
執筆者:辻 勝
会長税理士
M&A仲介会社の選び方と手数料相場|税理士が解説

結論:仲介会社は「手数料の基準額」と「利益相反の管理」で選びます
M&A仲介会社選びで最も揉めやすいのは、成功報酬(レーマン方式)の基準となる価額が何か、そして仲介の構造上起こり得る利益相反をどう管理しているかです。
経営者にとっての問題は「想定より手数料が高い」「重要事項の説明不足」「相手先との条件交渉で不利になった気がする」といった、契約前の確認不足から発生することが多い点にあります。
本記事では、実務で相談の多い「手数料の相場感」「レーマン方式の仕組み」「仲介会社の見極め方」を、税理士目線で具体的に整理します。
M&A仲介とFAの違い:まず立ち位置を把握する
M&A支援は大きく「仲介」と「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」に分かれます。ここを曖昧にしたまま契約すると、後で説明不足と感じやすくなります。
| 項目 | 仲介(仲介会社) | FA(アドバイザー) |
|---|---|---|
| 立ち位置 | 譲り渡し側・譲り受け側の間に入る | 原則として依頼者側の味方(片側支援) |
| 期待される役割 | マッチング+条件調整+成約支援 | 企業価値評価・交渉戦略・条件最大化 |
| 留意点 | 構造上、利益相反が起こり得る | 依頼者側に寄った提案になりやすい |
| 費用感 | 最低手数料設定が多い | 個別見積もりになりやすい |
M&A仲介会社の手数料相場:費用の内訳で見ていく
M&Aの費用は「成功報酬だけ」と思われがちですが、実際は複数の要素が組み合わさります。まずは内訳の全体像を押さえましょう。
- 相談料:無料〜有料(初期相談の設計は会社により差)
- 着手金:契約時に発生(0円の会社もあります)
- 月額報酬:進行管理・交渉支援の対価(0円の会社もあります)
- 中間金:基本合意時など(設定する会社もあります)
- 成功報酬:成約時に発生(多くがレーマン方式)
- 最低手数料:成功報酬に下限を設ける(中小M&Aでは非常に多い)
ここで重要なのが、「成功報酬(レーマン)+最低手数料」の組み合わせです。譲渡額が小さい局面ほど、レーマン計算より最低手数料が優先され、想定以上の負担に見えることがあります。
レーマン方式の仕組み:率よりも「基準額」が重要
レーマン方式とは(計算の骨格)
レーマン方式は、基準となる価額を階段状に区切り、各階層ごとに一定の料率を掛けて合算する方法です。料率の一例は以下のとおりです。
- 5億円以下:5%
- 5億円超〜10億円以下:4%
- 10億円超〜50億円以下:3%
- 50億円超〜100億円以下:2%
- 100億円超:1%
「基準となる価額」の代表例(ここで金額が変わる)
同じ「譲渡額5,000万円」でも、基準額の定義で成功報酬が大きく変動します。代表的には次のような考え方が見られます。
- 譲渡額:株式価額等の譲渡対価(いわゆる売買金額)
- 移動総資産額:譲渡額+負債(負債込みで基準が膨らみやすい)
- 純資産額:資産-負債
つまり、料率(5%等)よりも「どの基準額で計算するか」が決定的です。契約前に、基準額の定義を文章で確認しておきましょう。
具体例:譲渡額5,000万円でも最低手数料で逆転する
例として、譲渡額5,000万円・成功報酬レーマン(基準:譲渡額)・最低手数料1,000万円(税抜)とします。
- レーマン計算:5,000万円 × 5% = 250万円(税抜)
- しかし最低手数料:1,000万円(税抜)が適用される
- 結果:成功報酬は最低手数料が優先(税抜1,000万円)
この「最低手数料の壁」が、中小M&Aで相場感を難しくしている最大要因です。
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M&A仲介会社の選び方:契約前チェックリスト(実務版)
ここからが本題です。相場の数字だけで比較せず、次の観点で「失敗確率を下げる」選び方をします。
Step 1: 手数料の計算仕様を固定する
- レーマン方式か、定額か
- 基準額は「譲渡額/移動総資産/純資産」のどれか
- 最低手数料の金額と適用条件(必ず文章で)
Step 2: 重要事項説明の質を確認する
- 手数料の総額見込み(ケース別試算)が出るか
- 途中解約時の費用(違約金・清算)の規定が明確か
- 相手方(買い手)から手数料を受け取る場合の説明があるか(両手取引の有無)
Step 3: 利益相反の管理方法を質問する
仲介は構造上、利益相反が起こり得ます。ここを「仕方ない」で終わらせないことが重要です。
- 交渉方針はどちらの利益を優先する場面があるのか
- 条件調整(価格・表明保証・競業避止等)で、判断基準をどう持つのか
- 担当者評価が「成約」偏重になっていないか
Step 4: 業界理解と案件遂行力(PMI視点も含む)を見極める
- 自社業界の買い手ネットワークがあるか
- DD(財務・税務・法務)を誰がどう回すか
- 成約後の統合(PMI)まで見据えた助言があるか
Step 5: 公的窓口・制度も併用して比較材料を増やす
民間仲介だけで完結させず、公的な相談窓口も使うと比較の軸が増えます。事業承継・引継ぎ支援センター等の活用を検討してください。
よくある質問
Q: 手数料が安い仲介会社を選べば得ですか?
Q: レーマン方式の料率は各社で同じですか?
Q: 仲介(両手)だと不利になりますか?
Q: 公的な相談先はありますか?
まとめ
- M&A仲介会社は「手数料の安さ」ではなく、基準額の定義と説明の透明性で選ぶ
- 成功報酬はレーマン方式が多いが、最低手数料の適用で実負担が大きく変わる
- 仲介は利益相反が起こり得るため、管理方法と説明範囲を事前に質問する
- 契約前に、試算(複数ケース)・解約条件・両手取引の有無を必ず確認する
- 公的窓口も併用して、比較材料とチェック機能を持たせる
参照ソース
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
- 中小企業庁(資料)「FAの手数料(レーマン方式・最低手数料の例)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline/003.pdf
- ミラサポplus「事業承継を進めたい(公的相談窓口等の案内)」: https://mirasapo-plus.go.jp/chinage/business-succession/
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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