
執筆者:辻 勝
会長税理士
かかりつけ医機能報告の開業施設基準設計|2026初回報告を税理士が解説

かかりつけ医機能報告制度とは(2026初回報告の要点)
かかりつけ医機能報告制度とは、病院・診療所(特定機能病院、歯科を除く)が、自院の「かかりつけ医機能」の実施状況を都道府県へ報告し、地域で不足する機能を補うための協議につなげる仕組みです。開業医にとっての実務的な核心は、報告(毎年1〜3月)に加え、院内掲示と患者説明までが一体で設計対象になる点です。
2026年に開業する内科・総合診療では、初回報告(定期報告)に向けて、開業時点から「報告で問われる体制」を整えておくことが、後追いコスト(人員再配置、連携先再選定、掲示物作り直し)を減らします。
「17領域・40疾患」は何を意味するか(新規開業での設計ポイント)
17の診療領域(一次診療の対応可否)
報告では、一次診療として対応できる領域を選択します。17領域は、皮膚・形成外科、神経・脳血管、精神科・神経科、眼、耳鼻咽喉、呼吸器、消化器系、肝・胆道・膵臓、循環器系、腎・泌尿器、産科、婦人科、乳腺、内分泌・代謝・栄養、血液・免疫系、筋・骨格系及び外傷、小児、の枠組みです。
開業準備では「全部に対応」を目指すより、標榜・診療導線に即して、説明可能な範囲で領域を確定し、連携で補う領域を決めることが重要です。ここが、施設基準設計(体制を説明できる状態にする設計)の出発点になります。
40疾患(発生頻度が高い疾患の例示)と説明できる範囲の作り方
報告項目には「一次診療を行うことができる発生頻度が高い疾患(例)」として、貧血、糖尿病等の選択肢が並び、40番目に「がん」等が置かれています。ポイントは、選択肢を埋めることではなく、「当院として一次診療としてどこまで診るか/どこから紹介か」を、院内掲示・患者説明と整合させることです。
新規開業では次の3点で説明できる範囲を先に決めると、報告・掲示・説明がブレません。
- 入口:初診時に診る主訴の範囲(発熱、生活習慣病、睡眠、軽度精神症状など)
- 継続:フォローできる慢性疾患の範囲(検査頻度、合併症スクリーニング、療養指導)
- 出口:紹介・逆紹介の基準(画像、専門治療、入院適応、緊急時)
1号機能・2号機能と「開業施設基準」の考え方(比較表)
報告は大きく1号機能(総合的・継続的な診療)と、必要に応じて2号機能(時間外、入退院、在宅、介護連携など)に整理されます。開業時の設計では「1号機能を有りにする要件」を先に満たすことが実務の近道です。
| 区分 | 目的 | 開業時に設計すべきもの | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 1号機能 | 日常診療を総合的・継続的に行う | 相談対応の窓口、領域・疾患の範囲、掲示・説明の運用 | できるの定義が曖昧で掲示と矛盾 |
| 2号機能 | 地域連携(時間外・入退院・在宅・介護) | 連携先、当番体制、連絡手順、記録様式 | 連携先はあるが手順が文書化されていない |
| 診療報酬の施設基準 | 点数算定の要件 | 届出書類、実績要件、記録・監査耐性 | 体制が先に固まらず、届出だけ先行 |
2026初回報告を見据えた「施設基準設計」ステップ(届出・体制・文書)
税理士法人 辻総合会計では、開業支援の現場で「制度要件の読み込み」よりも「院内で回る運用」を先に固めた方が、開業後の手戻りが少ないケースを多く見ています。ここでは、2026年の初回定期報告を前提に、開業準備を手順化します。
Step 1: 診療コンセプトを報告言語へ翻訳する(領域・疾患・相談)
- 17領域のうち「一次診療として診る領域」を確定
- 40疾患(例示)に沿って「診る/紹介」の基準を院内で合意
- 相談対応(電話・Web・窓口、対応時間、担当者、記録)を決める
Step 2: 連携設計(紹介・逆紹介、入退院、介護・在宅)を相手先ベースで確定
- 紹介先(病院・専門医)と逆紹介の運用(予約枠、返書、検査結果共有)
- 入退院支援が必要な患者の導線(地域連携室、MSW、ケアマネ)
- 介護サービス等との連携手順(情報提供書、カンファレンス、緊急時)
Step 3: 時間外対応を「診療時間外の設計」として文章化する
- 24時間対応を必ず自院でやる必要はありませんが、地域の実情に即して、
- 電話対応(転送・代行・留守電)と折返し基準
- 夜間休日の受診先案内(連携病院、救急、#7119等)
- 記録と翌診療日のフォロー を文書化し、掲示・説明に耐える形にします。
Step 4: 院内掲示・患者説明を「様式+運用」で固める
- 掲示内容は、患者が読んで誤解しない表現に整える
- 患者説明は「求めがあったときに出せる」状態(様式、説明担当、保管)を作る
- 開業時に掲示・説明を作り切ると、報告時の入力が速くなります
Step 5: 定期報告(1〜3月)と変更報告(随時)を年間業務に組み込む
- 1月時点の体制で報告する前提で、年末に見直し会議を入れる
- 人員・連携先の変更があれば、変更報告が必要になる想定で管理表を作る
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開業チェックリスト(17領域・40疾患に耐える体制づくり)
開業時点で最低限そろえたいものを、報告・掲示・説明の観点で整理します。
- 領域・疾患の一次診療範囲(診る/紹介の基準表)
- 患者相談の受付ルール(窓口、時間、担当、記録)
- 連携先リスト(紹介先、救急、在宅、介護、検査委託)
- 時間外対応フロー(案内文、転送設定、翌日フォロー)
- 入退院支援の連絡手順(地域連携室、ケアマネへの連絡テンプレ)
- 院内掲示物(制度に沿った様式、更新日管理)
- 患者説明様式(求めがあった場合に出せる保管場所・説明者)
よくある質問
Q: 2026年に開業した場合、いつの内容で報告することになりますか?
Q: 17領域・40疾患は、全て対応できないと1号機能になれませんか?
Q: 診療報酬の施設基準(届出)と、かかりつけ医機能報告はどちらを先に整えるべきですか?
まとめ
- かかりつけ医機能報告制度は、報告(毎年1〜3月)だけでなく、院内掲示・患者説明まで含めて設計が必要
- 17領域・40疾患は「自院が一次診療として説明できる範囲」を定め、連携で補う発想が現実的
- 開業時は、領域・疾患の範囲、相談対応、時間外、入退院・在宅・介護連携を文書化して一体運用にする
- 施設基準(診療報酬届出)は、報告制度で求められる体制を固めた後に上乗せ設計するとブレない
- 初回報告の成否は、情報の集約(連携先一覧、フロー、掲示・説明の版管理)で決まる
参照ソース
- 厚生労働省「かかりつけ医機能報告制度」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123022_00007.html
- 厚生労働省「かかりつけ医機能報告マニュアル(医療機関用)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001590091.pdf
- 厚生労働省「かかりつけ医機能報告制度 Q&A集(第1版)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001508112.pdf
- 厚生労働省「医療法施行規則別表第八関係(概要)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001503943.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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