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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.22
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

年収の壁2026:103→123→160の実務|税理士が解説

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年収の壁2026:103→123→160の実務|税理士が解説

結論:103→123→160は「壁の種類」が違います

「年収の壁103万円が123万円や160万円になった」と言われますが、同じ壁が一気に移動したわけではありません。税制改正で動いたのは主に「所得税(扶養の判定)」と「所得税(本人が課税されるライン)」で、社会保険(106万円・130万円等)は別の制度です。
令和7年度税制改正は原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税(年末調整等)から実務が変わります。


103万→123万→160万の変遷タイムライン(何がどこで動いたか)

1)103万円(改正前の基本形)

改正前は、給与収入が一定以下なら「給与所得控除(最低55万円)+基礎控除48万円」で所得税の課税所得が0になりやすく、結果として「103万円」が象徴的に扱われてきました。

2)123万円(扶養(税)の判定ラインが引上げ)

扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が、合計所得金額48万円以下(給与収入103万円以下)から、合計所得金額58万円以下(給与収入123万円以下)へ改正されています。
つまり「123万円」は、主に扶養に入れる/入れない(所得税の扶養控除・同一生計配偶者等)の判定が動いた、という理解が実務的です。

3)160万円(本人の所得税がかかり始める目安)

給与所得控除の最低保障額が55万円→65万円へ引き上げられ、加えて低所得層の基礎控除が大きく増えています。
給与収入が低い層では、基礎控除が95万円となり(一定の合計所得金額以下)、65万円の給与所得控除と組み合わさって、給与収入ベースで「160万円」付近まで所得税がかかりにくい構造になります。

ここがポイント
「160万円」は誰でも一律ではありません。基礎控除は合計所得金額に応じて段階があり、年末調整・各種控除(保険料控除等)の有無でも最終税額は変わります。制度上の根拠は「給与所得控除(最低65万円)」と「基礎控除(合計所得金額に応じて改正)」です。

そもそも「年収の壁」は3系統あります(比較表)

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壁(代表値)何の判定か動いた理由経営者が困るポイント
123万円(税の扶養)扶養控除・同一生計配偶者など「扶養(税)」の所得要件扶養親族等の所得要件が48万→58万(給与換算103→123)扶養申告書・年末調整の確認項目が増える
160万円(本人の所得税)本人の所得税がかかり始める目安(給与所得控除65+基礎控除の増)基礎控除の見直し、給与所得控除最低保障の引上げ「税が怖いから働かない」が変わり、シフト希望が増える
106万円/130万円(社会保険)社保加入や扶養(健保)に関わる判定被用者保険の適用拡大等の政策税より手取りインパクトが大きい(本人・会社負担)

院長・経営者が実務でやるべき3つの対応(給与設定・社保・年調)

対応1:給与レンジを「税」と「社保」で分けて設計する

まず結論として、スタッフの「働き控え」は税よりも社会保険で起きやすいです。
そのため、給与レンジは次の2レーンで設計すると整理しやすいです。

  • レーンA:扶養(社保)を維持したい層(短時間・学生・配偶者など)
  • レーンB:社保加入してしっかり働きたい層(中核パート・準社員化など)

厚労省は「年収の壁」対応として、106万円の壁への対応や被用者保険の適用拡大などを案内しています。

対応2:社会保険の説明資料を院内仕様で持つ

社保は本人負担+事業主負担があるため、給与を少し上げただけで「手取りが増えにくい」と感じる局面が出ます。
採用・定着の観点でも、以下を院内の標準説明にしておくと揉めにくいです。

  • 社保加入の条件(会社規模・所定労働時間等の論点)
  • 加入後のメリット(傷病手当金、将来年金など)
  • 扶養(健保)の判定と、130万円付近の注意点

対応3:年末調整(扶養・特定親族)の書類フローを更新する

令和7年12月以後の年末調整で、基礎控除・給与所得控除の改正が反映されます。
また、扶養親族等の所得要件の改正により、従業員が「新たに扶養控除等の対象となる親族」を持つケースが出ます(申告書の提出・記載確認が重要)。
さらに、19〜23歳の親族に関する「特定親族特別控除」も新設されています。

