
執筆者:辻 勝
会長税理士
薬局の流通改善要件2026|単品単価交渉・返品抑制の実務対応

流通改善要件とは何が変わるのか
結論から言うと、2026年改定では「薬局の調達・在庫・配送の振る舞い」が、評価(加算)を支える施設基準通知の中で明示され、仕入れ戦略が点数の前提条件になる方向です。対象は主に地域支援系の評価(地域支援・医薬品供給対応体制加算等)に紐づく形で整理されています。
現場感としては、「安く仕入れる」だけではなく、「安定供給を崩さない発注・在庫・返品の設計」が問われます。税理士法人 辻総合会計でも、薬局・クリニック顧問先から、薬価差益の圧縮局面での粗利管理と在庫回転の両立について相談が増えています。
施設基準通知で押さえる4本柱
今回の実務インパクトは、次の4領域に集約されます。
単品単価交渉が原則になる
施設基準通知の要素として、個々の医薬品の価値や流通コストを無視した一律値引き交渉を慎み、原則として全品目で単品単価交渉とする趣旨が示されています。
つまり、卸との交渉は「総額値引き」から「品目別の根拠ある価格形成」へ寄せる必要があります。
頻回配送・急配の抑制が要件化
卸への頻回配送、休日夜間配送、急配に係る過度な依頼を慎む方向が示されています。
これにより、欠品対応を配送回数で解決する運用は評価の観点から不利になり得ます。
返品抑制が要件化
温度管理が厳格な医薬品や、在庫調整目的の返品を慎む趣旨が示されています。
返品前提の過剰発注は、在庫リスクだけでなく、要件上のリスクにもなります。
重要供給確保医薬品の備蓄努力義務
重要供給確保医薬品のうち内用薬・外用薬について、概ね1か月分程度は備蓄するよう努める旨が示されています。
ここでいう備蓄は「薬局が現に在庫を保有していること」を指し、卸が代わりに在庫を確保しているだけでは備蓄に当たらない整理です。
加えて、他薬局への分譲実績を求める方向性も明示されています。
仕入れ戦略はどう組み替えるべきか
要件対応は「交渉」「発注」「在庫」「返品」の4点セットで設計します。ポイントは粗利最大化ではなく、安定供給・運用負荷・要件リスクの最小化です。
| 観点 | 従来の最適化 | 2026に向けた最適化 |
|---|---|---|
| 価格交渉 | 総額値引き・リベート重視 | 品目別根拠で単品単価交渉 |
| 発注 | 欠品回避で小口・高頻度 | 発注周期を設計し急配依存を低減 |
| 在庫 | 回転重視で薄め | 重要供給確保医薬品は別枠在庫 |
| 返品 | 在庫調整の安全弁 | 返品は例外運用へ(温度管理品は特に慎重) |
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実務での進め方
Step 1: 要件対象を棚卸しする
- 地域支援系の加算の算定有無(今後の取得方針含む)
- 重要供給確保医薬品の該当品と、自局での出庫頻度
- 急配・頻回配送の実態(週あたり回数、時間帯、理由)
Step 2: 卸との交渉を「単品単価」前提に切り替える
- 重点10〜30品目を選び、購入量・代替可能性・保管負荷を根拠に提示
- 総額値引き依存の設計から、品目別の利益管理へ移行
- 交渉記録(議事メモ)を残す(監査対応の説明力を上げる)
Step 3: 発注ルールを配送抑制に合わせて設計する
- 発注曜日・締め時間の統一、定期便中心へ寄せる
- 欠品時の代替提案フロー(患者説明、処方医照会)を標準化
- 急配は「条件付き例外」へ(理由コード化)
Step 4: 返品を例外処理にし、在庫を二層化する
- 重要供給確保医薬品:安全在庫(目安1か月)を別枠で管理
- 温度管理が厳格な薬:発注単位を最小化し、返品に依存しない
- 分譲(融通)の記録様式を整え、地域連携の実績を作る
よくある質問
Q: 単品単価交渉は、全品目で毎年やる必要がありますか?
Q: 備蓄は卸が持っていれば足りますか?
Q: 返品抑制は返品ゼロという意味ですか?
まとめ
- 2026年改定では、流通改善が施設基準通知の要素として示され、仕入れ・在庫運用が評価の前提になり得る
- 実務の柱は「単品単価交渉」「頻回配送・急配抑制」「返品抑制」「重要供給確保医薬品の備蓄」
- 重要供給確保医薬品の備蓄は、卸在庫では代替しにくく、自局在庫の設計が必要
- 交渉・発注・在庫・返品をセットで見直し、記録を残すと監査対応力が上がる
参照ソース
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第647回)議事次第: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70414.html
- 厚生労働省「総-1 個別改定項目について」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
- 厚生労働省「重要供給確保医薬品について」: https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001610291.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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