
執筆者:辻 勝
会長税理士
電子的診療情報連携体制整備加算2026|開業コスト影響を税理士が解説

電子的診療情報連携体制整備加算とは、医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算を統合・再編した新しい評価です。中医協資料では「医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算を廃止し、初診料・再診料・入院料加算として新設する」方針が示されています(点数は資料上「●●点」として今後確定)。【参照:中医協資料(第644回 総会資料)】
本記事では、旧加算との違い、施設基準(想定される具体要件)、そして開業予定クリニックが気になる「初期費用を回収できるか」の考え方を、税理士目線で整理します。
電子的診療情報連携体制整備加算とは
2026年度改定(令和8年度)に向けた中医協の個別改定項目資料では、医療DX関連の評価を「普及した関連サービスの活用を基本としつつ、更なる関連サービスの活用による質の高い医療の提供を評価」する観点から見直す、とされています。具体的には、医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算を廃止し、診療録管理体制加算の要件(サイバー対応を含む)を見直した上で、初診・再診・入院の加算として「電子的診療情報連携体制整備加算」を新設する、という枠組みです。
また、資料上は初診について「月1回に限り、区分に従い加算1~3を加算」と整理され、再診・外来診療料についても「月1回に限り」算定する構造が示されています(点数は今後告示等で確定)。
旧「医療DX推進体制整備加算」廃止との違い
旧制度(令和6年度改定で新設された枠組み)では、医科の医療DX推進体制整備加算は「初診で月1回8点」とされ、オンライン資格確認で取得した診療情報・薬剤情報の閲覧・活用体制、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスの活用体制などが要件として示されていました。さらに医療情報取得加算は、初診・再診で点数が区分されていました。
2026年度改定案では、これらをバラで積み上げるのではなく、「電子的に診療情報を連携・活用できる体制」を束ねて評価する方向に寄っています。加えて、診療録管理体制加算側での要件見直し(サイバー対策要件の強化を示唆)が同時に走る点が、開業コストに直結します。
| 観点 | 旧:医療DX推進体制整備加算等 | 新:電子的診療情報連携体制整備加算 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 医療DX推進体制を「初診等」で評価(医科は8点/回など) | 医療情報取得・DX推進の廃止後、初診・再診・入院の加算として再編 |
| 評価の狙い | オンライン資格確認・電子処方箋・情報共有等の導入促進 | 「連携して活用」の運用まで含めて評価(区分制の方向) |
| 点数の確定状況 | 既に点数が公表され運用中 | 2026年度改定案資料では点数は「●●点」表記(今後確定) |
| 開業への影響 | 導入していれば算定、未導入だと機会損失 | 体制整備+サイバー要件が同時進行し、初期費用・運用費の論点が増える |
新設加算の要件と「開業でやるべきこと」
中医協資料の施設基準パートでは、電子資格確認(オンライン資格確認)に関する体制、取得情報の閲覧・活用、実績、掲示・Web掲載、健康管理相談対応、電子処方箋、電磁的方法による情報共有体制などが要件の要素として列挙されています。開業準備では、これらを「システム導入」ではなく「運用できる状態」に落とし込む必要があります。
施設基準のチェック観点(実務上の分解)
- オンライン請求・オンライン資格確認を実装し、診察室等で取得情報を閲覧・活用できる運用にする
- マイナ保険証(電子資格確認)利用の「実績」要件が付く可能性を見越し、受付導線・患者説明・掲示物を整備する
- 院内掲示に加えて、原則としてWebサイトにも掲載する(掲示項目は通知で確定するため、更新しやすい運用に)
- 電子処方箋(発行体制)と、情報共有(電磁的方法による診療情報共有・活用)の体制を整える
ここで重要なのは、ベンダーが「対応可能」と言うだけでは足りず、院内オペレーションとして実装されていることです。たとえば、医師が診察中に参照できない配置・端末構成だと、施設基準の趣旨(閲覧・活用)を満たしにくくなります。
届出・運用開始までのステップ(開業向け)
Step 1: 体制要件の棚卸し(開業仕様に落とす)
オンライン請求、資格確認端末、カルテ・レセコン連携、電子処方箋、情報共有(将来の電子カルテ情報共有サービス等)を「どの機器で、誰が、いつ操作するか」まで設計します。
Step 2: ベンダー見積の内訳を分解する
