
執筆者:辻 勝
会長税理士
門前薬局 立地依存減算(-15点)影響試算|税理士が解説

門前薬局等立地依存減算とは(-15点の意味)
門前薬局等立地依存減算とは、新規開設する保険薬局が、既に薬局が多数ある地域(特に病院近隣)や医療モール内など、立地の「依存度」が高い形で出店する場合に、調剤基本料から一定点数を減算する考え方です。中医協資料(個別改定項目)では「新規開設する保険薬局」について、立地に応じて減算とする方向性が示されています。
減算が「-15点」の場合、収益インパクトはシンプルで、原則として 処方箋1枚あたり 15点(=150円) の減収です(診療報酬・調剤報酬は原則1点10円で計算)。
対象になるのはどんな薬局か(都市部・病院近隣・医療モール)
まず押さえる判断軸は「新規開設」か
今回の減算は、資料上「新規開設する保険薬局」を明示している点が重要です。既存店が直ちに一律で減算、という整理ではありません(最終取り扱いは確定文書で要確認)。
立地の考え方:都市部(別表の対象地域)+供給過多エリア
ご提示の資料趣旨では、対象地域として「別表第三の一に掲げる都市部(16政令指定都市+東京23区)」が示され、加えて「病院近隣で既に多数の薬局が開局している」など、供給過多になりやすいエリアが問題意識として置かれています。
実務では次の2段階で確認すると整理しやすいです。
Step 1: 立地の属性を確認する(都市部か、医療モールか、病院近隣か)
- 所在地が都市部一覧(別表)に該当するか
- 医療モール内(複数診療科が集積するビル・区画)に該当するか
- 大病院・基幹病院の近隣で、周囲に薬局が集中しているか
Step 2: 「新規開設」に該当するか、経過措置があるかを確認する
- 開局日(指定日以降の新規か)
- 移転・増床・法人変更等が「新規」と扱われるか
- 経過措置の有無、期間、要件
年間いくら減収になるか:-15点(150円)×処方箋枚数で試算
結論は、年間減収=150円 × 年間処方箋枚数(-15点前提)です。まずは自薬局の「処方箋受付回数(枚数)」に当てはめるのが最短です。
処方箋枚数別の年間減収シミュレーション(目安)
前提:-15点(150円)/処方箋1枚、営業日数250日(概算)
| 1日あたり処方箋枚数 | 年間処方箋枚数(250日) | 年間減収(150円×枚数) |
|---|---|---|
| 50枚 | 12,500枚 | 1,875,000円 |
| 80枚 | 20,000枚 | 3,000,000円 |
| 100枚 | 25,000枚 | 3,750,000円 |
| 150枚 | 37,500枚 | 5,625,000円 |
| 200枚 | 50,000枚 | 7,500,000円 |
「患者負担があるから実入りは違う?」への考え方
減算は点数(=請求総額)そのものが下がるため、患者負担・保険者負担の内訳に関わらず、薬局側の売上(レセプト請求ベース)は原則として同額減少します。資金繰り面でも、月次請求額がその分小さくなる点に注意が必要です。
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実務対応:影響を最小化するために見るべき3つの論点
1) 出店計画(新規出店・承継・移転)の再点検
- 新規出店で都市部・医療モール内・病院近隣に該当しうる場合、減算前提の損益計画に組み替える
- M&Aや事業承継、移転が「新規開設」扱いになるかを制度文書で確認(扱い次第でインパクトが変わります)
2) 収益構造の組み替え(加算の取りこぼし防止)
減算が固定的に入るなら、対抗策は「別の評価の取りこぼしを減らす」ことです。具体的には、算定要件が明確な加算(地域支援体制、在宅、服薬情報提供、連携等)を、記録・運用・算定の3点で棚卸しします。
Step 1: 算定できていない加算を洗い出す
- 月次で「算定率」「算定漏れ理由」を分類(記録不足、同意未取得、要件未充足など)
Step 2: 運用と記録を標準化する
- 同意書、説明文、薬歴テンプレート、チェックリストを整備
- 人に依存する作業を減らす(新人でも同じ品質で回る形)
Step 3: 数字で効果検証する
- 減算による年間影響額(本記事の式)と、加算改善による上振れ額を並べて判断
3) 経過措置・対象判定の最終確認
改定の最終形は告示・通知・疑義解釈で固まります。対象地域(別表)、新規開設の定義、経過措置の期間は、出店計画や収益予測の前提をひっくり返す論点なので、公開後に必ず差し替え確認が必要です。
よくある質問
Q: 既存の門前薬局も一律で-15点になりますか?
Q: -15点は「処方箋1枚ごと」にかかるのですか?
Q: 都市部(別表)の具体的な市区はどこで確認できますか?
Q: 減算が入った場合、最初に見直すべきKPIは何ですか?
まとめ
- 門前薬局等立地依存減算(-15点想定)は、処方箋1枚あたり150円の減収インパクトになり得る
- 年間減収は「150円×年間処方箋枚数」で概算でき、50枚/日で約187.5万円、100枚/日で約375万円が目安
- 資料上の焦点は「新規開設」と「供給過多になりやすい立地(都市部・病院近隣・医療モール等)」
- 実務は、出店計画の前提見直しと、加算の取りこぼし防止(運用・記録の標準化)で影響を圧縮する
- 最終要件(対象地域、経過措置、点数)は確定文書で必ず再確認する
参照ソース
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(資料)「個別改定項目について」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会(総会資料掲載ページ): https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00286.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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