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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

上場株式 相続税評価の計算方法|4つの価格で最も低い額

8分で読めます
上場株式 相続税評価の計算方法|4つの価格で最も低い額

上場株式の相続税評価とは(結論:4つの価額の最安を採用)

上場株式を相続した場合の評価額は、原則として「被相続人が亡くなった日(課税時期)」の終値(最終価格)で計算します。
ただし、その終値が高い局面だと相続税評価が不合理に跳ねやすいため、一定の条件下では、4つの価額のうち最も低い額で評価できる仕組みになっています。

相続実務では「死亡日が急騰(急落)日のとき」「月末・月初の価格のブレ」「権利落ち」などで評価が揺れやすく、遺産分割や納税資金計画にも影響します。当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、上場株式を含む相続案件の評価・申告を多数扱っており、株価データの拾い方や「どの価格を採用できるか」の判断が、申告品質を左右する典型論点です。

上場株式 相続税評価のルール(4つの価格と「最も低い額」)

4つの価額(原則+例外判定)

上場株式は、次の考え方で評価します。

  • まずは課税時期(死亡日)の最終価格(終値)で評価する
  • ただし、その終値が次の「3つの月平均額」のうち最も低い価額を上回る場合は、その最も低い月平均額で評価する

「3つの月平均額」とは以下です。

  • 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
  • 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
  • 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額

つまり「死亡日終値」+「3か月分の月平均額」の合計4候補から、結果的に最も低い価額を採用する構造です(ただし自動的に4つの最安を選べるというより、終値が月平均の最安を上回る場合に月平均の最安へ置き換える、という建付けです)。

ここがポイント
実務では「死亡日終値」と「当月・前月・前々月の月平均」を並べて、どれが採用されるかをチェックします。株価データの取得元(取引所公表値)と、月平均の算定対象(毎日の最終価格)を揃えるのがポイントです。

比較表:どの価額を使うかの整理

←横にスクロールできます→
候補となる価額何を見て計算する?採用されやすい場面
課税時期(死亡日)の最終価格死亡日の終値月平均より死亡日終値が低い/同程度のとき
当月の月平均額死亡日が属する月の「毎日の終値」の平均死亡日が高値で、月全体は落ち着いているとき
前月の月平均額死亡日が属する月の前月の月平均直前月が弱含みで、死亡日終値が高いとき
前々月の月平均額前々月の月平均2か月前が最も低水準だったとき

株 相続 評価額の計算方法(ステップで解説)

ここでは「上場株式 相続 計算方法」を、申告現場の流れに合わせて整理します。

Step 1: 課税時期(死亡日)と銘柄・市場を確定する

  • 相続:被相続人の死亡日が課税時期
  • 同一銘柄が複数市場に上場している場合、どの金融商品取引所の公表値を使うかの整理が必要です(選択の考え方は評価通達側の整理に従います)。

Step 2: 死亡日の最終価格(終値)を取得する

  • 取引所が公表する最終価格(終値)を採用します。
  • 休日等で死亡日に最終価格がない場合は、評価通達に基づく修正(直近取引日など)を検討します。

Step 3: 3か月分の「毎日の最終価格の月平均額」を算定する

  • 当月・前月・前々月の3つ
  • 月平均は「毎日の終値」の平均であり、「月末終値」ではありません。

Step 4: 採用価額を判定し、株数を乗じて評価額を算出する

  • 死亡日終値が「3つの月平均額のうち最も低い価額」を超えるなら、その最安月平均を採用
  • そうでないなら死亡日終値を採用
  • 採用単価 × 株数 = 相続税評価額(上場株式部分)

上場株式 相続 計算方法の具体例(数字で理解する)

たとえば、A社株式を1,000株相続したケースで、以下だったとします。

  • 死亡日(課税時期)の終値:2,000円
  • 当月の月平均:1,900円
  • 前月の月平均:1,850円
  • 前々月の月平均:1,920円

この場合、月平均の最安は1,850円です。死亡日終値2,000円は1,850円を上回るため、採用単価は1,850円になります。
評価額は 1,850円 × 1,000株 = 185万円 です。

