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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.08
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

内縁 相続の相続権と遺言・贈与の実務|税理士が解説

9分で読めます
内縁 相続の相続権と遺言・贈与の実務|税理士が解説

内縁(事実婚)パートナーに財産を残したい場合、結論はシンプルです。内縁の配偶者には原則として法定相続権がないため、「相続」ではなく、遺言による遺贈や生前の財産移転を組み合わせて設計します。法律婚ではないことが、相続手続・税務の両面でボトルネックになります。

当法人(税理士法人 辻総合会計)でも、相続対策のご相談で「長年連れ添ったパートナーに確実に残したいが、子ども(法定相続人)との関係も崩したくない」というケースは少なくありません。ポイントは気持ちではなく手段を具体化することです。

事実婚 相続権はある?内縁が相続人になれない理由

内縁(事実婚)は、生活実態としては夫婦に近くても、法律上は「配偶者」ではありません。相続の場面では、法定相続人(配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹など)として扱われないのが原則です。法務局が公開する法定相続情報一覧図の例でも、相続人の基本類型は「配偶者+子」など法律婚を前提に整理されています。
出典:法務局(法定相続情報一覧図の様式・記載例)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html

つまり、内縁パートナーに財産を残すには、法定相続(遺産分割協議)に乗らない形を用意する必要があります。

ここがポイント
内縁パートナーが相続人になれない前提でも、相続財産の中に「受取人指定の生命保険金」などがあれば、遺産分割とは別ルートで移転できる場合があります(ただし税務上の扱いは要設計です)。

内縁 財産を残す代表的な方法

内縁パートナーに財産を移す手段は複数あります。重要なのは、「確実性(争いにくさ)」と「税負担」をセットで評価することです。

方法1:遺言で遺贈する(最優先の基本策)

最もオーソドックスなのは、遺言でパートナーに遺贈する方法です。特に、公正証書遺言は方式不備リスクが相対的に低く、紛争予防に向きます。自筆証書遺言の場合は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を使うことで、紛失・改ざんリスクや検認手続の負担軽減が期待できます。
出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

ただし、法定相続人(子など)がいる場合、遺言内容が強すぎると遺留分問題が出やすくなります。

方法2:生命保険の受取人を内縁パートナーにする

生命保険は「受取人固有の財産」として、遺産分割の枠外で支払われるのが一般的で、スピードと確実性が魅力です。一方で、税務上は相続税の課税対象になり得ますし、法定相続人ではない受取人だと税負担が重くなることがあります(後述の2割加算など)。

方法3:生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税など)

生前贈与は、資金の手当てや生活基盤の確保には有効です。ただし相続開始前の贈与は、一定期間について相続税の計算に加算されます(近年は加算対象期間が拡大しています)。
出典:国税庁 No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

「贈与すれば終わり」ではなく、相続発生時に税務上戻ってくる設計になっている点が実務の落とし穴です。

方法4:養子縁組・法律婚など、身分関係を整える

可能であれば、法律婚(婚姻届)により「配偶者」になれば、相続・税制の前提が大きく変わります。また、事情によっては養子縁組により相続人となる選択肢もあります(家族関係への影響が大きいため、慎重な検討が必要です)。

方法5:特別縁故者(相続人がいない場合の最終手段)

相続人がいないケースでは、家庭裁判所の手続を経て、内縁パートナーが「特別縁故者」として財産分与を受けられる可能性があります。ただし、これは「相続人がいない」ことが前提で、狙って使う制度ではありません。実務上は遺言等で先に手当てするのが基本です。

内縁 相続の実務比較表(確実性・税務・トラブル)

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方法確実性(争いにくさ)税務の注意点向くケース
遺言(遺贈)高(作り方次第)相続税の2割加算の対象になり得るまとまった財産を確実に残したい
自筆証書+保管制度中〜高方式不備は減るが内容設計は要注意コストを抑えつつ形にしたい
生命保険(受取人指定)高(支払が早い)非相続人は2割加算等で負担増の可能性当面の生活費を確保したい
生前贈与中加算(最長7年)等で戻ることがある計画的に移転・分散したい
法律婚最高(法定相続)配偶者向け税制の前提が変わる可能で、家族関係も整理できる

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パートナー 相続 遺言の作り方(失敗しない手順)

Step 1: 誰が法定相続人かを確定する
戸籍関係を確認し、子・親・兄弟姉妹の有無を整理します。ここがズレると遺留分や分割設計が崩れます。

Step 2: 「残したい財産」と「残し方」を棚卸しする
不動産、預貯金、事業用資産、生命保険、家財などを分類し、「遺贈に向く/保険に向く/贈与に向く」を振り分けます。

Step 3: 遺留分トラブルを避ける配分に調整する
法定相続人がいる場合、内縁パートナーへの遺贈比率を上げすぎると争いが起きやすくなります。現実的には「保険+遺贈+贈与」の分散が効きます。

Step 4: 方式を決めて遺言を作成・保管する
自筆証書なら、法務省の自筆証書遺言書保管制度の活用を検討します。制度利用の可否・予約・必要書類など、運用面も含めて設計します。
出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

Step 5: 税負担(2割加算・控除の有無)を試算して最適化する
内縁パートナーは、相続税計算上「配偶者」ではありません。そのため、配偶者向けの税額軽減は使えません。
出典:国税庁 No.4158「配偶者の税額の軽減」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm

さらに、相続や遺贈で財産を取得した人が配偶者や一親等の血族以外の場合、相続税額の2割加算の対象になります。
出典:国税庁 No.4157「相続税額の2割加算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm

ここがポイント
「内縁パートナーに残す=税負担が重くなる」ことは珍しくありません。遺言の文案だけ先に作ってしまうと、税務面の最適化が後戻りしづらくなるため、遺言作成と税務試算は同時進行が安全です。

よくある質問

Q: 内縁(事実婚)でも、遺産分割協議に参加できますか? ▼
原則として参加できません。内縁パートナーは法定相続人ではないため、遺産分割協議の当事者にならず、遺言による遺贈や生前対策で別ルートを作る必要があります。
Q: 遺言で全部を内縁パートナーに遺贈したら、確実に渡せますか? ▼
「遺言が有効であること」と「遺留分などの権利関係」が別問題です。法定相続人がいる場合、遺留分侵害額請求が出る可能性があり、最終的にパートナーの取得額が減ることがあります。配分設計(保険・贈与の併用等)が重要です。
Q: 内縁パートナーが相続税で不利になるのはどこですか? ▼
代表例は2点です。(1) 配偶者向け税額軽減の対象外(国税庁 No.4158)。(2) 相続税額の2割加算の対象になり得る(国税庁 No.4157)。取得方法(遺贈・保険・贈与)ごとに試算して最適化します。

まとめ

  • 内縁(事実婚)パートナーは原則として法定相続人にならないため、相続ではなく「遺贈・贈与・保険」等で設計する
  • 最優先の基本策は遺言(遺贈)。自筆証書なら法務局の保管制度も選択肢
  • 法定相続人がいる場合は遺留分トラブルを前提に、複数手段に分散して確実性を上げる
  • 税務では配偶者軽減の対象外、2割加算、贈与加算(最長7年)などが論点になりやすい
  • 文案だけ先行せず、権利関係と税務試算を同時に行うのが実務上の安全策

参照ソース

  • 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
  • 国税庁 No.4158「配偶者の税額の軽減」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
  • 国税庁 No.4157「相続税額の2割加算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm
  • 国税庁 No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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