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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.14
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

口腔機能実地指導料46点の算定と増収術|税理士が解説

9分で読めます
口腔機能実地指導料46点の算定と増収術|税理士が解説

口腔機能実地指導料46点とは

口腔機能実地指導料46点(以下、本稿では「本評価」)とは、歯科衛生士(DH)による口腔機能に関する実地指導を評価する新設項目として、2026年度改定に向けた議論で提示されているものです。対象は、口腔機能発達不全症(18歳未満)および口腔機能低下症(主に高齢者)を想定し、口腔機能の獲得・回復・維持向上を目的とした指導を、診療所の現場で「算定できる形」に落とし込むことが狙いになります。

一方、制度が「新設(案)」の段階では、最終的な点数・算定要件・包括関係は告示・通知で確定します。したがって、院内導入は「要件が確定したら即運用に移せる」状態を先に作っておくのが現実的です。

ここがポイント
本稿は、2026年度改定に向けた中医協資料で議論されている方向性と、既存の口腔機能管理・指導の課題(「DHが忙しく時間がない」等)を踏まえ、実務に落とすための設計図として整理しています。最終要件は必ず最新の告示・通知で確認してください。

口腔機能実地指導料と既存評価の違い

「口腔機能」に関する評価は、管理料・加算・指導等が複層的で、現場ではどれを、誰が、いつ、何分で、どこまでやるかが曖昧になりがちです。中医協資料でも、口腔機能の管理が重要である一方、算定が進まない要因として「DHが忙しく指導時間がない」等が挙げられています。

ここで本評価のポイントは、DHが提供する「実地指導」を、管理とは別に点数で切り出して評価する設計(と読める)点です。管理(計画・評価・継続フォロー)と、実地指導(実際の訓練・行動変容支援)を分けることで、役割分担と生産性管理がしやすくなります。

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観点口腔機能「管理」系口腔機能「実地指導」系(本評価の狙い)
目的継続的な評価・計画・管理口腔機能の獲得/回復/維持向上の実践支援
主担当歯科医師+DH(分担)DH主導(指示・監督は院内ルールで整備)
ボトルネック計画書・評価・説明が重い時間確保と標準手順の未整備
KPI算定率、継続率1人当たり実施件数、再現性、時間当たり付加価値

算定で押さえる対象患者と「併算定+30点」の考え方

議論上の対象は、次の2群が中心です。

  • 口腔機能発達不全症(18歳未満)
  • 口腔機能低下症(主に高齢者)

また「管理併算定時に+30点」という設計(案)が示されている前提で考えると、院内では次のように整理すると混乱が減ります。

  • 本評価(46点):DHが実地指導を提供した事実を評価
  • 管理系(管理料等):診断・計画・評価・継続管理の枠組みを評価
  • 併算定+30点(案):管理の枠組みの下で実地指導を行うセット化を促すインセンティブ

税務・管理会計の観点では、ここを「単発の指導売上」ではなく、口腔機能の管理ライン(LTV)を伸ばすためのフロント商品として設計すると、スタッフ配置と賃上げ原資の説明が通りやすくなります。

DH活用で増収につなげる院内オペレーション設計

「算定できるのに算定できない」最大要因は、行為そのものではなく、時間設計と記録設計です。中医協資料でも、指導系が進まない理由として時間不足が強調されています。

ここは、診療時間の中にDHの口腔機能枠を予約として埋め込むのが最短です。

Step 1: 対象者の拾い上げルールを決める

  • 初診/再診の問診・検査で「発達不全/低下症」の疑いフラグを立てる
  • フラグが立った患者は、診療後にDH枠へ自動誘導(受付オペに組み込み)

Step 2: 15分の標準パッケージを作る(毎回同じ品質)

  • 口腔機能の課題説明(患者の理解)
  • 訓練・指導(嚥下/咀嚼/舌・口唇運動など、院内で採用するメニューを固定)
  • 宿題(家庭での実施)と次回フォローの約束

