
執筆者:辻 勝
会長税理士
診療報酬改定の届出確認|税理士が解説

診療報酬改定の個別相談
この記事の内容を、自院の算定・収支に落とし込む相談をする
疑義解釈、届出期限、レセプト運用、収入見込みへの反映を税務・経営面から整理します。
令和8年度診療報酬改定で確認すべき届出とは
令和8年度診療報酬改定では、クリニックにとって「新しい点数を算定できるか」だけでなく、施設基準の届出、ベースアップ評価料の再届出、物価対応料の算定開始時期を整理することが重要です。特にベースアップ評価料は、従前から算定していた医療機関でも、令和8年6月1日以降に引き続き算定する場合は改めて届出が必要とされています。この記事は2026年5月10日時点の厚生労働省資料をもとに、クリニック経営者・院長・事務長が確認すべきポイントを整理します。

施設基準・届出の確認方法
令和8年度改定の入口は、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」に掲載されている関係通知、施設基準届出チェックリスト、疑義解釈資料、訂正通知の確認です。施設基準は本文通知だけでなく、4月20日のチェックリスト、5月1日の一部訂正、医科診療所用の別添などをあわせて見る必要があります。
施設基準の確認は「算定したい点数」から逆算するのが実務上の近道です。まず、令和8年6月以降に算定予定の加算・評価料を一覧化し、それぞれについて「新規届出が必要か」「既届出で足りるか」「訂正後様式を使うか」を確認します。
| 確認項目 | 見る資料 | クリニックでの確認ポイント |
|---|---|---|
| 施設基準 | 基本診療料・特掲診療料の施設基準通知、届出チェックリスト | 人員、研修、掲示、体制、届出要否 |
| 疑義解釈 | その1〜その4、必要に応じてその5 | Q&Aで補足された対象者、時期、届出扱い |
| 訂正通知 | 4月2日、5月1日、疑義解釈その2の一部訂正 | 古いPDFや旧様式を使っていないか |
| ベースアップ評価料 | 特設ページ、届出周知、様式早見表 | 5月中の届出、様式95〜100、実績報告 |
| 物価対応料 | 説明資料「賃上げ・物価対応(物価対応)」 | 外来・在宅物価対応料などの算定時期 |
Step 1: 算定予定項目を洗い出す
6月以降に算定したい点数を、基本診療料、外来・在宅、在宅医療、処置・検査、ベースアップ評価料、物価対応料に分けて確認します。
Step 2: 施設基準チェックリストと通知を照合する
チェックリストだけで完結させず、該当する施設基準通知の本文、別添、訂正後資料を確認します。5月1日訂正後の資料が出ているものは、訂正後資料を優先します。
Step 3: 疑義解釈で例外・補足を確認する
疑義解釈資料その1〜その4には、施設基準、届出、ベースアップ評価料の対象職員、区分計算など、実務上迷いやすい点が含まれます。2026年5月10日時点では、その5も5月8日に公表されています。
ベースアップ評価料の届出ポイント
ベースアップ評価料は、令和8年度改定で特に注意が必要な領域です。厚生労働省の特設ページでは、医療機関ごとに届け出る評価料の種類や必要様式が異なるため、最初に種類・様式・スケジュールを確認するよう案内されています。
重要なのは、これまで届け出ていた医療機関も含め、全ての医療機関は5月中に届出が必要とされている点です。また、4月24日の周知では、令和8年度改定前に届出済みであっても、令和8年6月1日以降も算定する場合は、施設基準で求められる内容が変更されているため、改めて届出が必要とされています。
届出方法も確認が必要です。厚生労働省の特設ページでは、ベースアップ評価料等の届出は、所在地を管轄する地方厚生局都道府県事務所ごとに設定された専用メールアドレスへExcelファイルを提出する方法が示されています。やむを得ない場合は書面提出も案内されています。
疑義解釈その2では、令和8年3月31日時点で評価料を算定している必要があるため、同年4月以降に算定を開始する医療機関は「令和8年3月31日時点で届け出ていた」医療機関には含まれないと整理されています。既存届出の有無だけでなく、算定開始時期の確認が必要です。
ベースアップ評価料の対象職員と区分変更
令和8年度の説明資料では、ベースアップ評価料の対象職員が拡大され、事務職員、40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師も対象とする一方、経営者や役員等は除くとされています。疑義解釈その4でも、保険医療機関の開設者・管理者、法人の代表者・役員はいずれも対象職員に含まれないと確認されています。
また、疑義解釈その3では、年度途中で雇用または退職した対象職員は、雇用した月以降または退職した月までは対象職員として取り扱って差し支えないとされています。対象職員数に1割以上の変動があり、区分を再計算すると区分変動がある場合は、算出月内に届出を行い、翌月から変更後区分に基づく点数を算定する扱いです。
