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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.14
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

選定療養の窓口対応はどう変わる?先発品希望と会計処理|税理士が解説

8分で読めます
選定療養の窓口対応はどう変わる?先発品希望と会計処理|税理士が解説

選定療養の対象拡大で窓口はどう変わる?

選定療養(長期収載品の「特別の料金」)が広がると、先発品を希望する患者さんの自己負担が増え、窓口では「なぜ追加料金が出るのか」「保険で払えないのか」という説明と会計処理が課題になります。特にクリニック・薬局にとっては、説明の標準化と会計(課税売上)区分が実務の核心です。

2026改定(中医協資料ベース)では、患者希望で長期収載品を使用する場合の負担水準を、現行の「価格差の4分の1相当」から「価格差の2分の1相当」へ引き上げる方針が示されています。つまり、同じ「先発品希望」でも、追加負担が概ね2倍方向に動くイメージです。

選定療養(長期収載品)とは?

「選定療養」と「特別の料金」の関係

長期収載品(後発医薬品がある先発医薬品)について、患者さんが先発品を希望する場合に、通常の1〜3割負担とは別に「特別の料金」を支払う仕組みが、厚労省ページで整理されています。ここでの「特別の料金」は、先発と後発の価格差に一定割合を掛けて算定します。

2024運用の基本(現行の考え方)

厚労省の患者向け説明では、特別の料金は「先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当」とされています。また、後発医薬品が複数ある場合は「最も高い後発医薬品」との価格差で計算する扱いも明記されています。加えて、特別の料金は課税対象(消費税加算)である点が、窓口・会計の重要論点です。

ここがポイント
特別の料金は「課税対象」で、消費税分を加えて支払う旨が厚労省ページに明記されています。医療の保険部分(診療・調剤の費用)と同じ感覚で処理すると、会計区分を誤りやすいので注意してください。

2026改定で何が変わる?(負担増と周辺制度の動き)

患者負担:価格差の「1/4→1/2」へ

中医協資料では、患者希望で長期収載品を使用する場合の患者負担を「価格差の4分の1相当」から「価格差の2分の1相当」に引き上げる案が示されています。これにより、同じ処方内容でも先発品希望時の追加負担が増え、窓口説明の難度が上がります。

併せて押さえる:一般名処方加算の引下げ

同じ「後発品使用促進」領域で、処方箋料における一般名処方加算が見直され、加算1が10点→8点、加算2が8点→6点へ引き下げられる案が示されています。院外処方の現場では、患者説明の流れ(一般名→薬局で選択→先発希望なら特別料金)を、より丁寧に設計する必要があります。

窓口トラブルを減らす運用設計(クリニック・薬局共通)

よくあるトラブルの火種

  • 「保険診療なのに、なぜ追加で払うのか」
  • 「ジェネリックは不安。先発にしたいが高いのは困る」
  • 「受付で初めて聞いた。事前に説明がなかった」
  • 「消費税が乗るのはおかしいのでは」

上記は、制度の是非というよりも、情報提供のタイミングと同意(選択)プロセスの設計で多くが軽減できます。

現場で効く「説明の型」

  • 先に結論:先発希望の場合は、保険の自己負担とは別に特別の料金が発生する
  • 理由:後発品の使用促進と医薬品供給の安定のための制度
  • 例示:価格差×一定割合(現行1/4、改定で1/2方向)
  • 選択肢提示:後発品/先発品(追加負担)/医師が医療上必要と判断するケース(該当可否は個別)
  • 最後に確認:患者の意思(希望)を明確化し、受付・薬局でブレない記録にする

実務の手順(方法・手順の整理)

クリニック側:処方時の流れ(院外処方を想定)

Step 1: 処方方針を決める(一般名か銘柄か)
後発品の使用促進の観点では一般名処方が基本線になります。患者さんが銘柄(先発)に強い希望を持つ場合、薬局での説明・選定療養の可能性を見据えて、事前に一言添えるだけでもクレームは減ります。

Step 2: 患者への「想定追加負担」を短く伝える
「先発品を希望される場合、特別の料金がかかることがあります」と先に伝え、薬局で詳細計算される流れを説明します。

Step 3: 記録を残す(トラブル予防)
カルテや連絡票に「先発希望あり/なし」「説明済み」など、最低限のメモを残します。受付が聞かれるのは「説明したかどうか」なので、言った言わないを避ける設計が重要です。