Step 3: 記録テンプレを1枚に集約する

  • 実施日、実施者(DH)、実施内容(メニュー)、所要時間、患者反応
  • 管理併算定(案)を見据えるなら、管理計画との紐付け欄も用意

Step 4: 1か月でKPIを回す

  • DH1人あたり:実地指導件数/月
  • 1件あたり:平均所要時間
  • 管理併算定率(案):管理ラインへ移行できた割合
ここがポイント
標準化の狙いは、DHのスキル差を埋めることではなく、院長が「この時間で、この内容を実施した」と説明できる状態を作ることです。監査対応と、給与への還元ロジック(原資)づくりが同時に進みます。

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収益シミュレーション:46点を「賃上げ原資」に変える

点数は全国一律で、1点=10円換算が基本です(※実際の請求は点数×点数単価)。ここでは分かりやすく「10円/点」で目安を置きます。

  • 本評価:46点 → 460円/回(目安)
  • 管理併算定加算(案):+30点 → +300円/回(目安)
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月の算定回数46点のみ:月増収46点のみ:年増収(案)管理併算定+30点も全件取れた場合の年増収
50回/月23,000円276,000円456,000円(+180,000円)
100回/月46,000円552,000円912,000円(+360,000円)
200回/月92,000円1,104,000円1,824,000円(+720,000円)

増収を処遇改善に回すときは、「売上の◯%を給与へ」よりも、次の式の方が院内合意が作りやすいです。

  • (追加粗利)=(追加売上)-(追加人件費:DH時間)-(消耗品・資料等)
  • (還元可能額)=(追加粗利)×(還元率:例30〜50%)

税理士法人 辻総合会計としての実務感では、DH枠が空いている時間の有効活用で回せるなら、追加固定費を増やさずに粗利が出やすい構造になります。一方で、予約枠を確保して診療枠が圧迫される場合は、「院長枠の代替」ではなく「DH枠の増設」として設計し、チェアタイムの最適化とセットで検討するのが安全です。

注意点:算定要件より「記録不備」で落ちる

指導・管理系は、実施していても記録が薄いと否認リスクが上がります。中医協資料でも、指導の実施実態や時間確保が論点になっており、裏返すと形だけ算定は見られやすい領域です。

実務で押さえるべきは次の3点です。

  • 誰が(DH名)・いつ(日時)・何を(メニュー)・どれくらい(時間)実施したか
  • 対象疾患(発達不全/低下症)との整合(なぜ必要か)
  • 管理併算定(案)を狙うなら、管理計画との紐付け(計画→指導→フォロー)

テンプレに入力するだけで成立する設計にすると、忙しい現場でも再現できます。

よくある質問

Q: 46点は、DHがいれば自動的に取れますか? ▼
取れません。実施内容・時間・対象疾患との整合が説明できる形で、実地指導としての実施記録が必要です。制度確定後は告示・通知の要件に合わせて、テンプレを微修正してください。
Q: 管理併算定+30点(案)を最大化するコツは? ▼
「管理→指導→フォロー」をワンセットにし、対象患者をDH枠へ自動誘導することです。拾い上げが属人的だと併算定率が上がりません。
Q: 増収分をDH給与に反映するとき、どんな説明が通りやすいですか? ▼
「算定件数×単価」で原資を見える化し、追加粗利の範囲で還元率(例30〜50%)を決める説明が現実的です。固定給アップだけでなく、算定件数連動の手当設計も検討余地があります。
Q: すでに口腔機能の指導をしているのに、算定できないことがあります。なぜ? ▼
ほとんどは「時間設計」と「記録設計」です。中医協資料でも、指導系の未算定理由として時間がないが挙がっています。予約枠化とテンプレ化で解消しやすいです。

まとめ

  • 口腔機能実地指導料46点(案)は、DHの実地指導を点数化し、口腔機能の管理ラインを強化する狙いがある
  • 成否は算定要件より、DH枠の予約化と記録テンプレ化で決まる
  • 管理併算定+30点(案)は「管理→指導→フォロー」をセット運用すると取りこぼしが減る
  • 収益は月100回で年約55万円(46点のみ目安)。併算定(案)まで取れれば年約91万円規模も見える
  • 増収を処遇改善につなげるには、追加粗利ベースで還元ルールを先に設計する

参照ソース

  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第629回)総-2 歯科医療について(その2)」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598463.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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