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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.13
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

生活習慣病管理料2026の収益影響|充実管理加算30点の算定戦略

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生活習慣病管理料2026の収益影響|充実管理加算30点の算定戦略

生活習慣病管理料Ⅲは新設?まず結論

結論から言うと、少なくとも厚労省が公表している2026改定案の医科点数表(傍線付き)では「生活習慣病管理料(Ⅲ)」という区分は確認できず、収益インパクトの中心は 生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の運用 と、充実管理加算(最大30点)の新設(案)です。

内科クリニックにとっての問題は、「特定疾患療養管理料」中心の算定設計から、生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)へ寄せたときに、包括(まるめ)で減る点数と、加算で増える点数の差が院内で見えにくいことではないでしょうか。ここでは税理士法人 辻総合会計の実務目線で、算定戦略と数字の置き方をまとめます。


生活習慣病管理料2026改定のポイント

生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の点数(改定案)

改定案の医科点数表では、生活習慣病管理料(Ⅰ)は主病ごとに点数が異なり、(Ⅱ)は一律点数です。

  • 生活習慣病管理料(Ⅰ)
    • 脂質異常症:610点
    • 高血圧症:660点
    • 糖尿病:760点
  • 生活習慣病管理料(Ⅱ):333点

ここに、施設基準等に応じて 充実管理加算(1〜3) を上乗せできる設計(案)が示されています。充実管理加算1は30点で、脂質異常症・高血圧症・糖尿病のいずれも設定があります。

充実管理加算(最大30点)の位置づけ

充実管理加算は「(Ⅰ)(Ⅱ)に追加できる上乗せ」ですが、加算を取りにいくほど、当然ながら 運用(計画・記録・実績・体制) が必要になります。
この加算を「取りやすい30点」と捉えるより、単価の底上げと、標準化の投資回収 と捉えるのが実務的です。

ここがポイント
生活習慣病管理料(Ⅰ)は、医学管理等・検査・注射・病理診断などの費用が「含まれる」とされる範囲が大きい(包括が強い)点が重要です。単純に管理料の点数が高いから得、とは限りません。院内の検査運用(頻度・項目)次第で見かけの増点が相殺されます。

特定疾患療養管理料からの移行で何が変わる?

まず比較:管理料だけ見た場合の「見かけの差」

ここでは「以前は特定疾患療養管理料(診療所225点)を月2回まで算定できた」という前提で、管理料だけを比較します(1点=10円換算は後段)。

  • 特定疾患療養管理料(診療所):225点(月2回まで)
  • 生活習慣病管理料(Ⅰ):610/660/760点(月1回)
  • 生活習慣病管理料(Ⅱ):333点(月1回)
  • 充実管理加算:最大30点((Ⅰ)(Ⅱ)に上乗せ)

この前提で月あたりの管理料だけを比較すると、例えば脂質異常症では以下のイメージです。

←横にスクロールできます→
パターン月の管理料点数(例)コメント
特定疾患療養管理料225点×2回450点「月2回」を使い切ると点数は積み上がる
生活習慣病管理料(Ⅱ)333点333点管理料だけ見ると減りやすい
(Ⅱ)333点+充実管理加算1(30点)363点加算で一部補填
生活習慣病管理料(Ⅰ)610点610点管理料は高いが包括で別項目が減る可能性
(Ⅰ)610点+充実管理加算1(30点)640点高単価ゾーンだが運用負荷も上がる

「(Ⅰ)か(Ⅱ)か」は検査の出し方で決まる

生活習慣病管理料(Ⅰ)は包括範囲が広い一方、(Ⅱ)は(Ⅰ)ほど包括が強くない設計です。
このため、院内の実態としては次のように考えるのが安全です。

  • 検査・注射をルーチンで組む内科:
    (Ⅰ)を選ぶと「包括に飲まれて」別算定が減り、管理料の増点が相殺されやすい。逆に、検査を適正化できているなら(Ⅰ)で伸びる余地。
  • 検査は必要時のみの内科:
    (Ⅱ)+充実管理加算で「運用を軽くしつつ単価だけ上げる」設計が取りやすい。

充実管理加算30点を取りにいく算定戦略

ここからが実務の核心です。加算は点数ではなく、設計で取ります。

戦略1:加算1(30点)を標準パッケージにする

充実管理加算は1〜3がありますが、収益影響が最も大きいのは加算1(30点)です。
加算2(20点)、加算3(10点)でもよいのですが、運用コスト(記録・実績・体制)が一定かかる以上、まずは 加算1を標準化し、難しい場合に2や3へ落とす設計が合理的です。

