税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
相続コラムに戻る
相続・事業承継コラム
作成日:2025.04.05
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

事業承継計画の作り方|5年・10年準備スケジュールを税理士が解説

8分で読めます
事業承継計画の作り方|5年・10年準備スケジュールを税理士が解説

事業承継計画とは|5年・10年で「準備の見える化」をする設計図

事業承継計画とは、事業承継の時期と課題、具体策を中長期の経営計画に組み込み、実行手順まで整理したものです。要するに「承継を偶然に任せず、期限と担当を決めて進める」ための計画書です。中小企業庁のガイドラインでも、計画的に取り組む重要性が示されています。

現場では、承継が遅れるほど「株価が上がって税負担が重くなる」「幹部が育たない」「金融機関・主要取引先への説明が後手に回る」といった課題が連鎖しがちです。特に、院長やオーナー経営者のように意思決定が属人化している企業ほど、引継ぎの設計が必要になります。

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、事業承継は“手続き”ではなく“経営プロジェクト”として扱い、5〜10年のロードマップで支援するケースが多くあります。短期で済ませようとすると、後継者の納得感や社内外の信頼形成が追いつかないためです。

ここがポイント
本記事は一般的な実務の整理です。株式評価、税務、法務、金融契約(担保・保証)などは個別事情で結論が変わります。実行前に専門家へ確認してください。

事業承継計画書と計画表の違い|「何を決めるか」と「いつやるか」

事業承継の計画は、大きく「計画書(方針・論点の整理)」と「計画表(年次の実行計画)」に分けて作ると運用しやすくなります。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、長期の工程表(10カ年例)を示しながら、段階的な準備の必要性が示されています。

  • 計画書:承継の全体像(誰に、何を、どの方法で)を決める資料
    例)承継類型(親族内・従業員・M&A)、役割分担、株式・資産の移転方針、関係者の合意形成方針

  • 計画表:5年・10年のスケジュールに落とし込んだ実行管理表
    例)後継者育成、権限移譲、株式移転、保証・担保の見直し、取引先説明の時期、退任・退職金設計

なお、日本政策金融公庫は「事業承継計画書」の様式や記入ポイントを公開しており、初期の叩き台として使いやすい資料です。

5年型と10年型の準備スケジュール|どちらを選ぶべきか

結論としては、後継者候補が明確で、株式・資金・幹部体制が一定整っているなら「5年型」、候補選定から始まる/組織改編が必要/株価対策が重いなら「10年型」が現実的です。

←横にスクロールできます→
項目5年型(圧縮プラン)10年型(育成・再設計プラン)
主な対象後継者が内定、引継ぎ論点が限定的後継者未確定、幹部層が薄い、株式・財務課題が大きい
進め方1〜2年で方針確定、3年目以降は実行管理前半で候補選定・育成、後半で権限・資産移転を段階化
強み早期に意思決定でき、外部説明がしやすい反発や失敗を吸収しやすく、属人化の解消まで踏み込める
リスク育成が追いつかない、関係者合意が薄い途中で先送りになる(毎年のレビューが必須)

実務では「10年で設計し、直近5年を詳細化する」方法が堅実です。長期の絵を描いたうえで、毎年更新してズレを吸収します。

事業承継計画の作り方|5ステップで作る実務手順

ここからは、計画を“書いて終わり”にしないための作成手順です。ポイントは、財務・株式だけでなく、人・業務・信用(取引先・金融機関)を同じ地図に載せることです。

Step 1: 現状の棚卸し(見える化)

  • 会社:収益構造、主要顧客・仕入先、許認可、キーマン、業務フロー
  • 経営者:保有株式、連帯保証、個人資産、意思決定領域
  • 後継者:候補者の適性、育成課題、周囲の受容性
    この段階で、「何を引き継ぐのか」が言語化されます。

Step 2: 承継類型の選定(親族・従業員・M&A)

  • 親族内:理念承継がしやすい一方、税負担・公平感が論点になりやすい
  • 従業員:現場理解が強い一方、資金(株式買い取り)と社内合意が鍵
  • M&A:スピードは出るが、条件交渉・デューデリジェンス対応が必須
    中小企業庁の事業承継ページでも、類型別の進め方が整理されています。

Step 3: 後継者育成と権限移譲の設計

  • 1年目:現経営者の意思決定を「戦略・人事・資金」に分解し、段階移譲
  • 2〜3年目:後継者にPL責任を持たせ、主要取引先同席・金融機関面談を開始
  • 4年目以降:稟議・決裁ルールを整備し、経営会議体を定例化
    承継後に困るのは「知識」より「関係性」です。信用の移転は時間がかかります。

Step 4: 株式・資産・資金の移転計画(税務・金融含む)

  • 自社株:評価の見通し、移転方法(贈与・相続・譲渡)の整理
  • 保証・担保:代表者保証の扱い、借入条件の変更可能性
  • 退職金:退任時期と資金繰り、損金算入の可否、規程整備
    制度面(税負担軽減策等)は改正されるため、最新要件の確認が必要です。

Step 5: 社内外コミュニケーション計画(発表の順番を決める)

