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相続・事業承継コラム
作成日:2025.09.26
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

事業承継の3つの方法|親族内・従業員・M&Aを比較|税理士が解説

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事業承継の3つの方法|親族内・従業員・M&Aを比較|税理士が解説

事業承継の3つの方法を先に結論

事業承継の方法は大きく「親族内承継」「従業員承継(MBO等)」「M&A(第三者承継)」の3つです。誰にとって何が問題かというと、経営者にとっては経営権(議決権)と資金・税負担の設計が難しく、後継者にとっては「引き継いだ後に回る仕組み(資金繰り・人材・取引先)」を整えることが課題になります。先に言えば、選択肢の優劣ではなく「会社の状況と承継目的」に合う方法を、段取りよく当てはめることが成功の近道です。

事業承継とは何か|引き継ぐ対象と全体像

事業承継とは、単に社長交代をすることではありません。実務では次の3点を同時に設計します。

  • 経営:意思決定権、役員体制、ガバナンス
  • 資産:自社株(株式)、事業用資産、借入、担保・保証
  • 人:後継者教育、キーマン、取引先・金融機関との関係

また、承継の形は親族内だけではなく、従業員承継やM&Aも増えています。だからこそ「早めに選択肢を知り、比較し、準備を始める」ことが重要です。

ここがポイント
事業承継は“イベント”ではなく“プロジェクト”です。社長交代日をゴールに置くと、税務・資金・契約の詰めが間に合わず、結果として「承継後の混乱(資金繰り、離職、取引条件の悪化)」が起こりやすくなります。

親族内承継の特徴|メリット・デメリットと税務の要点

親族内承継のメリット

  • 社内外の納得感を得やすく、文化・理念を引き継ぎやすい
  • 段階的な権限移譲(副社長→社長など)が取りやすい
  • 相続・贈与を活用し、税負担を平準化できる余地がある

親族内承継の注意点

  • 後継者候補がいても「適性・覚悟・周囲の支持」が揃わないケースがある
  • 兄弟姉妹間の利害調整(相続分、株式配分)が複雑化しやすい
  • 納税資金の確保(自社株評価が高い場合)が核心になる

税務設計で押さえるポイント(法人の場合)

  • 主要論点は「株式の移転方法(生前贈与・相続・譲渡)」と「株価対策」です
  • 条件に合えば、法人の非上場株式の相続税・贈与税について納税猶予等を受けられる制度(事業承継税制)があります
  • ただし制度には期限・手続・報告義務があり、要件不充足時の影響も含めて検討が必要です

税理士法人 辻総合会計では、親族内承継では「株式・遺言・家族会議・役員退職金・生命保険」の組合せを、3年~5年の工程表に落とし込む相談が多く見られます。早い段階で“争点になりやすい論点”を見える化することが、結果としてコストを下げます。

従業員承継(MBO等)の特徴|資金調達と契約設計が肝

従業員承継が選ばれる場面

  • 親族に後継者がいない、または親族が承継を望まない
  • 社内に実質的な後継者(右腕・幹部)がいる
  • 文化を保ちつつ、現場に近い人が引き継ぐのが合理的

従業員承継の実務ポイント

従業員承継は「意欲はあるが資金が足りない」が最大の壁になりがちです。具体的には次が論点になります。

  • 株式の取得資金(金融機関、持株会社、段階譲渡など)
  • 役員退職金・配当・譲渡対価のバランス(会社の資金繰りを崩さない設計)
  • 個人保証・担保の整理(金融機関との調整)
  • 権限移譲の手順(突然の社長交代は組織が揺れやすい)

当法人の実務感覚では、従業員承継は「株式の一括取得」を急ぐほど失敗確率が上がります。匿名事例として、年商数億円規模の企業で、社長交代は先に実施し、株式移転は3回に分けて実行したことで、金融機関の理解を得ながら資金繰りへの負担を抑えられたケースがあります。

ここがポイント
従業員承継は“人”の承継に見えますが、実際は「資金・税務・契約の三位一体」です。後継者の覚悟だけで進めず、資金繰り計画(最低3年)を先に作るのが定石です。

M&A(第三者承継)の特徴|相手選びとPMIが成否を分ける

M&Aのメリット

  • 後継者不在でも会社を存続できる可能性が高い
  • 譲渡対価により、創業者利益や引退後資金を確保しやすい
  • シナジー(販路・調達・人材)により事業成長が見込める場合がある

