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相続・事業承継コラム
作成日:2026.01.24
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続税の税務調査|入りやすい5ケースと対策を税理士解説

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相続税の税務調査|入りやすい5ケースと対策を税理士解説

相続税の税務調査は「論点がある申告」に入ります

相続税の税務調査は、全件に機械的に入るものではなく、資料情報から「申告額が過少の可能性がある」「無申告の疑いがある」と判断された案件に重点的に実施されます。つまり、税務調査リスクの本質は「財産の把握」「評価」「生前対策の整合性」に論点が残っていないか、です。
特に、開業医・経営者・地主など資産構成が複雑な方は、土地評価・名義預金・生前贈与が同時に絡みやすく、申告時点での設計がそのまま調査リスクを左右します。

当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、相続税申告後の問い合わせや調査対応を行う中で、「税務署が見ているポイントは毎年ほぼ同じ」である一方、「制度改正で見られ方が変わる論点」もあると実感します。事前に入りやすい型を把握し、対策の優先順位を付けておくことが最も実務的です。

相続税の税務調査とは

税務調査の種類(実地調査と簡易な接触)

相続税の確認は、大きく次の2つで進みます。

  • 実地調査:税務署側が訪問し、面談・資料確認を行う本格的な調査
  • 簡易な接触:電話・文書・来署依頼などで、特定論点を確認する接触

実務上の感覚としては、「資料の整合性が取れているか」「財産の帰属に疑義がないか」を見極めたうえで、必要に応じて実地調査に進む、という流れが多いです。

税務調査で見られる基本テーマ

調査の着眼は多岐にわたりますが、頻出は次の領域です。

  • 財産の漏れ:預貯金・有価証券・保険・貸付金・未収入金など
  • 帰属の否認:名義預金、家族名義の証券口座、金庫内現金
  • 評価の妥当性:土地(路線価・倍率・地積・形状補正)、非上場株式
  • 特例適用の要件:小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減 等
  • 生前対策の整合:贈与・相続時精算課税・契約書と資金移動の一致
ここがポイント
税務調査は「ミスがあったから入る」というより、「説明が難しい論点が残っている申告」に入ります。対策は税務署に説明できる状態を作ることに尽きます。

相続税 税務調査 確率は?数字の見方と注意点

「相続税の税務調査は何%くらいですか?」という相談は多いのですが、結論として、確率を単純な割合で捉えるのは危険です。理由は、調査はランダムではなく、資料情報で論点があると見込まれた案件に優先的に入るからです。

ただし、肌感覚ではなく規模感を持つために、公開資料から概算することは有効です。例えば、相続税の申告書提出に係る被相続人数(全国)は年間で十数万件規模です。一方で、実地調査は年8千件台が公表されています。
この数字だけ見ると「数%程度」と見えるかもしれませんが、実務では「リスク要因を複数持つ申告ほど、体感的な確率が跳ね上がる」と理解してください。

公表統計(把握しておきたい3つの数字)

相続税の調査関連の統計は、リスク説明のベースになります。

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区分指標目安(公表資料ベース)実務での読み方
実地調査実地調査件数8,556件本格調査は選別されている
実地調査1件当たり追徴税額859万円調査になると金額が大きい傾向
申告事績課税割合約10%前後申告対象は死亡者の一部

※上記は国税庁の公表資料から要点を抜粋したものです。年により増減します。

調査が入りやすい5つのケース

ここからが本題です。「調査が入りやすい案件」の典型を5つに絞って整理します。複数当てはまる場合は、リスクが相乗的に上がると考えてください。

ケース1:預貯金が多いのに申告財産が少ない(名義預金を疑われる)

被相続人の生前所得・事業収入・医業収入が相応にあるにもかかわらず、申告財産(特に預貯金)が少ない場合、税務署はまず資金の行方を確認します。ここで問題になりやすいのが名義預金です。

典型例:

  • 家族名義の口座に被相続人資金が流入している
  • 通帳・印鑑・ネットバンキングを被相続人が管理していた
  • 贈与契約書がなく、贈与税申告もない

対策の要点は「帰属の説明」です。名義ではなく、誰が管理し、誰が使えたかで判断されます。

ケース2:土地の評価が難しい(形状・接道・貸家建付地・特例絡み)

相続税の論点で最も揉めやすいのが土地です。土地評価は、路線価や倍率という入口が同じでも、個別事情で大きく動きます。

調査リスクが上がる場面:

  • 不整形地、間口狭小、奥行長大、無道路地など補正が多い
  • 賃貸アパート併用地(貸家建付地)で権利関係が複雑
  • 小規模宅地等の特例の要件(同居・生計一・事業継続)にグレーがある

土地は「資料で勝負」になります。測量図、賃貸借契約書、固定資産税課税明細、現況写真、利用状況の説明資料を最初から整えることが重要です。

ケース3:生前贈与が多い(相続開始前の加算・資金移動の不自然さ)

近年は生前贈与の論点がより重要になっています。特に、暦年贈与については加算対象期間が見直され、相続税との接続が厳密化しています。

注意点:

  • 令和6年(2024年)以後の贈与は、加算対象期間が段階的に延長され、将来的に相続開始前7年以内が対象になります
  • 贈与の事実(契約・資金移動・受贈者の管理)が弱いと、贈与そのものが否認されやすい

