
執筆者:辻 勝
会長税理士
医療DX疑義解釈の確認点|税理士が解説

診療報酬改定の個別相談
この記事の内容を、自院の算定・収支に落とし込む相談をする
疑義解釈、届出期限、レセプト運用、収入見込みへの反映を税務・経営面から整理します。
令和8年度の医療DX改定とは
令和8年度診療報酬改定の医療DX対応は、従来の医療DX推進体制整備加算や医療情報取得加算から、電子的診療情報連携体制整備加算などの新しい評価へ移る点が重要です。クリニックにとって問題になるのは、オンライン資格確認を導入しているだけで足りるのか、電子処方箋や電子カルテ共有サービスまでどの範囲を確認すべきか、という実務判断です。
この記事は2026年5月10日時点で厚生労働省が公表している令和8年度診療報酬改定資料、疑義解釈資料その1からその4、訂正通知を中心に整理します。同日時点では疑義解釈資料その5も公表されているため、届出要否に関する補足として触れます。

疑義解釈その1からその4で確認すべきポイント
医療DXまわりでは、まず「制度名が変わったか」ではなく「届出、システム連携、患者対応、非常時対応の証跡が残せるか」を確認します。税理士法人 辻総合会計がクリニック経営支援の現場で確認する場合も、点数だけでなく、レセコン・電子カルテ・処方箋運用・院内掲示・ホームページ掲載を分けて見ます。
| 資料 | 公表日 | クリニック側の確認点 |
|---|---|---|
| 疑義解釈その1 | 令和8年3月23日 | 旧加算等を届け出ていても、電子的診療情報連携体制整備加算を算定する場合は改めて届出が必要と示された点 |
| 疑義解釈その2 | 令和8年4月1日 | 医療情報システムのバックアップ、複数方式、オフライン保管、契約書等での確認が論点になる点 |
| 疑義解釈その3 | 令和8年4月20日 | 医科・歯科・調剤の周辺論点を含め、自院の算定項目に関係するQ&Aがないか確認する資料 |
| 疑義解釈その4 | 令和8年4月21日 | 電子処方箋を発行する体制、電子処方箋管理サービスとの接続インターフェースの具体的意味が示された点 |
| 訂正通知 | 令和8年4月2日・5月1日 | 本文、様式、施設基準、官報掲載事項の訂正を反映して確認する点 |
とくに疑義解釈その1では、既に医療DX推進体制整備加算や診療録管理体制加算の施設基準を届け出ている医療機関でも、令和8年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定する場合は、改めて届出が必要と整理されています。旧制度の届出をそのまま流用できる前提で準備すると、月次請求や施設基準管理にズレが出る可能性があります。
オンライン資格確認で見るべき実務チェック
説明資料では、電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準として、オンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認を行う体制、診察室等で取得情報を閲覧または活用できる体制などが示されています。ここでの実務上のポイントは、カードリーダーの設置有無だけで判断しないことです。
医師または歯科医師が、オンライン資格確認等システムで取得した診療情報を診察室、手術室、処置室等で閲覧または活用できる体制を確認する必要があります。受付で資格確認ができても、診療場面で情報を見られない運用であれば、資料上の要件確認としては不十分になり得ます。
また、説明資料ではマイナ保険証利用率、マイナポータルの医療情報等に基づく健康管理相談、明細書発行や医療DX推進体制に関する院内掲示・ウェブサイト掲載も関連論点として示されています。原文上の数値や要件は、必ず該当する加算区分と最新の訂正通知を突き合わせてください。
電子処方箋で確認すべきポイント
疑義解釈その4では、電子処方箋を発行する体制または調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制について、院外処方と院内処方で整理されています。院外処方では、原則として電子処方箋を発行するか、引換番号が印字された紙の処方箋を発行し処方情報を登録することが示されています。院内処方では、医療機関内で調剤した薬剤の情報を電子処方箋管理サービスへ登録する体制が論点になります。
さらに、電子処方箋管理サービスとの接続インターフェースについては、運用開始日が登録され、厚生労働省ウェブサイトで電子処方箋対応施設として公表されている状態と示されています。単にベンダーから「対応予定」と聞いているだけではなく、運用開始日入力と公表状態まで確認することが実務上のチェックになります。
Step 1: 処方運用を分類する
院外処方、院内処方、院外・院内の併用を整理します。紙処方箋を残す場合も、引換番号の印字や処方情報登録の運用を確認します。
Step 2: ポータル登録を確認する
医療機関等向け総合ポータルサイトで運用開始日入力が必要かを確認します。ベンダー任せにせず、院内担当者、ベンダー、事務長で登録状況を共有します。
Step 3: 公表状態を確認する
厚生労働省ウェブサイト上で電子処方箋対応施設として公表されているかを確認します。スクリーンショットや確認日を残しておくと、後日の施設基準確認に役立ちます。
バックアップとサイバーセキュリティの注意点
疑義解釈その2では、電子的診療情報連携体制整備加算に関連して、非常時に備えた医療情報システムのバックアップが整理されています。対象として想定されているのは、非常時に継続して診療を行うため最低限必要なシステムであり、電子カルテシステム、オーダリングシステム、レセプト電算処理システムが例示されています。
複数方式のバックアップについては、HDDとRDX、クラウドサービスとNASなど、複数媒体で保存する考え方が示されています。クラウド利用時も、契約書等でネットワークから切り離したオフライン保管に関する取り扱いを確認するよう示されているため、バックアップの契約書確認は会計・総務側でも管理対象に入れるべきです。
クリニックの確認手順
令和8年度改定対応では、まず厚労省の説明資料で制度全体をつかみ、その後に疑義解釈と訂正通知で実務の細部を確認します。特に2026年5月10日時点では、疑義解釈その5も公表されており、再診料や外来診療料に係る追加届出の要否について補足が出ています。
電子的診療情報連携体制整備加算について、初診料の注に規定する届出を行っている場合、再診料や外来診療料の注に規定する施設基準について追加届出は不要とされています。ただし、これは疑義解釈その5の該当Q&Aに基づく整理であり、初回届出そのものが不要になるという意味ではありません。
院内では、次の順番で確認すると抜け漏れを減らせます。
- 令和8年6月1日以降に算定したい加算区分を決める
- 旧加算の届出状況と新加算の届出要否を分ける
- オンライン資格確認の閲覧・活用体制を診察室単位で確認する
- 電子処方箋の運用開始日登録と公表状態を確認する
- バックアップ、BCP、契約書、院内掲示、ウェブサイト掲載を一覧化する
よくある質問
Q: オンライン資格確認を導入済みなら、医療DX関係の新加算は自動的に算定できますか?
Q: 旧医療DX推進体制整備加算の届出があれば、新加算の届出は不要ですか?
Q: 電子処方箋はベンダー対応済みなら要件確認として十分ですか?
まとめ
- 令和8年度改定では、医療DX推進体制整備加算等から電子的診療情報連携体制整備加算などへの見直しが重要
- 疑義解釈その1では、新加算算定時の改めての届出が示されている
- オンライン資格確認は、導入済みかだけでなく診察室等での閲覧・活用体制を確認する
- 疑義解釈その4では、電子処方箋の体制と運用開始日登録・公表状態が具体化されている
- バックアップや契約書確認は、施設基準だけでなくクリニック経営上のリスク管理としても重要
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001678310.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001689076.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その4)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001694332.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その5)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698587.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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