Step 1: 扶養関係の聞き取り(11月〜12月初旬)
「扶養(税)」の判定ラインが103→123へ動くため、これまで対象外だった親族が対象になる可能性を洗い出します。

Step 2: 申告書の回収・記載チェック(12月給与前)
扶養控除等申告書、(該当者は)特定親族特別控除申告書など、必要書類の提出漏れを潰します。

Step 3: 年末調整の計算・精算(12月〜年末)
改正後の控除額(基礎控除・給与所得控除)に基づいて精算します。


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クリニックのパート(看護師・受付)影響シミュレーション

ここでは「税の壁」と「働き方」の目安を掴むため、年収を時給×時間でざっくり置きます(賞与なし、52週換算)。

ケースA:受付(時給1,300円)

  • 週18時間:1,300×18×52=1,216,800円(約121.7万円)
    • 税の扶養(123万円)に近いゾーン
  • 週20時間:1,300×20×52=1,352,000円(約135.2万円)
    • 税の扶養を外れる可能性が高い(家計全体で再設計が必要)

ケースB:パート看護師(時給1,800円)

  • 週16時間:1,800×16×52=1,497,600円(約149.8万円)
  • 週17時間:1,800×17×52=1,591,200円(約159.1万円)
    • 160万円近辺で「所得税がかかりにくい」構造に寄る一方、社保側の論点が先に効いてくることが多い(勤務条件次第)。

「何もしないと損するケース」の実例(経営側の落とし穴)

実例1:扶養(税)の拡大を周知せず、年末調整で差戻し

扶養親族等の所得要件が変わっているのに、院内の案内が従来の「103万円」のままだと、申告書の内容が揃わず年末調整が荒れます。
結果として、従業員の不満(還付が遅い等)や、事務工数の増大につながります。

実例2:シフト希望が増えるのに、社保の説明がなく離職

「税が160万円まで大丈夫そう」と聞いたスタッフが働く時間を増やし、結果として社保加入が現実化する局面で、説明不足だと「手取りが思ったより増えない」と不信感が出ます。


よくある質問

Q: 103万円の壁はもう存在しないのですか? ▼
代表値としての「103万円」は影響が薄れていますが、壁がゼロになったわけではありません。扶養(税)の所得要件は給与換算で123万円に改正され、本人の所得税は控除構造の見直しで160万円近辺までかかりにくい形に寄っています。
Q: 160万円まで働いても社会保険に入らなくていい? ▼
別問題です。社会保険は税の控除計算とは独立して、勤務条件や制度(適用拡大の流れ)で判定されます。厚労省の「年収の壁」対応でも、106万円の壁への対応や被用者保険の適用拡大が整理されています。
Q: クリニック側で最優先の対応は? ▼
①給与レンジを「税」と「社保」で分ける、②社保の説明資料を標準化、③年末調整の書類フロー更新、の順が事故が少ないです。年末調整は令和7年12月以後に実務変更が出る点を押さえてください。
Q: この記事の数字だけで給与設計を決めてよいですか? ▼
いいえ。控除(保険料控除等)や家族構成、社保の加入条件で結論が変わります。個別設計は専門家に確認してください。

まとめ

  • 103→123→160は「同じ壁が動いた」のではなく、税の扶養と本人の所得税で論点が違う
  • 扶養(税)の所得要件は48万→58万に改正され、給与換算で103→123が根拠
  • 給与所得控除の最低保障が55万→65万、基礎控除も見直され、所得税は160万円近辺までかかりにくい構造が生まれる
  • 社会保険(106/130等)は別系統で、手取り・会社負担に直結するため院内説明が重要
  • 経営者の実務は「給与設計」「社保説明」「年末調整フロー更新」の3点をセットで行う

参照ソース

  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」: https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)(PDF)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf
  • 厚生労働省「『年収の壁』への対応」: https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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