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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続欠格と相続廃除の違い|相続権を失うケースを税理士が解説

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相続欠格と相続廃除の違い|相続権を失うケースを税理士が解説

相続欠格とは?相続権を自動で失う制度(民法891条)

相続欠格とは、一定の重大な不正行為があった人について、法律上当然に相続人の地位を失わせる仕組みです。ポイントは、被相続人の意思や家庭裁判所の判断を待たずに「当然に」効果が生じる点です(根拠条文は民法891条)。

相続欠格に該当すると、その人は相続人ではなくなるため、原則として遺産分割協議にも参加できません。実務では、戸籍・遺言・相続関係説明図を作る段階で欠格原因が問題化し、紛争に発展しやすい領域です。

相続欠格の典型例(イメージ)

民法891条は、被相続人や他の相続人に対する極めて重大な行為(殺害等)、遺言に関する不正(詐欺・強迫、遺言書の偽造・変造等)を念頭に置いた制度です。言い換えると、相続秩序を根本から破壊する行為への民事上の制裁です。

欠格の効果:遺留分や代襲はどうなる?

  • 欠格者本人は相続権を失い、遺留分を含む取得資格も失うのが基本的整理です。
  • 一方で、欠格者に子等がいる場合は、相続の場面で「欠格者がいなかったもの」として代襲相続が問題になります。ここが、後述する廃除と同様に、家族関係全体へ波及する重要ポイントです。
ここがポイント
欠格は「自動的に相続人でなくなる」制度ですが、現実には相手方が欠格を争うことも多く、最終的には刑事記録・判決、遺言書の筆跡や作成経緯、当時の録音・診療録など、証拠に依存します。相続開始後に欠格原因が発覚するケースも珍しくありません。

相続廃除とは?家庭裁判所で相続権を失わせる制度(民法892条〜)

相続廃除とは、被相続人の意思に基づき、一定の推定相続人について相続権(遺留分を含む)を失わせる制度です。最大の特徴は、家庭裁判所の手続(審判・調停等)を経てはじめて効力が確定する点です(民法892条、遺言による廃除は893条、取消は894条)。

廃除できる相手は誰か(遺留分のある推定相続人)

廃除の対象は「遺留分を有する推定相続人」です。したがって、一般に兄弟姉妹のように遺留分がない人は、廃除の対象になりません。ここは誤解が多く、「相続人から外したい=廃除」と短絡しがちですが、制度の射程は限定されています。

廃除が認められる要件(虐待・重大な侮辱・著しい非行)

民法892条は、被相続人に対する虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行といった類型を掲げています。実務上は、暴力・経済的搾取・継続的な侮辱、深刻な背信行為など、具体的事実の積み上げが必要です。

相続欠格と相続廃除の違い(欠格 廃除 違いを比較)

相続欠格と相続廃除は「相続権を失う」という結果は似ていますが、制度設計は別物です。相談現場では、どちらに該当するかで、証拠の組み立て方・進め方・着地点が大きく変わります。

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比較項目相続欠格(民法891条)相続廃除(民法892条〜)
発生の仕方法律上当然に発生(自動)家庭裁判所の手続で確定
前提となる意思不要(被相続人の意思に依らない)必要(被相続人の請求・遺言等)
対象者相続人になり得る者全般(行為類型次第)原則、遺留分のある推定相続人に限定
典型原因殺害等、遺言への不正など重大行為虐待・重大侮辱・著しい非行
取消制度上「取消」という発想はない取消が可能(民法894条)
実務の焦点欠格原因の立証・争点化非行の立証+家裁手続の運用

欠格は「制裁として自動的に切り落とす」、廃除は「被相続人の意思を手続で実現する」と捉えると整理しやすいでしょう。

相続人を排除したい場合の実務フロー(相続人 排除)

「相続人を外したい」という相談は、税務だけでなく家族法・紛争対応の要素が濃く、手順の誤りが致命傷になります。税理士法人 辻総合会計では、相続税申告の前提となる相続関係の確定(戸籍・遺言・相続人範囲)に多数関与してきた経験上、初動での論点整理が最重要だと感じます。

Step 1: まず「欠格」か「廃除」か、または「相続放棄」かを切り分ける

  • 重大な行為(殺害、遺言書の偽造等)が疑われる:相続欠格の可能性
  • 生前の虐待・重大侮辱・著しい非行が中心:相続廃除の可能性
  • 本人が自分から相続しないと言っている:相続放棄の可能性(家庭裁判所の申述)

