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相続・事業承継コラム
作成日:2026.01.04
更新日:2026.01.04
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

準確定申告の期限と付表の書き方|相続財産の価額も解説

10分で読めます
準確定申告の期限と付表の書き方|相続財産の価額も解説

準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)の「1月1日〜死亡日まで」の所得税を、相続人が申告・納税する手続です。結論として、期限は「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」で、申告書には原則として「準確定申告書の付表」を添付します。さらに、相続税の検討では相続財産の価額(課税価格)の把握が欠かせません。

税理士法人 辻総合会計では、医療機関・資産家の相続関連手続を数多く支援してきました。現場では「期限は分かるが、付表と還付の段取りで止まる」「準確定申告と相続税が混線する」といった相談が多い印象です。この記事では、実務で迷いやすい論点に絞って整理します。

準確定申告とは?対象者と必要になるケース

準確定申告が必要になりやすいのは、次のように「被相続人が確定申告をすべき状況だった」場合です。

  • 事業所得・不動産所得がある(個人事業主、賃貸オーナー等)
  • 給与所得があるが、年末調整で完結しない(2か所給与、退職所得の関係等)
  • 公的年金等の収入があり、申告が必要なケースに該当
  • 株式・投信の譲渡、配当、先物などの申告が必要
  • 医療費控除等で還付を受けられる可能性がある
ここがポイント
準確定申告で適用できる控除には「支払時期」のルールがあります。例えば医療費控除は、原則として「死亡日までに被相続人が支払った分」が対象で、死亡後に相続人が支払った分は被相続人の準確定申告には入れません。控除は入れられると思い込む誤りが多いので注意してください。

準確定申告の期限はいつまで?4か月の数え方と例外

準確定申告の期限は、原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。通常は「死亡日を知った日=死亡日」となるため、死亡日の翌日から4か月と理解すると運用しやすいでしょう。

期限の例(死亡日が2026年1月10日の場合)

  • 原則:2026年1月11日から起算して4か月以内
  • 期限日:2026年5月10日(※土日祝の場合は翌開庁日)

「前年分」も同じ4か月になる例外

被相続人が、翌年1月1日〜通常の確定申告期限(原則3月15日)までの間に、前年分の確定申告を提出しないまま死亡した場合、前年分・本年分ともに「知った日の翌日から4か月以内」が期限になります。年初に亡くなったケースほど、前年分が未申告になりやすいので要注意です。

遅れるとどうなる?(実務のリスク)

  • 期限後申告になると、状況により無申告加算税・延滞税等の対象となり得ます
  • 還付が見込めるケースでも、相続人間で資料が揃わず放置されることがあります

「資料が集まらない」場合でも、期限を守るために“暫定”で提出し、後日更正の請求・修正申告を検討する設計もあります(個別事情により可否や損得が変わります)。

準確定申告の付表の書き方|誰が、何を書けばよい?

準確定申告書には、相続人等(包括受遺者含む)の情報を記載する「準確定申告書の付表」を添付して提出します。相続人が複数いる場合は「連署(共同で署名)」が原則ですが、他の相続人の氏名を付記して、相続人が別々に提出する方法もあります。

付表で必ず押さえる記入項目(実務の要点)

付表のレイアウトは年度の様式で変わり得ますが、実務上の核は概ね共通で、次の情報が中心です。

  • 被相続人の基本情報(氏名、死亡日、納税地 等)
  • 相続人等の情報(氏名、住所、続柄、押印/署名 等)
  • 相続人が複数の場合の代表的な取りまとめ情報(連絡先等)

特に相続人が多いほど、住所表記の揺れ(住民票表記と現住所)や、続柄の誤記が起きやすく、税務署から確認が入る原因になります。住民票や戸籍で表記を揃えるのが安全です。

e-Taxで提出する場合の注意点

e-Taxで準確定申告書を提出する場合、相続人が1名であっても、付表をe-Tax(XML形式)で提出する取扱いが示されています。紙提出と同じ感覚で「付表は省略できる」と判断しないよう注意してください。

還付金が出るとき:付表とは別に委任状が必要な場合がある

準確定申告で還付が見込まれるケースでは、「還付金を相続人の代表者等が受け取る」設計にすることがあります。この場合、付表とは別に、還付金受領に関する委任状の提出が必要になる取扱いがあります。

ここがポイント
還付金の受領口座をどなたにするかは、相続人間の合意と実務(通帳管理・分配方法)に直結します。合意が固まらないまま提出すると、後工程(遺産分割・精算)が揉めやすくなります。

相続財産の価額とは?「課税価格」と評価の考え方を整理

準確定申告(所得税)と並行して検討すべきなのが相続税です。相続税の申告が必要かどうかは、原則として「取得した財産の価額の合計(一定の調整後)」が、遺産に係る基礎控除額を超えるかで判定します。ここでいう相続財産の価額は、相続税の世界での「評価額」を意味し、所得税の“収入”とは別概念です。