  • 社内:幹部→キーマン→全社員の順で説明し、役割と評価制度を整える
  • 社外:主要取引先→金融機関→その他関係先の順で、承継後の方針を提示
    「誰に、いつ、何を伝えるか」を計画表に落とすと、混乱が減ります。
ここがポイント
よくある失敗は「株式移転だけ先に進め、現場の体制が追いつかない」ケースです。承継日は“ゴール”ではなく“切替日”なので、切替後の運用(会議体・権限・評価)まで設計してください。

相続・事業承継の専門家にご相談ください

相続税申告、事業承継対策など、資産に関するお悩みをトータルでサポートします。

無料相談を申込む 📞 06-6206-5510

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

関連記事

後継者がいない会社の選択肢(M&A・廃業・第三者承継)|税理士が解説

後継者がいない会社の現実的な選択肢は、M&A(第三者承継)、従業員承継、廃業(解散・清算)です。本記事では違い・メリットデメリット、判断軸、手続きの流れと注意点を整理します。

続きを読む

5年・10年の準備スケジュール例|年次で何をやるか

以下は、実務で使いやすい粒度に落とした例です。自社の状況に合わせて、計画表は毎年更新します。

  • 10年前〜7年前:候補選定、課題の棚卸し、幹部層の補強、業務の標準化
  • 6年前〜4年前:後継者育成(PL責任付与)、主要顧客・金融機関への同席開始、株式移転の方針決定
  • 3年前〜2年前:権限移譲の本格化、規程整備(決裁・職務権限・退職金)、保証・借入条件の調整
  • 1年前:対外発表、最終引継ぎ(契約・許認可・印鑑・権限)、トラブル時のエスカレーション設計
  • 承継年:代表交代、役割再定義、初年度のKPI・資金繰りモニタリング

5年型の場合は、上記の「6年前〜2年前」を圧縮し、初年度に方針確定と育成計画を同時並行で進めます。

ケーススタディ|計画が効いた「揉めない承継」の進め方

例えば、従業員承継を検討していたある企業では、後継者の能力よりも「幹部の納得感」と「金融機関の安心材料」が不足していました。そこで、事業承継計画に以下を明記しました。

  • 3年で権限移譲(決裁権限表を改定し、会議体を再設計)
  • 2年目から金融機関面談を後継者主導に切替
  • 承継後1年の資金繰りKPIを事前合意
    結果として、承継日に向けた不安が数値と運用ルールに置き換わり、社内外の説明が格段に容易になりました。計画の価値は、文章そのものより「合意形成と実行管理」にあります。

よくある質問

Q: 事業承継計画は法的に作成が必須ですか? ▼

A:

必須ではありません。ただし、事業承継は株式・人材・取引関係など論点が多く、計画がないと関係者の認識ズレが生じやすいので、実務上は作成を強く推奨します。
Q: 5年と10年、どちらで作ればよいですか? ▼

A:

後継者が内定し、幹部体制・財務課題が限定的なら5年でも可能です。一方、後継者選定から始まる場合や、組織再設計・株式対策が重い場合は10年で設計し、直近5年を詳細化するのが現実的です。
Q: 取引先や金融機関への説明はいつが適切ですか? ▼

A:

目安は「後継者が一定の決裁・実績を持った段階」です。早すぎると不安を招き、遅すぎると信頼移転が間に合いません。計画表に“説明の順番”と“同席開始時期”を入れて管理すると安定します。

まとめ

  • 事業承継計画は「いつ・誰に・何を・どう引き継ぐか」を5〜10年で見える化する設計図
  • 計画書(方針)と計画表(年次の実行管理)に分けると運用しやすい
  • 5年型は圧縮、10年型は育成と再設計に強い。迷うなら10年設計+直近5年詳細化
  • 株式だけでなく、後継者育成・権限移譲・社内外説明を同じスケジュールに載せる
  • 計画は毎年更新し、ズレを吸収することで「先送り」を防ぐ

参照ソース

  • 中小企業庁「事業承継(制度・支援情報)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
  • 日本政策金融公庫「事業承継計画書(各種書式ダウンロード)」: https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
相続コラムに戻る

お電話でのご相談

06-6206-5510

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

家族信託とは?認知症対策と相続対策を同時に実現|税理士が解説

家族信託とは?認知症対策と相続対策を同時に実現|税理士が解説

住宅取得資金贈与の非課税特例|条件と手続き|税理士解説

住宅取得資金贈与の非課税特例|条件と手続き|税理士解説

事業承継税制とは?納税猶予と特例承継計画|税理士が解説

事業承継税制とは?納税猶予と特例承継計画|税理士が解説

人気コラムランキング

1
ゆうちょ銀行の相続手続き方法|必要書類・期間を解説

ゆうちょ銀行の相続手続き方法|必要書類・期間を解説

2
遺産分割協議書の作り方|必要書類と注意点を解説

遺産分割協議書の作り方|必要書類と注意点を解説

3
相続税の基礎控除とは|計算方法と申告要否を税理士が解説【2025年版】

相続税の基礎控除とは|計算方法と申告要否を税理士が解説【2025年版】

4
遺留分とは?請求できる人と計算方法・期限の要点|税理士が解説

遺留分とは?請求できる人と計算方法・期限の要点|税理士が解説

5
共有名義不動産相続のトラブル回避ポイント|税理士が解説

共有名義不動産相続のトラブル回避ポイント|税理士が解説

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

06-6206-5510

06-6206-5510

無料相談する

平日 9:15〜18:15