初期費用を「機器」「ソフト」「連携」「セキュリティ」「保守」に分け、毎月コストに落ちる部分(クラウド利用料・保守・セキュリティ監視)を明確化します。
Step 3: 施設基準の届出(地方厚生局)を前提に逆算する
届出の締切・運用開始日の関係で、開業日から算定開始までタイムラグが出ます。過去のDX関連届出でも「届出直し期限」が示されており、運用上、期日管理は必須です。
Step 4: 受付導線と患者説明(利用率・実績に効く)
マイナ保険証の利用促進は、単なるポスターでは動きません。受付の声かけスクリプト、トラブル時の代替手順、説明カードを準備します。
開業費用と回収シミュレーションの考え方
開業医の相談で多いのが「結局、月いくら増えて、いつ回収できるのか」です。2026年度改定案では点数が未確定(●●点)なので、ここでは税理士実務で使う「変数で置く」シミュレーションを示します。
1点=10円を前提にした基本式
- 月次増収(概算)=(加算の点数)×10円×(算定回数)
- 算定回数(外来)=「初診の対象患者数」+「再診の対象患者数(加算が月1回なら延べ患者数ではなく患者数ベース)」
- 回収月数=(初期投資額)÷(月次増収-月次増コスト)
例:初期投資120万円、月次増コスト3万円のケース
仮に、新加算(外来)が「P点/患者・月1回」と確定するとします。月の対象患者数をN人とすると、
- 月次増収=P×10×N(円)
- 月次純増=P×10×N-30,000(円)
- 回収月数=1,200,000 ÷(P×10×N-30,000)
たとえば、N=1,000人/月の場合、
- P=5点なら:月次純増=5×10×1,000-30,000=20,000円 → 回収60か月
- P=10点なら:月次純増=100,000-30,000=70,000円 → 回収約17.1か月
ポイントは、「点数(P)」「対象患者数(N)」「月次増コスト」の3変数で回収が大きく変わることです。開業計画では、内覧会後3か月・6か月・12か月でNがどう伸びるかを置き、段階的に回収見込みを更新すると意思決定がブレません。
旧加算が廃止される場合の「差分」で見る
もし開業後も旧加算が存在する時期があれば、「新-旧」の差分で見るのが実務的です。旧制度では、医科の医療DX推進体制整備加算が初診で8点(月1回)など、既に点数が示されていました。新制度に一本化されるなら、単純に「新制度の点数総額が、旧制度の合計より上か下か」で、投資判断の前提が変わります。
したがって、点数確定後は、必ず「自院の患者構成(初診比率・小児比率・高齢者比率)に当てはめた差分表」を作って判断してください。
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開業で注意したいリスクと対策
- 施設基準の「整備」はできたが、運用(閲覧・活用)の証跡が弱い
- 対策:診療フローに組み込み、監査対応として「どこで何を確認するか」を院内ルール化する
- Web掲載・掲示の更新漏れ
- 対策:月次での点検(掲示物・Web)をチェックリスト化し、保守契約の範囲も確認する
- サイバー対策の追加投資(保険・監視・バックアップ)が後出しになる
- 対策:診療録管理体制加算側の要件強化を見越し、セキュリティ費用を「初期+月額」で別枠計上する
よくある質問
Q: 2026年6月から必ず新加算に変わりますか?
Q: クリニック開業で最低限、何を入れておけば算定の土台になりますか?
Q: 回収シミュレーションは、何を変数にして作るのが実務的ですか?
まとめ
- 電子的診療情報連携体制整備加算は、医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算を再編して新設される方向性が示されている
- 施設基準は、オンライン資格確認の運用、掲示・Web掲載、電子処方箋、電磁的方法の情報共有など「運用まで含む体制」が焦点
- 開業コストは「初期+月額(保守・セキュリティ)」で設計し、回収は点数・対象患者数・月額費用の3変数で評価する
- 点数や適用時期は未確定部分があるため、確定版の告示・通知で必ず更新する
- 税務面では、IT投資の資産計上・減価償却と補助金の有無も含め、資金繰り計画に織り込むことが重要
参照ソース
- 厚生労働省(中医協 総会 第644回)「個別改定項目について(その1)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
- 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて」: https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001277499.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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