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相続・事業承継コラム
作成日:2025.01.01
更新日:2026.01.01
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

相続税の配偶者控除条件|1億6000万円まで非課税|税理士が解説

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相続税の配偶者控除条件|1億6000万円まで非課税|税理士が解説

相続税の配偶者控除(正式には「配偶者の税額軽減」)とは、配偶者が相続で取得した遺産が「1億6000万円」または「法定相続分」までなら、配偶者の相続税が実質0円になる制度です。問題になりやすいのは、遺産分割がまとまらず申告期限(原則10か月)までに配偶者の取得額が確定しないケースや、控除を使い切る設計が二次相続で不利になるケースです。ここでは、税理士法人 辻総合会計が実務で多い相談パターンを踏まえ、条件と手続きを実務目線で解説します。

配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは

配偶者控除は、被相続人の配偶者が遺産分割または遺贈により「実際に取得した正味の遺産額」が、次のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税がかからない(税額が軽減される)制度です。

  • 1億6000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

ポイントは「配偶者が実際に取得した額」で判定する点です。理屈として控除枠があっても、遺産分割が未確定だと、原則としてその財産は控除計算から除外されます(後述)。

1億6000万円まで非課税の「条件」

条件1:対象者は被相続人の配偶者

対象は「被相続人の配偶者」です。内縁関係は対象外となります。婚姻関係を戸籍で確認できることが前提です。

条件2:「実際に取得した正味の遺産額」で判定する

非課税ラインは「配偶者が実際に取得した正味の遺産額」が基準です。ここでいう正味とは、配偶者が取得した財産から、その取得に対応する債務等を差し引いた実質的な取得額をイメージしてください(個別計算は状況により異なります)。

また、対象となる財産から除かれるものがあり、典型例が隠蔽・仮装されていた財産です。制度の前提は適正申告です。

条件3:申告期限までに「分割されていない財産」は原則対象外

配偶者控除は、遺産分割等により取得が確定した財産を基礎に計算されます。したがって、申告期限までに分割されていない財産は、原則として税額軽減の対象になりません。

ここがポイント
実務で多い誤解は「配偶者だから申告しなくてよい」というものです。配偶者控除で税額が0円になる見込みでも、適用を受けるためには申告が必要(記載・添付を含む)です。申告しないと控除を使えず、後日のトラブルにつながります。

配偶者控除の計算イメージと「法定相続分」との関係

配偶者控除は「1億6000万円」と「法定相続分相当額」の大きい方が基準になるため、財産規模や家族構成で効き方が変わります。代表的な見方を表にまとめます。

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判定基準目安典型的に有利になりやすいケース注意点
1億6000万円基準配偶者取得が1.6億円以内なら税額0になりやすい遺産総額が中小規模、配偶者が自宅等を取得「未分割財産」は原則カウント不可
法定相続分基準1.6億円を超えても法定相続分まで税額0になりやすい遺産総額が大きい、配偶者の法定相続分が高い二次相続で税負担が増える設計になりやすい

「配偶者に多く残せば当面の相続税は減る」一方で、二次相続(配偶者が亡くなったとき)の課税が増えることがあります。節税は単発ではなく、世帯全体の総額で見る必要があります。

手続き:申告・添付書類・未分割の対処(ステップ)

配偶者控除は、自動適用ではありません。相続税申告書に所定事項を記載し、必要書類を添付して提出します。

Step 1: 遺言・遺産分割協議で「配偶者の取得財産」を確定する
申告期限までに分割がまとまるかが最重要です。配偶者が取得する財産(自宅、預金、株式など)を確定し、評価額を算定します。

Step 2: 相続税申告書に「配偶者の税額軽減の明細」を記載する
配偶者控除の対象額と控除額を申告書に反映させます。税額が0円でも、この記載が必要です。

Step 3: 添付書類をそろえて提出する
一般に必要となる書類の例は以下です(詳細は個別状況で異なります)。

  • 戸籍謄本等(配偶者であることの確認)
  • 遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し
  • 印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した相続人全員分)
  • 配偶者が取得した財産が分かる資料(評価明細等)

Step 4: 申告期限までに未分割の場合は「分割見込」の手続きを検討する
申告期限までに分割できない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、その後一定期限内に分割できれば、配偶者控除の適用を受けられる道があります。分割成立後は、原則として「分割成立の翌日から4か月以内」に更正の請求が必要になります。

ここがポイント
未分割のまま放置すると、配偶者控除だけでなく他の特例(例:小規模宅地等の特例)にも影響が出ることがあります。期限管理と、分割までの「仮の申告設計」が実務上の要点です。

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ケーススタディ:遺産総額2億円、配偶者がどれだけ取れば非課税か

前提を簡略化して、イメージを掴みます(評価・債務控除・各種特例は省略し、考え方のみ示します)。

  • 遺産総額:2億円
  • 相続人:配偶者+子2人(典型ケース)
  • 配偶者の法定相続分:1/2(この家族構成の場合)

この場合、法定相続分相当額は「2億円 × 1/2 = 1億円」です。
一方、配偶者控除のもう一つの基準は1億6000万円です。大きいのは1億6000万円なので、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が1億6000万円以内で確定し、必要な申告手続きを踏めば、配偶者の相続税は0円になりやすい、という整理になります。

ただし、配偶者が1億6000万円を取得し、子が残り4000万円を取得する分割は、二次相続で子の負担が増える可能性があります。配偶者の生活資金・住まい確保と、二次相続の税額見込みを両立させる設計が重要です。

よくある質問

Q: 配偶者控除を使えば、相続税の申告は不要ですか? ▼

A:

不要とは限りません。配偶者控除で納付税額が0円になる場合でも、控除の適用を受けるためには相続税申告書に所定事項を記載し、一定書類を添付して提出する必要があります。
Q: 申告期限までに遺産分割が終わらない場合、配偶者控除は使えませんか? ▼

A:

原則として未分割財産は配偶者控除の対象になりません。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、申告期限から3年以内に分割できた場合など、後から適用できる仕組みがあります。分割後は期限内に更正の請求が必要です。
Q: 1億6000万円まで配偶者が取得すれば必ず得ですか? ▼

A:

一概にはいえません。一次相続の税額は下がりやすい一方で、二次相続(配偶者が亡くなったとき)で子の税負担が増える設計になりやすいです。配偶者の生活費・介護費・住居確保と、世帯全体の税負担を合わせて検討してください。

まとめ

  • 配偶者控除(配偶者の税額軽減)は、配偶者の取得額が「1億6000万円」または「法定相続分」までなら相続税が軽減される制度
  • 判定は「配偶者が実際に取得した正味の遺産額」が基準で、未分割財産は原則対象外
  • 税額が0円でも、控除適用のために申告・明細記載・添付書類が必要
  • 未分割でも「分割見込書」等により後日適用の道がある(期限管理が重要)
  • 一次相続だけでなく、二次相続まで含めた分割設計が実務上の要点

参照ソース

  • 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
  • 国税庁「第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/06.htm
  • e-Gov法令検索「相続税法(検索ページ)」: https://laws.e-gov.go.jp/document?keyword=%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E%E6%B3%95&lawid=325AC0000000073_20240101_505AC0000000003

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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