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相続・事業承継コラム
作成日:2026.02.27
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

中小企業M&A税金2026|第三者承承継の優遇と注意点を税理士が解説

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中小企業M&A税金2026|第三者承承継の優遇と注意点を税理士が解説

中小企業の第三者承継(M&A)で最も誤解が多いのは、「M&A=節税になる」ではなく、スキーム選択(株式譲渡/事業譲渡)で税負担が大きく変わる点です。2026年も、税制優遇は条件を満たした人だけが受けられ、同時に簿外債務や契約条項の設計を誤ると、税務以前に損失が出ます。税理士法人 辻総合会計では、第三者承継の税務DD・スキーム設計の相談を多数受けていますが、結論は「税制優遇の活用」と「契約・調査の徹底」をセットで進めることです。

中小企業M&Aの税金2026の全体像

税金は「売り手」と「買い手」で別物

M&Aの税務は、売り手(オーナー・会社)と買い手(引継ぐ会社・個人)で論点が変わります。

  • 売り手:譲渡益に課税(株式を売るのか、事業を売るのかで所得区分や税率が変わる)
  • 買い手:取得対価の配分(のれん、資産、負債)と将来の損金・償却、税務リスクの引継ぎが争点

特に後継者不在の第三者承継では、「誰が何を売るか」(個人株主が株を売る/会社が事業を売る)を最初に確定させないと、税額試算が成立しません。

2026年の「税制優遇」は計画認定が前提になりやすい

近年の政策は、M&Aを成長投資として位置づけ、一定の要件を満たす場合に税務上の手当てが用意されています。代表例が、経営力向上計画の認定等を前提に活用する経営資源の集約化に資する税制です。要件・期限・対象者要件は個別に確認が必要ですが、「認定→実行→証憑保存」の順序を崩すと適用できないことがあります。

ここがポイント
税制優遇は「使えるかどうか」より「手続の順番を守れるかどうか」で差が出ます。M&Aは契約締結日・クロージング日・設備取得日など日付が多く、適用判定は日付に依存します。

株式譲渡と事業譲渡の違い:税金と実務の比較

第三者承継の基本は「株式譲渡(会社ごと引継ぐ)」か「事業譲渡(事業だけ切り出して売る)」です。どちらが得かは一概に言えず、負債・許認可・従業員・取引先・不動産の状況で最適解が変わります。

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比較項目株式譲渡(第三者承継で多い)事業譲渡(リスク遮断に強い)
売り手の課税株主(個人/法人)の譲渡益課税。個人は原則、申告分離で課税会社に譲渡益課税(資産売却益)。株主は別途、配当等が絡むことも
消費税株式は原則、課税対象外の整理になりやすい資産の譲渡は課税対象になり得る(資産の中身で判定)
債務・簿外債務原則として会社ごと引継ぐため、DDと補償条項が重要取得対象を限定でき、リスク遮断しやすい
許認可・契約会社が継続するため承継しやすいことが多い原則、再契約や名義変更が必要になりやすい
従業員雇用は継続しやすい個別同意や移籍手続が必要になりやすい
実務負担比較的シンプルになりやすい資産・契約の移転で手続が重くなりやすい

ポイントは、株式譲渡は「シンプルに見えるが、税務・法務リスクを丸ごと引継ぐ」こと、事業譲渡は「リスクを絞れるが、手続と課税論点が増える」ことです。

第三者承継で使われやすい税制優遇:経営資源集約化税制の要点

準備金(リスク対応)の考え方

M&A後に発覚し得る簿外債務等に備える趣旨で、一定の要件を満たす場合に、投資額の一定割合を準備金として積み立て、損金算入できる枠組みがあります。第三者承継で「買った後に想定外が出た」リスクに対し、税務上のクッションを用意する発想です。

ただし、準備金は積んで終わりではなく、将来の取崩し(益金算入)を前提とする仕組みです。資金繰り・返済計画とセットで設計しないと、数年後に利益が出たタイミングで課税が跳ねることがあります。

設備投資減税(M&A後の成長投資)とのセット活用

M&Aの目的が「引継ぎ」だけでなく「生産性向上・収益力強化」である場合、M&A後の設備投資に対する税額控除や即時償却が論点になります。税制は類型・設備要件・計画要件が細かいため、M&A検討段階から投資計画(設備の種類、取得時期、効果指標)を税務適用できる形に整えるのが実務です。

