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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.14
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

後発医薬品体制加算廃止の影響|損益比較と対応策

7分で読めます
後発医薬品調剤体制加算廃止の影響|地域支援・医薬品供給対応体制加算で損益比較

後発医薬品調剤体制加算の廃止とは(2026年改定の結論)

2026年の見直しでは、従来の後発医薬品調剤体制加算(21点/28点/30点)が削除され、薬局機能の評価は医薬品の安定供給に対応できる体制を含めた「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へ重心が移ります。点数が単純に置き換わるケースもあれば、要件未達で「加算ゼロ」になるケースもあり、薬局の損益インパクトは二極化しやすい設計です。
まずは「点数差」と「要件差」を切り分け、次に自局の月次(処方箋枚数・後発使用割合・分譲実績等)に落とし込むのが最短です。

何が変わる?点数と位置づけの全体像

点数(旧→新)の整理

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区分旧制度(改定前)新制度(改定後)影響の見方
後発医薬品調剤体制加算加算1=21点 / 加算2=28点 / 加算3=30点廃止(削除)「後発割合を上げれば点数が付く」単独評価が消える
地域支援体制加算1=32点 / 2=40点 / 3=10点 / 4=32点地域支援・医薬品供給対応体制加算 1=27点 / 2=59点 / 3=67点 / 4=37点 / 5=59点5区分化。供給対応の要件を含む評価へ再設計

ポイントは、旧「後発医薬品調剤体制加算」がなくなる一方で、旧「地域支援体制加算」が名称変更・区分再編され、点数帯が拡張されたことです。したがって、「後発加算廃止=必ず減収」ではなく、上位区分に上がれる薬局は増収もあり得ます。

廃止(削除)される点数の根拠

調剤報酬点数表(別紙1-3)では、(削る)として後発医薬品調剤体制加算1~3(21/28/30点)が削除されています。

新:地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件は何が重い?

新加算の狙いは「後発率」だけでなく「供給対応力」

個別改定項目(中医協資料)では、医薬品供給不安や追加業務の発生を踏まえ、医薬品の安定供給に資する体制を新たに評価する方向性が明示されています。薬局向けの施設基準(通知イメージ)としては、例えば次のような要素が示されています。

  • 医薬品の安定供給に向けた計画的な調達・在庫管理
  • 他の保険薬局への医薬品分譲実績(同一グループ内は除外)
  • 入手困難時の対応(在庫のある薬局探索、患者案内、処方医照会等)
  • 重要供給確保医薬品(内用・外用)の一定期間分の備蓄努力
  • 単品単価交渉の原則 など

「後発率の管理」だけならシステム集計で済みますが、供給対応はオペレーション・在庫・地域連携の証跡が必要になりやすく、ここが実務のボトルネックになりがちです。

ここがポイント
実務で詰まりやすいのは「分譲実績」と「備蓄の定義」です。卸に在庫を確保させているだけでは備蓄と扱わない旨が示されており、院外倉庫・卸在庫の扱いは要注意です(通知の書きぶりを前提に、自局の運用を点検してください)。

損益はどう変わる?月間処方箋枚数別シミュレーション(概算)

ここでは、1点=10円として概算し、旧「後発医薬品調剤体制加算」(21/28/30点)が算定できていた薬局が、改定後にどう変わるかを比較します。
前提:同一月の処方箋枚数を N 枚、旧後発加算をX点、改定後に新加算をY点とすると、月次差額(円)は
(Y − X)×10円×N です(他の改定項目は固定と仮定)。

ケースA:旧「加算2(28点)」→新「加算1(27点)」に着地(ほぼ横ばい)

  • 点数差:27 − 28 = ▲1点(▲10円/枚)
  • 月間1,500枚:▲10×1,500=▲15,000円
  • 月間3,000枚:▲10×3,000=▲30,000円

旧28点の薬局が、最低区分の27点に留まると「小幅減収」に見えます。ただし、これは新加算を確実に取れた場合です。

ケースB:旧「加算3(30点)」→新「加算2(59点)」へ上がる(増収余地)