「価額」の基本:時価ベース+評価ルール

相続税の評価は、財産評価基本通達などで定める方法により、財産の種類ごとに算定します。入口としては、次の整理が実務的です。

  • 現預金:死亡日時点の残高(利息・未収利息も論点)
  • 上場株式等:相続開始日の株価等による評価(選択ルールが絡む)
  • 不動産:土地は路線価方式/倍率方式、建物は固定資産税評価額が基本
  • 生命保険:みなし相続財産として課税対象になることがある(非課税枠の検討)
  • 借入金等:債務控除の対象(証憑と負担者関係の整理が必要)

土地(宅地)の評価イメージ:路線価方式

路線価が付された地域の宅地は、原則として「路線価 × 地積」をベースに、奥行価格補正など各種補正を加えて評価します。評価は“机上で一発”ではなく、地形・間口・奥行・利用区分等の要素で増減するため、早めの資料収集(公図、測量図、登記、固定資産課税明細等)が重要です。

申告の要否を早期にあたり付ける方法

相続税は、申告不要のケースも多い一方、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など「申告して初めて使える」制度が絡むと、単純に“基礎控除以下なら終わり”とは言い切れない局面もあります。国税庁の申告要否判定コーナー等も使い、概算で早期判断すると、後工程のムダが減ります。

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準確定申告と相続税を同時に進める段取り|実務で迷わない手順

同時進行のコツは、「期限が短い準確定申告(4か月)」を先に設計しつつ、相続税(10か月)の評価作業に必要な資料を前倒しで集めることです。

Step 1: 期限を確定し、担当者(代表相続人)を決める

死亡日と「相続開始を知った日」を確認し、準確定申告の期限(4か月)と相続税の期限(10か月)をカレンダーに固定します。相続人が複数なら、連絡窓口を一本化します。

Step 2: 準確定申告の所得資料を集める(所得税側)

  • 源泉徴収票(給与・年金)
  • 保険料控除証明書、寄附金受領証
  • 医療費の領収書(死亡日までの支払分)
  • 事業・不動産なら帳簿、収支内訳、通帳

Step 3: 付表を含め提出書類を整え、提出方法を決める

紙提出かe-Taxかを決め、付表の準備を同時に進めます。還付が見込まれる場合は、還付金受領の委任状が必要になる設計かも確認します。

Step 4: 相続財産の棚卸し(相続税側)を始める

相続税の申告要否の概算を出すため、現預金、保険、不動産、株式、借入の一覧を作ります。不動産がある場合は評価に時間がかかるため、早期着手が有利です。

比較表:準確定申告と相続税申告の違い(期限・提出先・目的)

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項目準確定申告(所得税)相続税申告
目的被相続人の死亡日までの所得税を確定相続・遺贈で取得した財産に対する相続税を申告
期限相続開始を知った翌日から4か月以内被相続人の死亡を知った翌日から10か月以内
主な添付付表(相続人情報)等財産評価資料、遺産分割協議書(状況により)等
提出先被相続人の死亡時の納税地の税務署被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署
つまずき点付表・還付金受領・控除の支払日財産評価(不動産・株式)と特例適用要件

よくある質問

Q: 準確定申告の「4か月」は死亡日から数えますか? ▼

A:

原則は「相続開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。通常は死亡日を知るため、実務上は“死亡日の翌日から4か月”で管理することが多いです。ただし個別事情で「知った日」がずれることもあります。
Q: 相続人が1人でも、付表は必要ですか? ▼

A:

準確定申告は付表を添付する取扱いが示されています。特にe-Tax提出では、相続人が1名の場合でも付表をXML形式で提出する必要がある旨が案内されています。
Q: 還付金が出そうです。口座は誰の名義にできますか? ▼

A:

実務では代表相続人等が受領する設計にすることがありますが、その場合に付表とは別に還付金受領に関する委任状の提出が必要とされる取扱いがあります。相続人間の合意形成と書類整備をセットで進めるのが安全です。
Q: 相続財産の価額は、相続税の申告にどう関係しますか? ▼

A:

相続税は、相続等で取得した財産の価額の合計(債務控除等を反映)と基礎控除額の比較で、申告要否が決まるのが基本です。価額は財産の種類ごとの評価ルール(例:宅地は路線価方式)に基づいて算定します。

まとめ

  • 準確定申告の期限は「相続開始を知った翌日から4か月以内」が原則
  • 申告書には付表(相続人情報)を添付し、相続人が複数なら連署が基本
  • e-Tax提出では、相続人が1名でも付表(XML)提出が必要とされる点に注意
  • 還付金を代表者が受け取る設計では、付表とは別に委任状が必要な場合がある
  • 相続財産の価額は相続税の「課税価格」の入口。不動産・株式は評価に時間がかかるため早期着手が有効

免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件への結論を示すものではありません。相続関係、所得の種類、控除の適用、遺産分割の状況により取扱いは変わります。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。


参照ソース

  • 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm
  • 国税庁「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/jyunkaku/index.htm
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
  • 国税庁「No.4604 路線価方式による宅地の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4604.htm
  • 国税庁「相続税財産評価に関する基本通達」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02.htm
  • 国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」: https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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