M&Aの注意点(よくある論点)

M&Aは「契約して終わり」ではありません。特に中小企業では、次の2点が肝になります。

  • デューデリジェンス(財務・税務・法務・労務の調査)で論点が顕在化する
  • PMI(統合プロセス)が弱いと、離職・取引縮小・品質低下が起こりやすい

また、仲介・FA契約の内容(手数料体系、利益相反の管理、情報管理)を理解せずに進めると、後からトラブルになる可能性があります。支援機関を選ぶ際は、行動指針に沿った説明を受けられるか、契約条件が明確かを必ず確認してください。

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親族内・従業員・M&Aの比較|選び方と進め方(手順)

3方式の比較表

←横にスクロールできます→
比較項目親族内承継従業員承継M&A(第三者)
後継者の見つけやすさ親族に候補がいれば高い社内幹部が育っていれば高い市場から探索できる
資金負担の出方相続・贈与税と納税資金が焦点株式取得資金が焦点取引費用・調査費用が焦点
文化・理念の継承しやすいしやすい設計次第(PMIで差)
スピード感中~長期(準備型)中期(資金設計次第)条件が揃えば比較的短期も可
主なリスク親族間対立・株式分散資金繰り・保証問題価格・契約・PMI・情報管理

進め方の基本ステップ(5段階)

Step 1: 現状診断(見える化)
株主構成、株価の概算、借入・保証、就業規則・重要契約(賃貸借、取引基本契約等)を棚卸しします。

Step 2: 承継方針の決定(誰に・何を・いつ)
候補(親族・幹部・第三者)を複線化し、最終判断の期限を置きます。

Step 3: 税務・法務の設計
株式移転スキーム(贈与・相続・譲渡)、退職金、組織再編、契約更新、個人保証の整理を同時に設計します。

Step 4: 実行(権限移譲と株式移転)
社長交代・役員体制・稟議権限を整え、株式移転は資金繰りに合わせて段階実行も検討します。

Step 5: 承継後の運用(PMI/ガバナンス)
承継後6~12か月は離職・取引・資金繰りの変化が起こりやすいため、月次でKPI(売上、粗利、人員、回転期間)を点検します。

失敗を防ぐ注意点|「税務」「資金」「人」を同時に設計する

  • 税務だけ最適化しても、資金繰り(返済・運転資金)が崩れると承継は止まります
  • 資金だけ整えても、後継者の権限・役割が曖昧だと組織が分裂します
  • “人の問題”を先送りすると、承継直前に離職・取引不安が顕在化します

特に期限付き制度(事業承継税制の特例措置など)を使う場合は、提出期限と実行期限をカレンダーに落とし込み、逆算で作業を並行処理することが重要です。個別の状況により最適解は異なりますので、税務・法務・金融の観点を横串で見られる専門家と進めることをお勧めします。

よくある質問

Q: 親族内承継が“基本”と言われますが、必ず親族に継がせるべきですか? ▼

A:

必ずしもそうではありません。後継者の適性、株主構成、資金繰り、取引先の事情によって、従業員承継やM&Aの方が合理的な場合があります。重要なのは「会社が継続し、雇用と顧客価値が守られる設計」になっているかです。
Q: 従業員承継で、後継者に株式を買う資金がありません。どう考えるべきですか? ▼

A:

典型的な論点です。金融機関調達、段階譲渡、持株会社の活用、役員退職金・配当設計など複数の選択肢があります。いずれも会社の資金繰りに影響するため、3年程度の資金計画とセットで検討してください。
Q: M&Aはどの段階で専門家に相談すべきですか? ▼

A:

検討初期からが望ましいです。相手探索前に「譲渡の目的」「譲れない条件」「株主・契約・税務の論点」を整理しておくと、交渉やデューデリジェンスがスムーズになります。仲介・FA契約の内容確認も含め、早期相談がトラブル回避につながります。

まとめ

  • 事業承継は「親族内」「従業員」「M&A」の3類型で整理し、会社状況に合う方法を選ぶ
  • 親族内承継は株式・相続設計が中心、従業員承継は資金調達と契約設計が中心
  • M&AはデューデリジェンスとPMIが成否を分け、支援機関選定も重要
  • 進め方は「現状診断→方針→税務法務設計→実行→承継後運用」の順で管理する
  • 期限付き制度は日付を固定し、逆算工程で並行処理する

参照ソース

  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html
  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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