給与台帳・雇用契約・勤務実態を届出前にそろえることが、税務・労務・診療報酬のズレを防ぐ実務上のポイントです。税理士法人 辻総合会計でも、クリニックの届出確認では、算定点数だけでなく、賃金改善の原資、給与改定時期、賞与・法定福利費の扱いをあわせて確認する流れが重要だと考えています。
物価対応料とベースアップ評価料の違い
物価対応料は、令和8年度および令和9年度の物価上昇に段階的に対応するため、基本診療料・調剤基本料等の算定にあわせて算定可能な加算として新設されるものです。外来・在宅物価対応料は、令和8年では初診時2点、再診時等2点、訪問診療時3点、令和9年ではそれぞれ4点、4点、6点と説明資料に示されています。
一方、ベースアップ評価料は、対象職員の賃上げを支援する評価です。説明資料では、医療機関等の対象職員について、令和8年度プラス3.2%、令和9年度プラス3.2%、看護補助者・事務職員はプラス5.7%のベースアップ実現を支援する趣旨が示されています。
| 項目 | ベースアップ評価料 | 物価対応料 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 医療機関等の対象職員の賃上げ支援 | 物件費等の高騰への段階的対応 |
| 確認する資料 | ベースアップ特設ページ、届出様式、疑義解釈 | 物価対応の説明資料、算定要件 |
| 届出の注意 | 5月中の届出、様式選択、対象職員確認 | 算定要件と点数の確認 |
| 実務上の管理 | 給与改定、実績報告、中間報告 | レセプト算定、患者説明、院内周知 |
両者は同じ「賃上げ・物価対応」の文脈にありますが、趣旨と管理資料が異なります。ベースアップ評価料は給与・人件費管理、物価対応料は算定・レセプト確認を中心に分けて管理すると整理しやすくなります。
疑義解釈その1〜その4で見る注意点
疑義解釈その1では、令和8年3月31日時点で評価料を届け出ていた医療機関の扱いが示されました。その2では、派遣職員について一定の要件を満たす場合は対象とできる一方、業務委託職員は対象外とされています。その3では、法定福利費の範囲、対象職員の増減、40歳到達時の扱いなど、給与実務に直結する論点が整理されています。
その4では、開設者・管理者・法人代表者・役員が対象職員に含まれないことが確認されています。院長が法人の代表者である医療法人、管理者を兼ねる個人開業医では、対象職員の範囲を誤って広げないよう注意が必要です。
なお、2026年5月10日時点では疑義解釈その5も公表済みです。その5では、法人内の同一給与体系に基づく複数医療機関の通算、継続的な賃上げの施設基準、6月算定開始時の8月中間報告の対象期間などが示されています。分院展開している医療法人は、法人通算できる項目と医療機関ごとに判定する項目を分ける必要があります。
よくある質問
Q: 令和8年度改定前からベースアップ評価料を届け出ていれば、再届出は不要ですか?
Q: 物価対応料はベースアップ評価料と同じ制度ですか?
Q: ベースアップ評価料の対象職員に院長や法人役員は含まれますか?
まとめ
- 令和8年度診療報酬改定では、施設基準通知、届出チェックリスト、疑義解釈、訂正通知をセットで確認する
- ベースアップ評価料は、従前から算定していた医療機関も含め、5月中の届出が重要な確認事項となる
- 対象職員、派遣職員、役員・管理者、年度途中の入退職者は、疑義解釈で扱いを確認する
- 物価対応料は、ベースアップ評価料とは目的が異なるため、レセプト算定と給与管理を分けて管理する
- 2026年5月10日時点では疑義解釈その5も公表済みであり、分院展開や中間報告の確認に有用
参照ソース
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001678310.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001689076.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その3)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001693874.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その4)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001694332.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その5)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698587.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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