ここがポイント
「M&Aが決まってから設備を買う」では遅いことがあります。税制は計画認定→実行が要件になりやすく、順番が逆だと適用を失うリスクがあります。

後継者不在M&Aでの注意点:税務より先に落とす落とし穴

1. M&A専門業者(仲介/FA)契約と手数料の透明性

第三者承継では、仲介者・FAの関与が一般的ですが、報酬体系(レーマン方式、最低報酬、成功報酬の定義)や、利益相反(片手/両手)の説明不足がトラブルになりがちです。ガイドライン等でも、契約内容・手数料の分かりにくさが課題として整理されています。税理士としては、手数料条項が税務スキームの自由度を奪うケース(特定の方式に誘導される等)を現場で見ます。

2. DD(デューデリジェンス)不足が一番高くつく

税金の優遇よりも、簿外債務・未払残業・粉飾・名義借り・未払社会保険などの発見が最優先です。特に株式譲渡は会社ごと引継ぐため、DDの薄さがそのまま損失になります。税務DD・法務DD・労務DDの範囲と深さは、会社規模に応じて最適化しつつも「最低ライン」を割らないことが重要です。

3. 表明保証・補償・価格調整の設計

M&A契約は税務計算書ではなく、将来の紛争を防ぐ保険です。実務では次が重要になります。

  • 表明保証:過去の事実(税務申告の適正、未払の不存在など)を売り手が表明
  • 補償条項:表明違反や偶発債務が顕在化したときの負担を決める
  • 価格調整:純資産・運転資金・ネットデットを基準にクロージングで調整する

税金の試算はこれらの条項で前提が崩れるため、税務は契約設計と不可分です。

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第三者承継の進め方:税務を失敗しない手順

Step 1: 目的の整理(引継ぎか成長か)
後継者不在の出口が主目的でも、買い手は成長目的を持ちます。価格と条件は目的で決まるため、売り手側も「何を守り、何を譲るか」を先に決めます。

Step 2: スキーム一次判定(株式譲渡/事業譲渡)
許認可、債務、不動産、取引契約、従業員を棚卸しし、どちらが実現可能かを先に絞ります。ここで税額の概算も出します。

Step 3: 税制優遇の適用可能性チェック(認定要件・日付)
経営力向上計画等の認定が必要な類型は、申請と実行の順序を確認します。必要資料(計画書、投資計画、事前調査事項など)を前倒しで準備します。

Step 4: DDと契約設計(表明保証・補償・価格調整)
DD結果を踏まえ、リスクを条項に落とし込みます。「DDで見つかった論点を契約で無かったことにしない」のが鉄則です。

Step 5: クロージング後の税務・会計処理(のれん、償却、申告)
買い手側は取得対価の配分(のれん等)と申告処理が核心です。売り手側も、個人株主の確定申告や会社側の最終申告が発生します。

よくある質問

Q: 中小企業M&Aの税金は、株式譲渡だと必ず20.315%ですか? ▼
個人が株式等を譲渡した場合は、原則として申告分離課税で課税されますが、上場株式等か一般株式等か、損失の取扱い等で実務が変わります。対象株式の区分と譲渡損失の扱いは事前に確認が必要です。
Q: 事業譲渡にすると、消費税は必ずかかりますか? ▼
事業譲渡は資産の譲渡の集合として整理されるため、課税資産が含まれると消費税の論点が出ます。一方で、土地など非課税資産もあります。対象資産の内訳で結論が変わるため、譲渡資産リストを作って判定します。
Q: 税制優遇(準備金や設備投資減税)は、どのM&Aでも使えますか? ▼
いいえ。一般に、認定手続や対象者要件、投資内容・時期の要件があり、満たさない場合は適用できません。M&Aの基本設計(スキーム、日程、投資計画)を先に固め、適用可能性を早期に検討するのが安全です。
Q: 仲介手数料は税務上、全額経費になりますか? ▼
取引の性質により会計・税務上の処理が分かれます(取得原価に含めるべきもの、期間費用となるもの等)。契約書・請求書の内容と、取引の実態に即して整理します。

まとめ

  • 中小企業M&Aの税金は、まず「株式譲渡か事業譲渡か」で骨格が決まる
  • 税制優遇は、要件と手続の順番を守らないと適用できないことがある
  • 株式譲渡はリスクも引継ぐため、DDと表明保証・補償条項が最重要
  • 事業譲渡は手続と課税論点が増えるが、リスク遮断がしやすい
  • 税務は契約設計と一体。概算税額だけで意思決定しない

参照ソース

  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第2版)」: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
  • 中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/shigenshuyaku_zeisei/tebiki.pdf
  • 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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