「毎年110万円ずつ渡したつもり」でも、実態が伴わなければ調査では通りません。贈与は記録と実態のセットです。

ケース4:同族会社・個人事業の財産が絡む(役員貸付金・非上場株式)

開業医やオーナー企業では、「個人と法人(事業)の財布が混ざる」ことが起きがちです。税務署は次を強く見ます。

  • 役員貸付金・借入金の実態(契約・返済・利息)
  • 会社名義資産の私的利用(車両・不動産・保険)
  • 非上場株式の評価と、株主構成の整合性

実務では、帳簿・契約・資金繰り表など企業側の証拠が揃っているかが分水嶺になります。

ケース5:海外資産・国外取引がある(情報連携で把握されやすい)

海外資産は、情報連携の進展により見えやすくなっています。海外口座、海外証券、国外不動産、暗号資産などがある場合は、申告漏れリスクが上がります。

調査で問われやすいポイント:

  • 申告時点の保有残高の把握方法(残高証明・取引報告書)
  • 為替換算の基準
  • 財産の取得原資(国内からの送金・投資の履歴)

海外資産は「後から思い出す」が最も危険です。最初の財産目録で棚卸しを徹底しましょう。

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申告前:リスクを潰すチェックリスト

  • 預貯金:過去入出金の大きな動き(現金引出・振込)を説明できるか
  • 名義:家族名義口座・証券の棚卸しをしたか
  • 土地:評価の前提資料(地積・接道・利用区分・賃貸状況)を揃えたか
  • 贈与:贈与契約書、振込記録、受贈者の管理状況が一貫しているか
  • 会社:役員貸付金等の残高理由が説明できるか

申告後:調査通知が来たらの手順(ステップ形式)

Step 1: 調査の範囲と意図を把握する
「実地調査」か「簡易な接触」か、対象税目(相続税・贈与税)と対象期間、論点(預金、土地、贈与など)を整理します。

Step 2: 証拠資料を論点別に束ねる
財産目録の根拠資料、評価資料、贈与・貸付の契約書、通帳コピー、残高証明などを論点別にセット化します。

Step 3: 説明ストーリーを作る(誰が見ても同じ結論になる形)
資金の流れ・管理状況・契約関係を時系列で説明できる形にします。特に名義預金は「管理・支配」を中心に組み立てます。

Step 4: 当日は答え過ぎないが原則
聞かれたことに事実で答える。推測で補わない。追加提出の要請があれば、期限と範囲を明確にして対応します。

Step 5: 指摘事項は論点の切り分けをして是正する
評価の見直しなのか、帰属の否認なのか、単純ミスなのかで対応が変わります。必要なら修正申告を検討します。

ここがポイント
調査対応は「資料の提出」だけではなく、「説明の設計」が重要です。提出資料の並び順ひとつで、税務署の理解度と印象が変わります。

匿名ケーススタディ(現場でよくある例)

医療法人のある院長の相続で、申告財産の預貯金は少なめ。一方で、相続人(子)の口座に多額の残高がありました。通帳と印鑑は被相続人が保管し、入出金も被相続人主導。贈与契約書は未整備。
調査では名義預金として帰属が争点となり、最終的に一部が相続財産に認定され修正申告へ。結論としては、「贈与の実態(受贈者の管理)を作れていなかった」ことが敗因でした。生前の段階で、管理移転と記録化ができていれば、調査リスクも追徴も抑えられた可能性があります。

よくある質問

Q: 相続税の税務調査はいつ頃入りやすいですか? ▼
一概には言えませんが、申告後に資料突合が行われ、論点があると判断されると接触が入ります。時期は案件により幅があり、早期に連絡が来ることもあれば、時間が経ってから照会が来ることもあります。重要なのは「いつか」より「説明できる状態か」です。
Q: 税務署から電話や手紙が来たら、すぐに税理士へ相談すべきですか? ▼
はい。特に、名義預金・土地評価・生前贈与・同族会社・海外資産が絡む場合は、初動で対応方針が決まります。資料の出し方や説明の順序で結果が変わることがあるため、早めの専門家関与が有効です。
Q: 生前贈与は110万円以下なら調査で問題になりませんか? ▼
金額の大小より「贈与の実態」が問題になります。110万円以下でも、加算対象期間内の贈与であれば相続税計算に影響する場合があります。また、名義預金とセットで否認されると、相続財産認定に繋がることがあります。
Q: 土地評価で指摘されたら必ず追徴になりますか? ▼
必ずではありません。評価の前提事実(地積、接道、利用状況等)の認定がズレていた場合は修正が必要ですが、見解の相違で調整に至ることもあります。評価は根拠資料と説明の精度が決定的です。

まとめ

  • 相続税の税務調査はランダムではなく、論点が見込まれる申告に重点的に実施される
  • 調査が入りやすい典型は、名義預金、土地評価、生前贈与、同族会社、海外資産の5領域
  • 公表統計では実地調査は年8千件台、1件当たり追徴は数百万円規模になり得る
  • 対策は「財産の棚卸し」「評価根拠の整備」「贈与・貸付の実態と記録の一致」に集約される
  • 調査通知後は、論点整理→資料の束ね方→説明ストーリーの順で初動品質を上げる

参照ソース

  • 国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」: https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
  • 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」: https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
  • 国税庁 タックスアンサー「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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