給与で所得税を返す(または徴収額を減らす)
  • 追徴:最後の給与で追加徴収する

従業員の手取りに影響するため、事前説明を入れるとトラブルを避けやすいです。

Step 6: 源泉徴収票の交付・源泉所得税の納付・法定調書対応へ進む

年末調整後は「出すべき書類」と「納めるべき税」が続きます。特に、源泉徴収票は翌年1月31日までに交付が原則です(退職者は退職後1か月以内)。また、源泉所得税の納付期限・納期の特例の適用状況も確認が必要です。

ここがポイント
納期の特例で納付は年2回にできる制度があります。特例適用中は、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日がそれぞれの納付期限とされています。資金繰りには有利ですが、集計ミスが起きると修正が大変なため、運用ルールを固めておくことが重要です。

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年末調整をしない・誤るとどうなる?注意点とリスク

年末調整は「従業員のための手続き」に見えますが、事業主側のリスクも現実的です。

  • 従業員の税額が精算されず、確定申告が必要になる(本来不要な人まで申告が必要になることも)
  • 源泉徴収票の作成・交付が遅れ、従業員の手続き(住宅ローン・保育園等)に影響する
  • 源泉所得税の納付漏れ・過少納付が生じ、結果として追加納付や事後対応が発生する
  • 外注と給与の判定ミスがあると、源泉徴収や法定調書全体が崩れる

特に小規模事業では、年末に経理が繁忙になりやすく、後回しにした結果「1月に一気に崩れる」ことが起きがちです。年末調整は、12月よりもむしろ11月から段取りしたほうが安全です。

こんなときは確定申告も必要?判断の目安

個人事業主本人は確定申告が基本ですが、従業員側も状況によっては確定申告が必要です。よくある相談は次のとおりです。

  • 年末調整を受けていない(副業先で扶養控除等申告書を出していない等)
  • 2か所以上から給与を受けている
  • 医療費控除・寄附金控除など、年末調整で反映できない控除を使いたい
  • 年の途中で退職し、年末調整の対象にならない形で終わった

年末調整と確定申告は「どちらが正しい」ではなく、所得の種類・控除の種類で使い分けるものです。全体設計として整理しましょう。

よくある質問

Q: 個人事業主が1人で事業をしていて従業員がいません。年末調整は必要ですか? ▼

A:

原則不要です。個人事業主本人の所得税は確定申告で精算します。年末調整は「給与所得の精算」なので、給与の支払いがなければ手続きは発生しません。
Q: パートを1人だけ雇っています。年末調整はやらないといけませんか? ▼

A:

多くのケースで必要になります。扶養控除等(異動)申告書の提出を受けている従業員について、年末に源泉徴収税額と年税額の差額を精算するのが基本です。対象外となる例外もありますが、まずは「給与を払うなら年末調整が原則」と理解すると整理しやすいです。
Q: 青色事業専従者給与を払っています。家族なので年末調整は不要ですか? ▼

A:

不要とは言い切れません。青色事業専従者給与は「給与」として支払うため、源泉徴収・年末調整の検討対象になります。年末調整の対象範囲や書類整備を含め、給与支払いの実態に即して確認してください。
Q: 源泉徴収票はいつまでに渡せばよいですか? ▼

A:

原則として翌年1月31日までに交付が必要です(退職者は退職後1か月以内)。従業員の各種手続きに影響するため、年末調整とセットで早めに作成・交付するのが実務上のポイントです。

まとめ

  • 個人事業主本人の所得税は確定申告で精算するため、年末調整は原則不要
  • 従業員や専従者に給与を払う場合、個人事業主は源泉徴収義務者として年末調整が必要になり得る
  • 年末調整は「対象者の確定→書類回収→年税額計算→精算→源泉徴収票・納付」の順で進める
  • 源泉徴収票の交付期限や源泉所得税の納付期限(納期の特例含む)を落とすと後工程が崩れる
  • 外注と給与の判定・年末調整の対象判定は個別性が高く、迷う場合は専門家に早めに確認する

参照ソース

  • 国税庁「令和7年分 年末調整のしかた」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2025/01.htm
  • 国税庁「No.7411『給与所得の源泉徴収票』の提出範囲と提出枚数等」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7411.htm
  • 国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

※免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事実関係により結論が異なる場合があります。具体的な手続きや判断は、所轄税務署または税理士等の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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