
執筆者:辻 勝
会長税理士
上場株式 相続税評価の計算方法|4つの価格で最も低い額

上場株式の相続税評価とは(結論:4つの価額の最安を採用)
上場株式を相続した場合の評価額は、原則として「被相続人が亡くなった日(課税時期)」の終値(最終価格)で計算します。
ただし、その終値が高い局面だと相続税評価が不合理に跳ねやすいため、一定の条件下では、4つの価額のうち最も低い額で評価できる仕組みになっています。
相続実務では「死亡日が急騰(急落)日のとき」「月末・月初の価格のブレ」「権利落ち」などで評価が揺れやすく、遺産分割や納税資金計画にも影響します。当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、上場株式を含む相続案件の評価・申告を多数扱っており、株価データの拾い方や「どの価格を採用できるか」の判断が、申告品質を左右する典型論点です。
上場株式 相続税評価のルール(4つの価格と「最も低い額」)
4つの価額(原則+例外判定)
上場株式は、次の考え方で評価します。
- まずは課税時期(死亡日)の最終価格(終値)で評価する
- ただし、その終値が次の「3つの月平均額」のうち最も低い価額を上回る場合は、その最も低い月平均額で評価する
「3つの月平均額」とは以下です。
- 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
- 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
- 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
つまり「死亡日終値」+「3か月分の月平均額」の合計4候補から、結果的に最も低い価額を採用する構造です(ただし自動的に4つの最安を選べるというより、終値が月平均の最安を上回る場合に月平均の最安へ置き換える、という建付けです)。
比較表:どの価額を使うかの整理
| 候補となる価額 | 何を見て計算する? | 採用されやすい場面 |
|---|---|---|
| 課税時期(死亡日)の最終価格 | 死亡日の終値 | 月平均より死亡日終値が低い/同程度のとき |
| 当月の月平均額 | 死亡日が属する月の「毎日の終値」の平均 | 死亡日が高値で、月全体は落ち着いているとき |
| 前月の月平均額 | 死亡日が属する月の前月の月平均 | 直前月が弱含みで、死亡日終値が高いとき |
| 前々月の月平均額 | 前々月の月平均 | 2か月前が最も低水準だったとき |
株 相続 評価額の計算方法(ステップで解説)
ここでは「上場株式 相続 計算方法」を、申告現場の流れに合わせて整理します。
Step 1: 課税時期(死亡日)と銘柄・市場を確定する
- 相続:被相続人の死亡日が課税時期
- 同一銘柄が複数市場に上場している場合、どの金融商品取引所の公表値を使うかの整理が必要です(選択の考え方は評価通達側の整理に従います)。
Step 2: 死亡日の最終価格(終値)を取得する
- 取引所が公表する最終価格(終値)を採用します。
- 休日等で死亡日に最終価格がない場合は、評価通達に基づく修正(直近取引日など)を検討します。
Step 3: 3か月分の「毎日の最終価格の月平均額」を算定する
- 当月・前月・前々月の3つ
- 月平均は「毎日の終値」の平均であり、「月末終値」ではありません。
Step 4: 採用価額を判定し、株数を乗じて評価額を算出する
- 死亡日終値が「3つの月平均額のうち最も低い価額」を超えるなら、その最安月平均を採用
- そうでないなら死亡日終値を採用
- 採用単価 × 株数 = 相続税評価額(上場株式部分)
上場株式 相続 計算方法の具体例(数字で理解する)
たとえば、A社株式を1,000株相続したケースで、以下だったとします。
- 死亡日(課税時期)の終値:2,000円
- 当月の月平均:1,900円
- 前月の月平均:1,850円
- 前々月の月平均:1,920円
この場合、月平均の最安は1,850円です。死亡日終値2,000円は1,850円を上回るため、採用単価は1,850円になります。
評価額は 1,850円 × 1,000株 = 185万円 です。
反対に、死亡日終値が1,800円なら、月平均の最安(1,850円)を上回らないため、採用単価は1,800円となります。
このように「死亡日終値が高いときに、月平均の最安へ置換できる」のが制度の要点です。
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注意点:評価がズレやすいケース(権利落ち・取引なし・例外取引)
課税時期に最終価格がない(休日・取引停止など)
死亡日が休場日で終値が存在しない場合や、取引停止などで最終価格が付かない場合は、評価通達の定めに従って一定の修正を行います。実務では「どの日の価格を代替採用するか」「月平均の対象日をどう扱うか」の整合が重要です。
権利落ち(配当・分割等)で価格が連続しない
配当落ち・新株予約権等により、同じ銘柄でも株価が機械的に下がる局面があります。こうした場合も通達上の修正対象になり得ます。
権利落ちを無視して単純比較すると、評価が過大・過少になりやすいため注意が必要です。
例外:負担付贈与や対価を伴う個人間取引は取扱いが異なる
上場株式でも、負担付贈与や個人間の対価を伴う取引で取得した場合など、評価が「課税時期の最終価格」で整理される場面があります。相続と同じ発想で月平均の最安へ置換できるとは限らないため、取引形態の確認が必要です。
申告実務:上場株式の評価明細書で整理する
上場株式の評価は、国税庁の「上場株式の評価明細書」を使って整理できます。
相続税申告書に明細として添付する前提で作られているため、銘柄・株数・単価・算定根拠の一貫性を確保しやすいのが利点です。
当法人では、上場株式が多銘柄・複数口座に分散しているケースでは、口座別の残高証明・取引報告書と評価明細書の突合を行い、「漏れ」「二重計上」「名義違い」を潰してから評価に入る運用を推奨しています。評価以前の棚卸しが、結果的に最もコストを下げます。
よくある質問
Q: 「4つの価格から最も低い額」をいつでも選べますか?
Q: 死亡日が土日祝で取引がない場合、評価はどうなりますか?
Q: どの取引所の価格を使うのですか?(複数市場上場の場合)
まとめ
- 上場株式の相続税評価は、原則「死亡日(課税時期)の終値(最終価格)」で評価する
- 死亡日終値が高い場合、当月・前月・前々月の月平均の最安へ置き換える(結果として4候補の中で最も低い価額になりやすい)
- 月平均は「月末終値」ではなく「毎日の終値の平均」
- 休日・取引停止・権利落ちなどは修正が必要になり得る
- 申告では「上場株式の評価明細書」を使い、根拠資料と突合して整合性を確保する
参照ソース
- 国税庁「No.4632 上場株式の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm
- 国税庁「財産評価基本通達 第1節 株式及び出資」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/01.htm
- 国税庁「B2-3 上場株式の評価明細書」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/1470-02.htm
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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