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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続人行方不明の手続き|不在者財産管理人を税理士が解説

9分で読めます
相続人行方不明の手続き|不在者財産管理人を税理士が解説

行方不明の相続人がいる場合は「不在者財産管理人」で遺産分割を進めます

相続人と連絡が取れず遺産分割協議が止まっている場合、原則として他の相続人だけで協議を成立させることはできません。そこで実務上の解決策になるのが、家庭裁判所に申立てて不在者財産管理人を選任してもらい、不在者(行方不明者)に代わって手続きを進める方法です。
問題になるのは「誰にとって何が問題か」という点で、残された相続人にとっては遺産分割ができず不動産の売却・名義変更・預金解約が止まり、固定資産税や空き家管理などの負担だけが継続しがちです。

相続人が行方不明とは?不在者財産管理人が必要になる典型パターン

「相続人が行方不明」の判断目安

行方不明といっても、ニュースのような失踪事件に限りません。相続実務では次のような状態が多いです。

  • 戸籍上は相続人だが、住所不明で郵送が届かない
  • 昔から疎遠で電話・SNSもつながらない
  • 海外渡航後に音信不通になった
  • 住民票上の住所に行っても居住実態がない

裁判所の手続上は「従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)」で、かつ財産管理人がいない場合に申立てが想定されています。選任された管理人は財産の管理・保存を行い、必要に応じて家庭裁判所の許可を得て遺産分割等も行える、という整理です。

先に確認したい「代替策」

行方不明と見えても、実は以下で解決することがあります。

  • 戸籍附票で最新住所が判明し、手紙で連絡が取れた
  • 弁護士・司法書士の職務上請求で所在調査が進む(可否は個別判断)
  • 相続人本人が既に亡くなっており、代襲相続に切り替わる

ただし、一定の調査を尽くしても連絡できない場合は、不在者財産管理人の申立てが現実的なルートになります。

不在者財産管理人の申立て手順と必要書類

裁判所の案内では、申立人は利害関係人(配偶者・相続人・債権者等)または検察官、申立先は不在者の従来の住所地(居所地)の家庭裁判所とされています。
当法人(税理士法人 辻総合会計)では、相続税申告だけでなく、遺産分割が止まることで納税資金計画が崩れるケースを多数見てきました。早めに法的な「前に進む仕組み」を作るのがポイントです。

Step 1: 相続関係と「不在」を固める

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、相続人を確定
  • 不在者(行方不明相続人)の戸籍謄本・戸籍附票を取得
  • 送付不能の返戻封筒、現地訪問メモ、関係者の陳述書など「不在の事実」を裏付ける資料を準備

Step 2: 財産の範囲を整理し、財産資料を集める

  • 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書
  • 預金通帳写し、残高証明、有価証券の残高が分かる資料等
    裁判所の標準的添付書類として、財産資料の例示があります。

Step 3: 候補者(管理人)を立て、申立書を作成

  • 候補者は親族、専門職(弁護士・司法書士等)などが実務上多い
  • 利益相反や業務負担の観点から、専門職が選ばれるケースもあります

Step 4: 費用を納付して家庭裁判所へ申立て

  • 申立手数料:収入印紙800円分(裁判所案内)
  • 郵便切手:裁判所ごとに異なる
  • 事案により、管理人の報酬等に備える予納金を求められることがあります(財産内容によっては不足リスクがあるため)。

Step 5: 選任後、管理・報告と「権限外行為許可」を取りに行く 管理人は原則として管理・保存行為が中心です。遺産分割協議への参加や不動産処分などは、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)が必要になるのが通常です。

ここがポイント
遺産分割の場面では「不在者財産管理人の選任」だけで完結しないことが多く、実務的には「遺産分割協議に参加する許可」「換価(売却)する許可」など、複数回の許可申立てが発生し得ます。スケジュールと費用を最初に見積もっておくと手戻りが減ります。

