
執筆者:辻 勝
会長税理士
税務調査後の修正申告|クリニックの加算税・延滞税計算を税理士が解説

税務調査後の修正申告とは|まず結論
税務調査後の修正申告とは、調査で誤り(売上計上漏れ、経費否認など)を指摘された結果、申告税額が不足していた場合に、納税者側が申告を訂正する手続です。問題は「いつ修正申告するか」で、タイミングにより過少申告加算税などのペナルティが変わり、さらに納付日まで延滞税が発生します。クリニックは自費・現金・返金などが論点化しやすく、調査後の判断を誤ると、金額と時間のロスが大きくなりがちです。税理士法人 辻総合会計では、医療機関の税務調査対応を長年支援してきた経験を踏まえ、実務で迷いやすいポイントに絞って解説します。
修正申告が必要になる代表的な指摘事項
税務調査で修正申告に至る典型パターンは、次のような「売上の認定」「経費の否認」「期ズレの修正」です。
- 自費診療の入金管理(現金・クレカ・振込)の突合不足により、売上計上漏れが疑われた
- 返金(キャンセル)処理の根拠資料が弱く、売上減額が否認された
- 医薬品・消耗品の棚卸や期末未払の処理が不十分で、利益が過少となっていた
- 院長個人支出の混在(家事関連費、プライベート利用)があり、必要経費として認められない部分が出た
- 源泉税の徴収・納付漏れ(非常勤医師、講師謝金など)
修正申告と更正の請求の違い
同じ「訂正」でも、税額が増えるのか減るのかで手続が異なります。
- 税額が少な過ぎた(納付不足)
→ 修正申告で訂正します(原則、早いほどペナルティが軽い)。国税庁のタックスアンサーでも、調査の事前通知前の自主的な修正申告なら過少申告加算税がかからない旨が示されています。 - 税額を多く納め過ぎた(還付が少な過ぎた)
→ 更正の請求で取り戻すルートになります。請求できる期間は原則として法定申告期限から5年です。
※調査対応の現場では「修正申告で済む論点か」「主張すべき論点か(更正・不服申立の検討含む)」の切り分けが重要です。特にクリニックは“慣行処理”が争点化しやすいため、根拠資料の強度を基準に判断します。
修正申告の手続き|調査後にやること(ステップ)
調査で指摘を受けた後、実務での進め方は概ね次の順番です。
Step 1: 指摘事項を論点別に分解する
「売上」「経費」「期ズレ」「源泉」「棚卸」などに分け、影響する税目(所得税・法人税・消費税・源泉)を特定します。
Step 2: 証憑・根拠の再整理(反証可能性の確認)
レセコン・予約/会計システム、日計表、現金出納、クレカ明細、返金同意書、領収書控などを突合します。ここで“主張できる”範囲が固まります。
Step 3: 修正額(本税)を確定し、加算税区分を判定する
いつ修正申告するか(事前通知前か後か、調査での更正予知の有無)で、加算税率が変わるため、タイミングを含めて設計します。
Step 4: 修正申告書を作成し、提出と同時に納付計画を確定する
修正申告で「新たに納める税金」の納期限は、原則として“修正申告書を提出する日”と整理されます。実務上は提出日と納付日をできるだけ近づけ、延滞税の増加を抑えます。
Step 5: 支払後のエビデンス化(再発防止までがセット)
納付書控・e-Tax受信通知、修正理由メモ、再発防止(現金突合手順、返金ルール、権限設計)まで整備すると、翌期以降の調査耐性が上がります。
加算税の種類と計算|「いつ・何を」誤ったかで変わる
税務調査後に問題となるのは、主に「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」です。ポイントは、調査の事前通知(調査通知)後の修正申告かどうかで、過少申告加算税が「5%(一部10%)」になる場面があることです。
| 区分 | 典型ケース | 主な割合(概要) | クリニックでの起点 |
|---|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内申告はしたが税額が不足 | 調査通知後・更正予知前の修正申告:5%(一定超過部分は10%)/更正予知後等:10%(一定超過部分は15%) | 売上計上漏れ、経費否認、期ズレ |
| 無申告加算税 | そもそも期限内申告がない | 調査通知後に提出等:10%(超過部分15%)など | 申告失念、体制不備 |
| 重加算税 | 仮装・隠蔽がある(悪質) | 過少申告に代えて35%等、無申告に代えて40%等(加重措置あり) | 現金売上除外、二重帳簿など |
※上表は「代表的な枠組み」を示したもので、金額の区分(例:50万円超部分)や調査局面(更正予知の有無)で細部が変わります。
例:過少申告加算税(調査通知後・更正予知前)の計算イメージ
前提(例)
- 当初申告で納付した税額:20万円
- 調査後の追加納付税額(不足分):100万円
- ケース:調査通知後に修正申告、ただし更正を予知する前に提出
この場合、追加納付税額100万円に対して一律ではなく、一定の区分計算になります(「当初申告税額」と「50万円」のいずれか多い金額を超える部分で割合が上がる整理)。