戦略2:主病の決め方をカルテ運用で固定する

生活習慣病管理料は「主病」が前提になります。主病が揺れると、算定の一貫性が崩れ、監査対応も弱くなります。
運用としては、以下を院内ルールに落とし込みます。

  • 「脂質・血圧・糖尿病」いずれを主病とするかの判定ルール
  • 主病の変更条件(例:薬剤変更、合併症進展、検査指標の閾値など)
  • 生活指導・治療計画のテンプレ(スタッフが再現できる形)

戦略3:年1回の連携系加算を取りこぼさない

改定案では、糖尿病について眼科・歯科との連携を評価する加算(年1回)が示されています。
生活習慣病管理料に寄せるなら、「年1回のイベント(紹介・受診確認)」をカレンダー化して、取り漏れを防ぎます。ここは単価の底上げというより、本来やっている連携を請求に反映する領域です。

ここがポイント
「取れる加算」より「取れる体制」を先に作る方が、最終的な収益は安定します。特に生活習慣病管理は、担当者が変わっても回る標準化(テンプレ・チェックリスト)が重要です。

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患者数別シミュレーション:充実管理加算30点の増収幅

ここでは分かりやすく、充実管理加算1(30点)を月1回算定できる患者数を仮定して増収幅を出します。
医科は原則1点=10円なので、30点は 300円/人・月 の上乗せです(保険請求ベース)。

月次増収(加算30点のみ)

←横にスクロールできます→
対象患者数(加算30点を算定)月の増収(30点×10円×人数)年間増収
100人30,000円360,000円
300人90,000円1,080,000円
500人150,000円1,800,000円

どのくらいの患者が対象になり得る?

実務では「生活習慣病フォロー患者のうち、管理料を算定している層」が母集団です。
そこから、

  • 計画・記録が整う
  • 施設基準の届出・体制が整う
  • 主病判定がぶれない

という条件を満たした患者数が、加算30点の対象になります。


実務の進め方:算定戦略を院内で実装する手順

Step 1: 現状の管理料・検査の月次構造を棚卸しする

  • 特定疾患療養管理料の算定回数(患者あたり/月)
  • 生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の算定状況
  • 同月の検査・注射・病理の実施状況(包括で消える可能性のある部分)

Step 2: (Ⅰ)と(Ⅱ)の向いている患者層を分類する

  • 検査頻度が高い層
  • 内服調整・生活指導中心の層
  • 合併症管理(眼科・歯科連携)を回す必要がある層

Step 3: 充実管理加算1(30点)の要件を満たす運用をテンプレ化する

  • 生活指導・治療計画のテンプレ
  • 診療録の記載ルール
  • 施設基準の届出・データ提出などの体制整備(該当する場合)

Step 4: 1か月テスト→3か月で定着→半年で最適化
最初から全患者に広げるのではなく、対象を絞って運用を固める方が、監査対応も含めて安全です。


よくある質問

Q: 生活習慣病管理料(Ⅲ)は本当に新設されるのですか? ▼
公表されている改定案の医科点数表(傍線部分は改正部分)では、生活習慣病管理料は(Ⅰ)(Ⅱ)が確認でき、(Ⅲ)の区分は読み取れません。現時点では(Ⅰ)(Ⅱ)+充実管理加算等を前提に設計するのが安全です。
Q: 充実管理加算30点は、誰でもすぐ取れますか? ▼
点数自体は30点でも、施設基準の届出や運用(計画・記録・実績)が前提になります。院内で標準化できないと、算定の継続性が落ちやすいので、まずは対象患者を絞って運用を固める方法が現実的です。
Q: (Ⅰ)にすると必ず増収になりますか? ▼
いいえ。(Ⅰ)は管理料の点数が高い一方、検査等が包括に含まれる範囲が広く、別算定が減る可能性があります。院内の検査運用によって純増・純減が逆転し得るため、棚卸しと試算が必須です。

まとめ

  • 2026改定案では生活習慣病管理料は(Ⅰ)(Ⅱ)を前提に設計し、充実管理加算(最大30点)の上乗せが収益影響の中心になる
  • 加算30点は300円/人・月の増収で、300人なら年約108万円の上振れ余地
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)の選択は「検査の出し方(包括で消える部分)」で純増・純減が変わる
  • 加算は点数を追うより体制と標準化を作る方が長期的に安定する
  • 実装は、棚卸し→患者層分類→テンプレ化→段階導入が安全

参照ソース

  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第647回)議事次第」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00286.html
  • 別紙1-1 医科診療報酬点数表(傍線部分は改正部分): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655178.pdf
  • 総-1 個別改定項目について(改定案の考え方・要件等): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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