反対に、死亡日終値が1,800円なら、月平均の最安(1,850円)を上回らないため、採用単価は1,800円となります。
このように「死亡日終値が高いときに、月平均の最安へ置換できる」のが制度の要点です。

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注意点:評価がズレやすいケース(権利落ち・取引なし・例外取引)

課税時期に最終価格がない(休日・取引停止など)

死亡日が休場日で終値が存在しない場合や、取引停止などで最終価格が付かない場合は、評価通達の定めに従って一定の修正を行います。実務では「どの日の価格を代替採用するか」「月平均の対象日をどう扱うか」の整合が重要です。

権利落ち(配当・分割等)で価格が連続しない

配当落ち・新株予約権等により、同じ銘柄でも株価が機械的に下がる局面があります。こうした場合も通達上の修正対象になり得ます。
権利落ちを無視して単純比較すると、評価が過大・過少になりやすいため注意が必要です。

ここがポイント
相続税申告では「評価額の合理性」だけでなく、「資料性(どの根拠資料で説明できるか)」が大切です。株価の根拠(取引所公表値)と、月平均計算の根拠(対象期間・平均方法)をセットで保存しておくと、税務署照会にも対応しやすくなります。

例外:負担付贈与や対価を伴う個人間取引は取扱いが異なる

上場株式でも、負担付贈与や個人間の対価を伴う取引で取得した場合など、評価が「課税時期の最終価格」で整理される場面があります。相続と同じ発想で月平均の最安へ置換できるとは限らないため、取引形態の確認が必要です。

申告実務:上場株式の評価明細書で整理する

上場株式の評価は、国税庁の「上場株式の評価明細書」を使って整理できます。
相続税申告書に明細として添付する前提で作られているため、銘柄・株数・単価・算定根拠の一貫性を確保しやすいのが利点です。

当法人では、上場株式が多銘柄・複数口座に分散しているケースでは、口座別の残高証明・取引報告書と評価明細書の突合を行い、「漏れ」「二重計上」「名義違い」を潰してから評価に入る運用を推奨しています。評価以前の棚卸しが、結果的に最もコストを下げます。

よくある質問

Q: 「4つの価格から最も低い額」をいつでも選べますか? ▼
常に自由に選べるわけではありません。原則は死亡日(課税時期)の最終価格で、これが「当月・前月・前々月の月平均額のうち最も低い価額」を上回る場合に、その最安月平均へ置き換える仕組みです。
Q: 死亡日が土日祝で取引がない場合、評価はどうなりますか? ▼
課税時期に最終価格がない場合は、評価通達に従って一定の修正を行います(直近取引日等の扱い)。個別事情で処理が分かれ得るため、株価データと通達上の取扱いをセットで確認してください。
Q: どの取引所の価格を使うのですか?(複数市場上場の場合) ▼
国内の複数の金融商品取引所に上場している場合、一定のルールに従い選択して評価します。実務では「どの市場を選んだか」と「選択後の月平均計算」が整合していることが重要です。

まとめ

  • 上場株式の相続税評価は、原則「死亡日(課税時期)の終値(最終価格)」で評価する
  • 死亡日終値が高い場合、当月・前月・前々月の月平均の最安へ置き換える(結果として4候補の中で最も低い価額になりやすい)
  • 月平均は「月末終値」ではなく「毎日の終値の平均」
  • 休日・取引停止・権利落ちなどは修正が必要になり得る
  • 申告では「上場株式の評価明細書」を使い、根拠資料と突合して整合性を確保する

参照ソース

  • 国税庁「No.4632 上場株式の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm
  • 国税庁「財産評価基本通達 第1節 株式及び出資」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/01.htm
  • 国税庁「B2-3 上場株式の評価明細書」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/1470-02.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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