制度が違えば必要書類・管轄・時間軸が違うため、ここを曖昧にしたまま遺産分割協議に入ると、後でやり直しになりがちです。

Step 2: 証拠の棚卸し(記録化できるものを集める)

廃除でも欠格でも、最終的には事実の立証が核です。たとえば以下です。

  • 暴力や介護放棄が疑われる:診療録、介護記録、写真、録音、第三者のメモ
  • 金銭の搾取:通帳履歴、送金記録、借用書、LINE等のやり取り
  • 遺言に関する不正:作成経緯、筆跡資料、立会人関係

Step 3: 廃除を狙う場合は、家庭裁判所手続を前提に設計する

相続廃除は家裁手続が必要です。遺言で廃除を意思表示する場合でも、相続開始後は遺言執行者が手続を進める設計が現実的になります(遺言執行者自体の選任が必要となる場面もあります)。

Step 4: 相続開始後は、遺産分割・相続税申告と「相続人確定」がセットで動く

欠格・廃除が争われると、遺産分割協議の前提が揺らぎます。相続税申告期限(原則10か月)との関係もあるため、実務では「争点が確定するまでの暫定対応(未分割申告、分割見込み、納税資金)」まで含めて設計します。

ここがポイント
「排除したい」という感情だけで進めると、逆に紛争が長期化し、遺産分割が止まって相続税・不動産の名義・預金解約が動かない、という二次被害が起きます。法律上の制度選択と、期限管理(特に相続税)を同時に行うのが現場の鉄則です。

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ケーススタディ:欠格・廃除が争点化しやすい典型パターン

当法人でよくある相談(匿名化)として、次のようなパターンがあります。

  • 被相続人が晩年に特定の子と同居し、その子が通帳管理をしていた
  • 他の相続人が「遺言は偽造だ」「不正に作らせた」と主張する
  • 一方で同居の子は「介護の実態がある。生前に重大な侮辱を受けたのは被相続人の方だ」と反論する

この場合、欠格(遺言への不正)と廃除(生前の非行)の主張が交錯しやすく、早期に「何を立証するのか」を定義しないと泥沼化します。相続税の申告実務では、相続人の範囲が確定しない限り、遺産分割協議書・遺産の帰属が固まらず、納税資金計画にも影響します。

よくある質問

Q: 相続欠格になると、遺留分も請求できませんか? ▼
一般に、相続欠格は相続人としての資格自体を失わせる制度のため、遺留分を含む取得の前提を失う整理になります。もっとも、欠格原因の有無が争われると結論が確定するまで実務が止まりやすいので、証拠(判決・記録等)を中心に早期に整理することが重要です。
Q: 相続廃除は、遺言に「廃除する」と書けばそれで終わりですか? ▼
遺言で廃除の意思表示はできますが、相続開始後に手続を進める実務(遺言執行者による申立て等)が必要になります。廃除は家庭裁判所手続を通じて確定する制度であり、遺言文言だけで自動的に確定するものではありません。
Q: 廃除された相続人の子(孫)は相続できますか? ▼
事案により整理が必要ですが、廃除された者が被相続人の子で、その子に子(孫)がいる場合、代襲相続が問題となります。結果として「排除したつもりが、次世代に相続権が移る」設計になることがあるため、遺言・生前対策を含めて全体設計が必要です。
Q: 相続人を外したいだけなら、相続放棄で十分ですか? ▼
相続放棄は「本人が自分の意思で相続しない」制度で、相続欠格・廃除とは目的が異なります。本人が放棄しない場合や、被相続人の意思で排除したい場合は、欠格・廃除の検討が必要になります。

まとめ

  • 相続欠格は、一定の重大行為があると法律上当然に相続権を失う(民法891条)。
  • 相続廃除は、被相続人の意思に基づき、家庭裁判所手続で相続権を失わせる(民法892条〜)。
  • 廃除の対象は原則「遺留分のある推定相続人」に限定され、兄弟姉妹などは原則対象外。
  • どちらも立証が要で、相続税申告期限(原則10か月)との同時管理が重要。
  • 「排除したい」相談は紛争化しやすく、制度選択・証拠・期限の三点セットで設計する。

参照ソース

  • e-Gov法令検索「民法」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
  • 裁判所「申立て等で使う書式」: https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/index.html
  • 法務省(PDF)「家事審判手続(各論)に関する検討事項(2)」: https://www.moj.go.jp/content/000023327.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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