  • 点数差:59 − 30 = +29点(+290円/枚)
  • 月間1,500枚:+290×1,500=+435,000円
  • 月間3,000枚:+290×3,000=+870,000円

上位区分の点数帯は大きく、供給対応体制の整備が投資回収に直結します。人件費・在庫回転・廃棄ロスとのトレードオフを含めて設計が必要です。

ケースC:旧後発加算は取れていたが、新加算の要件を満たせず「ゼロ」(要注意)

  • 点数差:0 − 28 = ▲28点(▲280円/枚)
  • 月間1,500枚:▲280×1,500=▲420,000円
  • 月間3,000枚:▲280×3,000=▲840,000円

実務的に最も痛いのはこのパターンです。後発率は高いが、分譲実績や備蓄、患者案内・照会の運用が弱い場合に起こり得ます。

ここがポイント
「上位区分で増収」よりも先に、「ゼロ落ちを防ぐ」ことが資金繰り面では優先です。新加算の届出可否を、月次の実績ではなく運用の仕組みで判定しておくと事故が減ります。

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移行対応の進め方(薬局の実務ステップ)

Step 1: 旧算定状況を棚卸しする(まずは点数の所在確認)

  • 直近12か月で「後発医薬品調剤体制加算(1/2/3)」を何枚に算定していたか
  • 旧「地域支援体制加算」の算定有無と区分
  • 月次の後発割合(新指標)推移

Step 2: 新加算の要件を証跡ベースで当てはめる

  • 分譲実績:相手先・品目・数量・日付の台帳化(同一グループ除外に注意)
  • 備蓄:対象薬のリスト、在庫基準、棚卸記録
  • 入手困難時の対応:患者案内の様式、処方医照会の記録フロー
  • 掲示・周知:院内掲示、Web掲載(求められる場合)

Step 3: 運用コストを見積もり、区分目標を決める

  • 追加在庫の資金拘束(運転資金)
  • 廃棄ロス増加の見込み
  • 分譲対応の人件費(記録・配送・調整)

点数が上がるほど「コストも上がる」設計になりやすいので、増収分と追加コストの差し引きで目標区分を置くのが現実的です。

よくある質問

Q: 後発医薬品調剤体制加算の廃止で、後発割合を上げる意味は薄れますか? ▼
薄れません。新加算でも後発医薬品の割合要件が含まれるため、後発率の維持は前提です。ただし、評価の中心が「供給対応体制」にも広がるため、後発率だけで点数が付く構造ではなくなります。
Q: 新加算は、すべての薬局が27点(加算1)を取れる設計ですか? ▼
いいえ。27点は最低区分ですが、安定供給に向けた体制(在庫管理・分譲実績・入手困難時対応など)が要件化される方向性が示されており、未整備だと算定できないリスクがあります。
Q: 「ゼロ落ち」を防ぐ最優先の実務は何ですか? ▼
分譲実績の作り方(同一グループ除外を含む)と、入手困難時の対応フロー(患者案内・処方医照会)の標準化です。後発率の集計よりも、運用の証跡が残る仕組み作りが重要になります。

まとめ

  • 後発医薬品調剤体制加算(21/28/30点)は廃止(削除)される
  • 地域支援体制加算は「地域支援・医薬品供給対応体制加算(27/59/67/37/59点)」へ再編され、点数幅が拡大
  • 収益は「小幅減」「大幅増」「ゼロ落ち」の振れ幅が出やすい
  • 新加算は後発率に加え、安定供給(在庫・分譲・対応フロー)の実務運用が鍵
  • まずはゼロ落ち防止を目的に、要件を証跡ベースで整備する

参照ソース

  • 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 議事次第: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
  • 別紙1-3 調剤報酬点数表(改正後・改正前対照): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655180.pdf
  • 総-1 個別改定項目について(医薬品の安定供給に資する体制の評価等): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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