薬局側:調剤・会計の流れ

Step 1: 対象該当の有無を確認(対象医薬品リスト等)
厚労省は、選定療養の対象医薬品リストや価格比較リストを公表し、更新も行っています。まず「対象かどうか」を仕組みで判定できる状態にします。

Step 2: 先発希望の確認と説明(追加負担・課税)
追加負担の根拠(価格差×割合)と、「特別の料金は課税対象で消費税が加算される」点を、短い定型文で説明します。

Step 3: 会計処理(保険分と特別料金を分ける)
保険請求分(非課税取引として扱われる領域)と、特別の料金(課税)を分けてレジ・会計ソフトへ連携します。レシート・領収書の表示科目も、患者さんの納得感に影響します。

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会計処理の注意点(消費税・売上区分・レセプトとの整合)

1) 消費税:特別の料金は課税

厚労省ページでは、特別の料金が課税対象で消費税分を加算する旨が明記されています。現場では「医療=非課税」という先入観が強いため、会計科目・税区分の誤りが起きやすい領域です。

一方で、国税庁の消費税基本通達では、健康保険法等に基づく保険外併用療養費に係る療養が非課税となる旨も整理されています。したがって実務では、少なくとも「保険部分(診療・調剤)」と「特別の料金」を混在させず、証憑・会計区分を明確にすることが重要です。

2) 売上計上:日次締めでズレを出さない

  • 窓口現金・キャッシュレスの入金データと、保険請求(レセプト)を同じ売上として扱わない
  • 特別の料金は「課税売上」として、日次・月次で集計できる科目設計にする
  • 税理士法人側では、月次試算表で「課税売上の増減要因」として把握できるよう、補助科目や部門を切るのが安全です

3) 監査・指導対策:説明記録と掲示物

厚労省は施設内掲示ポスターや案内チラシ等のツールを提供しています。掲示・配布の運用を整えることは、患者対応だけでなく、説明責任の観点でも合理的です。

比較表:2024運用と2026改定案のポイント

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項目2024運用(現行の基本)2026改定案(方向性)
先発希望時の追加負担価格差の4分の1相当価格差の2分の1相当へ引上げ
計算の基準(後発複数)最も高い後発品との価格差同様の考え方を前提に運用が必要
消費税特別の料金は課税(消費税加算)同様に課税区分の厳格運用が必要
処方側インセンティブ一般名処方加算(10点/8点)一般名処方加算(8点/6点)へ引下げ

よくある質問

Q: 先発品希望の「特別の料金」は、医療費控除や領収書の扱いは変わりますか? ▼
ここでの論点は主に「保険分と特別の料金を分けて表示・計上できているか」です。医療費控除の可否は個別事情が絡むため、領収書の内訳が分かる形で保管する運用を推奨します(最終判断は税務上の取扱い確認が必要です)。
Q: 受付で必ず説明しないといけませんか?薬局だけで足りますか? ▼
実務上は「最初に不満が出る場所」での一次説明が効果的です。クリニックは「先発希望だと追加料金の可能性」、薬局は「金額と課税を含む確定説明」という役割分担にするとトラブルが減ります。
Q: 特別の料金に消費税がかかるのは本当ですか? ▼
厚労省が、特別の料金は課税対象で消費税分を加えて支払う旨を明記しています。会計処理では、課税売上として区分し、保険分と混ぜない設計が重要です。
Q: 対象の薬は固定ですか? ▼
厚労省は対象医薬品リストや価格比較リストを公表しており、更新も行われています。運用では、最新リストを参照できる体制(マスタ更新、掲示物更新)を前提にしてください。

まとめ

  • 選定療養(長期収載品)の拡大は、先発品希望患者への説明と同意の設計がカギになる
  • 2026改定案では、追加負担が「価格差の1/4相当→1/2相当」へ引上げ方向で、窓口負担感が増す
  • 一般名処方加算の引下げも同時に動くため、処方〜調剤〜会計の動線を再設計する
  • 特別の料金は課税対象のため、保険分と分けた売上・税区分処理を徹底する
  • 掲示物・定型説明・記録(説明済みメモ)で、言った言わないのトラブルを予防する

参照ソース

  • 厚生労働省(中医協 総-1 個別改定項目について): https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
  • 厚生労働省(後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について): https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html
  • 国税庁(消費税基本通達 第6節 医療の給付等関係): https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/06/06.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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