不在者財産管理人の権限と「権限外行為許可」の注意点

何ができて、何は許可が必要か

裁判所の案内では、不在者財産管理人は財産の管理・保存を行い、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって遺産分割や不動産売却等を行えるとされています。
また、権限外行為許可の手続案内として、遺産分割協議や財産処分など「権限を超える行為」をするために許可が必要とされています。

実務で揉めやすいのは次の点です。

  • 分割案が「不在者の利益を害しない」ことの説明(評価資料・相続税評価・鑑定等が論点)
  • 不動産売却の必要性(空き家維持費、納税資金、共有解消などの合理性)
  • 手続きが長期化すると、預金凍結や固定資産税、管理コストが積み上がる

ケーススタディ(匿名)

例えば、相続人の一人が20年以上音信不通で、遺産の中心が地方の土地建物だった案件では、共有のままだと売却が進まず、固定資産税と管理費だけが毎年発生していました。
不在者財産管理人の選任→遺産分割協議参加の許可→売却許可という順で進め、最終的に換価して納税資金と分配原資を確保できた、という流れです。ポイントは、不在者の取り分が客観的に不利になっていないことを資料で示す点でした。

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「不在者財産管理人」と他制度の違い

状況によっては別制度が適切なこともあります。実務上の比較を整理します。

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選択肢使う場面効果目安期間注意点
不在者財産管理人相続人が所在不明で協議が不能管理人が不在者の財産を管理し、許可を得て遺産分割等に関与数か月〜(事案次第)申立て・許可が複数回になりやすい
特別代理人未成年相続人などで利益相反がある特定行為について代理比較的短期利益相反の構造説明が必要
失踪宣告長期間生死不明で法的に死亡扱いが必要法律上死亡とみなす長期(要件が厳しい)相続関係が大きく変わるため慎重判断
ここがポイント
「連絡が取れない」だけで、直ちに失踪宣告に進むのは一般にハードルが高いです。まずは戸籍附票等で所在確認を尽くし、それでも不明なら不在者財産管理人で遺産分割を前進させる、という順序が現実的です。

よくある質問

Q: 相続人の1人が行方不明でも、他の相続人だけで遺産分割協議書を作れますか? ▼
原則できません。遺産分割は相続人全員の合意が必要で、行方不明者がいる場合は不在者財産管理人の選任など法的手当てが必要になります。管理人が選任されても、遺産分割協議への参加は権限外行為許可が必要となるのが通常です。
Q: 不在者財産管理人の申立て費用はいくらかかりますか? ▼
申立手数料として収入印紙800円分が案内されています。加えて郵便切手が必要で、裁判所により金額が異なります。さらに、財産内容によっては管理人報酬等に備える予納金を求められることがあります。
Q: 不在者財産管理人は不動産を勝手に売れますか? ▼
できません。不動産処分や遺産分割協議への参加などは権限外行為に当たり、家庭裁判所の許可が必要です。
Q: 行方不明の相続人の取り分はどう扱われますか? ▼
不在者の法定相続分(または適法な分割案に基づく取り分)が前提です。分割内容が不在者に不利にならないよう、評価資料や合理性の説明が重視されます。個別事情により最適解が変わるため、専門家と設計するのが安全です。

まとめ

  • 相続人が行方不明で遺産分割が止まる場合、不在者財産管理人の申立てが実務上の解決策になる
  • 申立先は不在者の従来の住所地(居所地)の家庭裁判所で、利害関係人が申立てできる
  • 申立手数料は収入印紙800円分が案内され、郵便切手や予納金が追加になることがある
  • 遺産分割協議への参加や不動産売却は、原則として権限外行為許可が必要
  • 時間と費用が読みにくいので、最初に「選任」と「許可」を含めた工程表を作ると失敗しにくい

参照ソース

  • 裁判所「不在者財産管理人選任」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html
  • 裁判所「不在者財産管理人の権限外行為許可」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_25_10/index.html
  • e-Gov法令検索「民法」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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