- 基準額:max(当初20万円、50万円)=50万円
- 50万円まで:100万円×対象部分50万円×5%=2.5万円
- 50万円超の部分:残り50万円×10%=5万円
- 合計:7.5万円(イメージ)
この「5%/10%」という考え方は、国税庁資料で整理されています。
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延滞税の計算|日数と年率(2区分)で決まる
延滞税は、「納期限の翌日から納付日まで」の日数に応じて課される利息相当です。ポイントは、納期限から2か月を境に年率が変わることです。国税庁の公表では、令和8年(2026年)は、納期限から2か月まで年2.8%、2か月経過後は年9.1%が示されています(一定の仕組みに基づく特例)。
計算の基本式(概算)
- 延滞税 = 本税(追加で納める税金)× 年率 × 日数 ÷ 365
- 年率は「納期限の翌日から2か月まで」と「2か月経過後」で分けて計算
例:令和8年の年率で概算する
前提(例)
- 追加納付税額:100万円
- 納期限の翌日から納付まで:120日
- うち最初の2か月相当:60日、残り60日(概算)
計算(概算)
- 前半(60日):100万円 × 2.8% × 60/365 ≒ 4,603円
- 後半(60日):100万円 × 9.1% × 60/365 ≒ 14,959円
- 合計:約19,562円
実際は「2か月を経過する日」の数え方や端数処理があるため、最終額は納付書の計算等で確認しますが、概算でも“納付が遅れるほど急に増える”構造は把握できます。
クリニックが修正申告で失敗しやすい注意点
- 「事実認定」と「制度論点」を混ぜてしまう
例:返金は実在するのに、根拠資料が弱い。まず事実(証憑)を固め、次に会計処理・税務処理を整理します。 - 売上と入金の突合が弱い(現金・自費・クレカ)
日計表、レジ締め、クレカ精算、通帳入金を“同一キー(日付・患者番号・施術メニュー等)”で突合できる設計が重要です。 - 調査の局面を誤認し、加算税が増えるタイミングで出してしまう
調査通知の有無、更正予知の評価は実務上の争点になり得ます。連絡経緯(電話・文書)や調査の進行状況を記録し、判断材料を残します。 - 追加納付だけで終わり、再発防止が形骸化する
次回調査で「同じ論点」が出ると、説明コストが増えます。運用手順(誰が、いつ、何を突合するか)まで落とし込みましょう。
よくある質問
Q: 税務調査の事前通知の前に修正申告すれば、加算税は必ずゼロですか?
A:
一般論として、事前通知前の自主的な修正申告であれば過少申告加算税がかからない整理が示されています。ただし、状況(更正を予知していたと評価されるか等)で扱いが変わり得るため、連絡経緯と提出タイミングをセットで検討してください。Q: 修正申告を出すとき、納税はいつまでに必要ですか?
A:
国税庁の案内では、修正申告で新たに納める税金の納期限は「修正申告書を提出する日」と整理されています。延滞税は納付日まで発生するため、提出と納付を近づけるのが実務上の基本です。Q: 延滞税の年率は毎年同じですか?
A:
同じではありません。国税庁は年ごとの割合(2か月まで/2か月超)を公表しており、令和8年(2026年)の割合も示されています。計算時点の年率を必ず確認してください。Q: クリニックの自費売上が指摘されやすいのはなぜですか?
A:
収入の形(現金・クレカ・振込)と会計処理(返金・値引・前受等)が複雑になりやすく、売上計上根拠の説明が弱いと「推計」や「認定」につながりやすいためです。運用(突合・証憑整備)を先に強くすることが有効です。まとめ
- 税務調査後の修正申告は「不足税額の訂正」で、タイミングにより加算税が変わる
- 過少申告加算税は、調査通知後の修正申告で5%(一定超過部分10%)等の区分計算がある
- 延滞税は「日数×年率」で増える。令和8年(2026年)は2区分で年2.8%/9.1%が公表されている
- クリニックは自費・現金・返金の証憑設計が鍵。事実(証憑)→税務(論点)の順で組み立てる
- 個別事情で最適解は変わるため、調査局面の整理と数値試算は専門家と並走するのが安全
参照ソース
- 国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
- 国税庁「延滞税の割合」: https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
- 国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし(PDF)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/kasan.pdf
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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