
執筆者:辻 勝
会長税理士
法定相続分とは?配偶者・子・親・兄弟の割合|税理士が解説

法定相続分とは
法定相続分とは、遺言がない(または遺言で指定がない)場合に、相続人が相続財産を取得する「基準となる割合」です。実際の分け方は、相続人全員の合意(遺産分割協議)で調整できますが、合意形成の出発点として法定相続分が使われます。
当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、相続税申告の前段で「まず法定相続分で整理してから、分割協議に入る」という進め方が最も多い印象です。割合が曖昧なまま話し合いを始めると、感情論になりやすく、結果として手続きが長期化しがちです。
配偶者がいる場合の法定相続分(子・親・兄弟との組み合わせ)
法定相続分は「配偶者がいるか」「他の相続人が誰か」で大きく変わります。まず、実務で最も多い3パターンを押さえましょう(条文上の考え方は民法第900条の枠組みで整理されます)。
配偶者+子(または代襲相続人)
- 配偶者:1/2
- 子(複数なら均等):1/2
例:配偶者1人+子2人なら、配偶者1/2、子は各1/4です。
配偶者+直系尊属(親など)
- 配偶者:2/3
- 直系尊属(複数なら均等):1/3
例:配偶者1人+父母2人なら、配偶者2/3、父1/6、母1/6です。
配偶者+兄弟姉妹
- 配偶者:3/4
- 兄弟姉妹(複数なら原則均等):1/4
加えて重要なのが、兄弟姉妹の中に「父母の双方が同じ兄弟姉妹(全血)」と「父母の一方のみが同じ兄弟姉妹(半血)」が混在する場合です。半血の相続分は全血の1/2として扱います(いわゆる2分の1ルール)。この点は、遺産分割の場面で見落としやすいので要注意です。
相続人の組み合わせ別:法定相続分一覧(早見表)
「どの組み合わせなら誰が何割か」を一枚で把握できるよう、代表パターンを表にまとめます。まずはこの表で自分のケースに近い形を見つけると、以降の計算がスムーズです。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | 子 | 直系尊属(親等) | 兄弟姉妹 |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者+子 | 1/2 | 1/2(子で均等) | - | - |
| 配偶者+直系尊属 | 2/3 | - | 1/3(尊属で均等) | - |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | - | - | 1/4(原則均等) |
| 子のみ | - | 全部(子で均等) | - | - |
| 直系尊属のみ | - | - | 全部(尊属で均等) | - |
| 兄弟姉妹のみ | - | - | - | 全部(原則均等) |
法定相続分の計算方法(実務の手順)
計算自体はシンプルですが、「相続人の確定」と「人数按分」の順序を誤るとズレます。実務では次の順で確認すると安全です。
Step 1: 相続人の組み合わせを確定する(配偶者・子・親・兄弟)
戸籍で相続人を確定し、「配偶者がいるか」「子がいるか」「子がいないなら親か兄弟か」を整理します。
Step 2: 組み合わせに応じた法定相続分(大枠)を当てはめる
上の早見表に沿って、配偶者が1/2、2/3、3/4のどれかを確定させます。
Step 3: 同順位の相続人で均等按分する(例:子が複数)
子が3人なら子の取り分(合計)を3等分、尊属が2人なら尊属の取り分(合計)を2等分します。
Step 4: 兄弟姉妹が混在する場合は「半血は全血の1/2」で調整する
兄弟姉妹の中に半血がいる場合は、機械的に均等割りせず、比率(全血2:半血1)で配分します。
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遺産分割で揉めやすい注意点(遺言・遺留分・兄弟姉妹の位置づけ)
法定相続分と「遺産分割協議」は別物
共同相続人は、原則としていつでも協議により遺産分割できます(遺言で禁じられている場合などを除く)。つまり、法定相続分どおりに分ける義務が常にあるわけではありません。協議の結果、特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人が預金を多めに取得する、といった設計も一般的です。
兄弟姉妹には遺留分がない
相続トラブルで重要なのが遺留分(最低限の取り分)です。兄弟姉妹は遺留分権利者ではありません。裁判所の手続案内でも、遺留分侵害額の請求の申立人が「兄弟姉妹以外の相続人」と整理されています。
そのため、遺言で兄弟姉妹への配分がゼロでも、原則として遺留分侵害額請求で取り戻すことはできません(配偶者・子・直系尊属とは扱いが異なります)。
よくある質問
Q: 法定相続分どおりに分けないと違法になりますか?
A:
いいえ。相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる配分も可能です。合意がまとまらない場合の基準として法定相続分が用いられる、という位置づけです。Q: 子が先に亡くなっている場合、孫はどうなりますか?
A:
一般に、子が相続開始前に死亡しているなど一定の場合、孫が子に代わって相続人になります(代襲相続)。法定相続分の「子の取り分(合計)」を、代襲者を含めて按分するのが基本です。個別の戸籍関係で結論が変わるため、相続人確定は慎重に行ってください。Q: 兄弟姉妹が相続人のとき、遺留分侵害額請求はできますか?
A:
原則できません。兄弟姉妹は遺留分権利者ではないためです。遺留分の議論が出るのは、配偶者・子・直系尊属が相続人となる場合が中心です。まとめ
- 法定相続分は、相続財産を分ける際の「基準となる割合」
- 配偶者がいる場合は、相手方(子・親・兄弟)により配偶者の割合が1/2・2/3・3/4と変わる
- 子や親は複数なら均等、兄弟姉妹は半血が混在すると全血の1/2ルールで調整する
- 実際の分割は遺産分割協議で調整可能だが、合意形成の起点は法定相続分
- 兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言の影響が大きい
参照ソース
- 法務省「民法の一部を改正する法律案新旧対照条文(第900条)」: https://www.moj.go.jp/content/000116011.pdf
- 裁判所「参考条文(民法907条等)」: https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file4/H310121-11sankoujoubunn.pdf
- 裁判所「遺留分侵害額の請求調停」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/lkazi_07_26/index.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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